
3日に肺炎で死去した巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄さん(享年89)の訃報に、ファンから別れを惜しむ声があふれた。
巨人の専用球場だった東京都の旧多摩川グラウンド(現多摩川緑地広場運動施設内硬式野球場)の近くで、おでん店「グランド小池商店」(同区田園調布)を営んでいた高橋文子さん(71)は、テレビで長嶋氏の訃報を知った。現役時代から知る突然のミスターとの別れに「病気をされていて、いつかこうなると思っていたけど、残念でしかない。本当にお疲れさまでした。ゆっくり休んでください」と声を震わせた。
球団からもファンからも愛されたお店は、同グラウンドが開設された1955年に食堂として開業された。家族で切り盛りし、「打撃の神様」と呼ばれた川上哲治氏や、長嶋氏と「ON砲」のコンビで巨人の黄金期を支えた王貞治氏(ソフトバンク球団会長)をはじめ、巨人OBやファンらが足しげく通った。
長嶋氏も、常連客の1人だった。高橋さんは「(いつ)最後に会った記憶はない」と振り返るが、ミスターが来店すると、必ず女将(おかみ)だった母・小池まつさん(故人)が接客していたという。
「おばちゃんのおまかせでいいよ」
球場のファンに振りまいた笑顔は、店内でも変わらない。長嶋氏はいつも、そう注文し、人気メニューだった、卵や大根のおでんの具をほおばっていた。
当時、店内にはサイン入りの色紙や写真、バットなどが飾られていた。しかし、店は昨年12月末で閉店。数々の記念品は、5月ごろに巨人へ寄贈したという。
高橋さんは「私が持っていたって意味ないでしょ。今の若い方は(長嶋さんのことを)知らない人もいるし、もっといろんな人に見られる場所に置いた方がいい」と言う。記録にも記憶にも残る背番号3は、ファンにも永久不滅の「巨人愛」を育んでいた。【泉光太郎】