
<日本生命セ・パ交流戦:阪神1-2ソフトバンク>◇20日◇甲子園
勝って決めるバイ! ソフトバンクが「日本生命セ・パ交流戦」で、6年ぶり12球団最多9度目の優勝に王手をかけた。1-1の延長10回2死三塁で、育成出身6年目の石塚綜一郎捕手(24)が、代打で右中間に決勝の適時二塁打。先発のリバン・モイネロ投手(29)も交流戦の最多奪三振記録を樹立する快投を見せ、投打一丸でセ界首位の阪神に競り勝った。交流戦の優勝マジックは「1」。21日に自力で優勝を決める。
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憧れの舞台で、育成出身の石塚が大仕事を成し遂げた。岩手・黒沢尻工では「縁がなかった」甲子園。夢にまで見た聖地で試合を決める殊勲打を放った。「プロの舞台でヒーローになれてよかったなと思います」。昨年7月に支配下登録された6年目の24歳は、初々しくはにかんだ。
1-1の延長10回2死三塁、小久保監督から代打を託された。マウンドには同い年で横浜高校のスターだった及川がいた。「2軍でも対戦がありましたし、初めてではなかった。落ち着いてというか、緊張しながらも冷静にしっかり対応できたかなと思います」。初球のストレートを右中間へ。勢いあまって三塁を狙おうと試みたが、急いで二塁へ帰塁。間一髪セーフで、阪神側からリプレー検証を求められたが、覆らずに苦笑いを浮かべた。指揮官は「石塚がよう打ったですよ」と褒めながら「興奮しすぎてね。あいつの足で三塁は無理ですよ。それも若さですね」と笑顔でたたえた。
6月4日に2軍再調整を命じられた時、「左(投手)なら石塚」を目指して筑後に向かった。降格後の2軍で打率3割8分1厘の好成績を残し、交流戦ラストウイークで1軍に再昇格した。19日の広島戦に続き、代打で2打席連続安打。決勝打は今季初、プロ3度目の快感だった。「僕はチャンスが少ないですし、そういうところで結果を残さないと」。完全アウエーの敵地甲子園でも物おじしない。昨オフはハワイでの優勝旅行でスカイダイビングを経験し「鼻血が吹き出しました」と笑っていた。満点の度胸は本物だ。
チームは交流戦の優勝マジックを「1」とした。21日も阪神に勝てば、自力で19年以来6年ぶり9度目の勝率1位が決まる。小久保監督は「ピッチャーのシミュレーションもして、普段通りにやります」と冷静に語った。必ず1発で決める。【只松憲】
◆石塚綜一郎(いしづか・そういちろう)2001年(平13)6月7日生まれ、秋田県出身。黒沢尻工(岩手)では高校通算39本塁打を誇り、投手としても最速143キロをマークする二刀流で活躍した。19年育成ドラフト1位でソフトバンクに入団。昨年7月24日に支配下登録され、8月14日の敵地西武戦でデビュー。同21日には敵地楽天戦で内からプロ1号を含むマルチ安打を放った。少年時代の憧れは巨人坂本。今季推定年俸は700万円。181センチ、91キロ。右投げ右打ち。