＜連載2：盛岡大付・許定捷＞
春季高校野球東北大会の注目出場校、選手紹介の第2回は岩手・盛岡大付の台湾出身、許定捷（きょ・ていしょう）外野手（2年）。投手もこなすマルチプレーヤーは中学時代、U15台湾代表にも選出された。日本のプロ野球選手を目指す走攻守、3拍子ぞろいの逸材に注目だ。
◇ ◇ ◇
夢をかなえるために国境をも越えた。U15台湾代表にも選出された許は、生まれ育った故郷に別れを告げ、岩手の地で高校野球の門をたたいた。言語も文化も違う異国での挑戦に「正直、不安もありました」と吐露。それでも、強い思いが許を奮い立たせた。「日本のプロ野球選手になりたい」。不安をはねのける闘志が勝った。
初めは苦労の連続だった。通訳がつかなかったため、野球どころか、言葉すらわからない環境。練習後には、寮で毎日1時間、購入した日本語ドリルに向かった。くじけそうな時に原動力となったのは、昨季まで西武で活躍していた台湾出身、呉念庭（うー・ねんてぃん＝現在は台湾・台鋼ホークスでプレー）の存在だった。呉は台湾から日本の高校に進学。日本の大学を経て、プロ野球選手になった。まさに、許が描く理想だった。
チームメートも手を差し伸べた。「ミーティングで難しい言葉が出ると、みんなが時間をかけて教えてくれました」。仲間の存在と地道な努力が身を結び、言葉の苦労はなくなった。それでも、今でも毎日1時間の日本語勉強は欠かさない。
高校では強肩を評価されて内野手から外野手へ転向。経験のあった投手も並行している。強い直球に加え、スライダーとフォークで三振も奪える。さらに、打撃も自信あり、50メートル走6・0秒の俊足を誇るなど、まさに「何でも屋」。それでも「投手で勝負したい」と、エース番号奪取に闘志を燃やす。
勝負強さも武器の1つだ。「中学で全国大会を3、4回くらい経験したことが大きいです」と話す。台湾代表での国際大会も含め、大舞台での経験が勝負強さにつながっている。「今年の夏は絶対に甲子園に行きたいです」。聖地から故郷へ活躍を届けるためにも、夏につながる春にする。【木村有優】
