
日本代表が史上最速で8大会連続8度目の出場を決めた26年W杯北中米大会の開幕まで今日11日で、あと1年。昨年9月から継続選出されているDF高井幸大(20=川崎F)は、センターバック(CB)として歴代最年少での出場を見据える。このほどインタビューに応じ、来夏の夢舞台に立つはずの自分へ「死ぬ気で頑張って」と、成長とW杯への強い思いを明かした。【取材・構成=佐藤成】
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「大きな分岐点になる大会だと思うので、死ぬ気で頑張ってほしいです」
現在20歳の高井が1年後の自分に向けて、メッセージを送った。普段、言葉数の少ないシャイボーイが「死ぬ気で」と、珍しく強いワード。覚悟がにじんだ。
もう1年なのか、まだ1年なのか。「もう1年ですかね。さすがに。焦ってはいないけど時間はないですね。正直」。2年前はU-20W杯に出場していた。1年前はパリ五輪出場に向けて、U-23日本代表で奮闘。さらに加速度的な成長を遂げて、冨安、板倉、谷口、町田、伊藤、渡辺ら激戦区のCBメンバー争いに割って入る勢いを見せる。
「ここまで、スッと行けるとは思っていなかった。ただ、現実的にはなってきている。入り込めるようにしっかりアピールしたい」
小学生時代から川崎Fの下部組織で育ったエリートだ。192センチを誇り、世代別代表経験も豊富な逸材にとって、W杯は幼い頃からの憧れの舞台だった。04年生まれ。最も古いW杯の記憶は14年ブラジル大会だ。当時は小学4年。「教室とかで見ました。学校で(朝)7時とかじゃなかったですかね」。本田圭佑や香川真司、長友佑都ら「史上最強」とうたわれたザックジャパンに、心を躍らせた。
最も強く刻まれたのは前回のカタール大会だ。高校3年の12月。既にプロ契約を結び、クラブの寮でチームメートと観戦した。
「(当時は)ファンとして、日本人として見ていました。決勝とかも、すごかったですね。アルゼンチンはやっぱりすごかった。優勝しましたしね。(準々決勝)オランダ戦とか、戦争しているんじゃないか、というぐらいすごかった。文化が違うなと思いました」
世代別の常連でも、やはりA代表は格別だった。「素晴らしいこと。君が代を聞く時も、毎回すごくいいなと思いますし、幸せですね」。感情をあまり表に出さないが、心震えている。
プロ3年目。代表最長身に90キロの恵まれた体格に、川崎F仕込みの足元の技術とスピード、対人の強さ。ポテンシャルは底が知れない。今季はJ1でもほとんど相手にやられる場面はない。アジア・チャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)では、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(アルナスル)を封じ込めた。代表経験も自信を深め、ピッチ上でリーダーシップを発揮するようになった。プロ当初の課題だった好不調の波もなくなり声でも引っ張っている。
「去年より意識している部分でもありますし、試合中に余裕があるからこそ、というのもあるかもしれない。去年くらいから思っていたんですけど、より行動に移したのは今年の最初くらいですね。最初から、もうそうしようと思って今シーズンやっている」
以前は、あえて感情を表に出さなかった。「冷静にやった方がいいかな、とずっと思ってたんですよね。自分のやるべきことに集中しようと」。しかし代表活動やアジアの舞台での経験をへて、考え方を変えた。「より自分の考えを主張できるようになった」。
現代表は欧州組が大半を占めるが、自身は国内で着実に力をつけて、この位置まで上り詰めてみせた。チームはW杯で「最高の景色」…すなわち優勝を目指している。「目標というより夢。もちろん出たい」。高井の進化が、日本代表をさらなる高みに押し上げる。