
<天皇杯:川崎F4-3福島>◇2回戦◇11日◇U等々力
川崎フロンターレが、23年までコーチを務めた寺田周平監督が率いるJ3福島ユナイテッドFCに4-3で逆転勝ちを収め、3回戦に駒を進めた。
FW山田新(25)が3月29日のJ1第7節FC東京戦以来約2カ月半ぶり公式戦でゴールを含む2得点の活躍でチームを勝利に導いた。
眠れるエースがついに目覚めた。0-1の同29分、敵陣でボールを奪い返すと、MF橘田健人が左がクロス。ゴール前に詰めた山田が決めて追いついた。今季はここまでわずか2得点。待望のゴールに「やっと取れたという思いとなんか本当に久しぶりのゴールだったので、なんかいろんな感情はありました」。
後半6分にはカウンターでMFマルシーニョが左サイドを突破すると、中にいた山田が押し込んで2点目。逆転に成功した。「1点目取ったことで、あそこのゴール前のところで、感覚的にできるようになったと思うし、落ち着いてもいたし、なんかリラックスもしていたし、考えることなく感覚で行けた気はします」と嗅覚が完全によみがえった。
昨年リーグ戦19得点とブレークした。今季はエースとしてより一層の活躍が期待されたが、結果が出せなかった。「(人生で)こんなに取れなかったことはない。苦しい時期だった」。ストライカーたるもの、ゴールをとってなんぼ。「ゴール取れないと、FW的には他のところもうまくいかなくなる」と負のスパイラルに陥った。
徐々に自信も失い、メンタル面で難しい時期を過ごした。チームはこの間、アジア・チャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)で準優勝を経験。自身は8強以上のファイナルズで無得点に終わり、躍進に貢献できなかった。思いをめぐらせ、やや言葉に詰まりながら苦悩を語った。
「チームも今(リーグ戦)7位とかで、自分が決めていれば勝ってる試合が多かったので、自分へのふがいなさだったり、チームへの申し訳なさだったり。ゴールに対して貪欲に向き合えていないわけじゃないけど、自信もそうだし、いろんな面で沈んでいる部分はあったので。それでもチームメートもスタッフもサポートしてくれていた。これからが大事だと思います」
周囲の助けも借りながら、愚直にトレーニングをやり続けた。大黒将志コーチ、長谷部茂利監督、長橋康弘コーチ、その他のスタッフからもさまざまな角度で支えられた。だからこそ、いろいろな感情が入り交じった得点となった。
山田を信じて起用し続けた長谷部監督からも「待っていました。相手が、大会がどうであれ、公式戦で2得点するのは非常に難しい。ここから昨年のように持っている力を発揮してゴールを重ねてほしい」と期待を寄せられた。
副主将の立場でもある山田は自身がゴールを奪うことの意味を十分に理解している。「自分が決めることでチームにすごくいい影響を与えると思う。また取り続けたいなと思います。取り続けないと意味がないかなと思います」。リーグ戦でも量産体勢に入る。【佐藤成】