
<日本生命セ・パ交流戦:阪神1-0オリックス>◇6日◇甲子園
甲子園の4万2637人の観客が一瞬静まりかえった。0-0の8回2死二塁、カウント2-2からの6球目。阪神先発村上頌樹投手(26)がオリックス代打森に対して外角きわどいコースに147キロ直球を投じた。静寂の中で足を広げて待った右腕。球審がストライク判定のジェスチャーをするとマウンド上で跳び上がり、ファンは大歓声を上げた。
「粘れた。ゼロに抑えられたから勝利につながったと思うので良かった。この1点が勝負になるなと」
球場表示された中で自身最遅とみられる球速58キロの超スローカーブなど、立ち上がりから緩急を生かして打者を翻弄(ほんろう)。6回まで出塁を許したのは初回、先頭の広岡に与えた四球のみの無安打投球を披露した。「ノーヒットの意識はなかったですね。(遅球は)球場の空気を変えるためにも良い球だった」。7回1死から紅林に初安打。7、8回は安打を許して得点圏に走者を進めるも無失点。8回を2安打2四球6奪三振の快投だった。
“金曜日の男”としての自信を胸にマウンドに上がっている。今季は初の開幕投手でほぼカード頭の金曜日で今季7勝。開幕戦は広島森下、2戦目では巨人戸郷と各球団のエース級に勝利した。「良いピッチャーから勝てるのはうれしい」。火曜日に投げ、同じくエースと投げ合うことが多いなかで、7勝11敗の昨季とは違う姿を見せた。
今季はここまで両リーグ単独トップ7勝。自身8勝目とはならなかったが、得点を許さない投球でチームの勝利に大きく貢献した。藤川監督は「表の攻撃と裏の攻撃が同じようにコピーしたようなゲーム展開で動きも出せない中で、両方の投手の投げ合いは素晴らしいものがあった」とオリックス東とともに絶賛。チームは勝利も反省と石井への心配もあってか、試合後は村上に笑顔なし。「反省点の多い試合だった。次に生かしていきたい」。ほとんど完璧な結果にも満足しない。【塚本光】