
巨人の富山、金沢での北陸シリーズは“場外”に縁があった。28日の広島戦が開催された石川県立球場から5キロ、車で10分程度の場所に自然派弁当の「marutsuji」(金沢市藤江北1ー412)がこのほどオープンした。Jリーグの清水、広島などプレーし金沢で現役を引退した辻尾真二さんの妻・依玲奈さん(46)が切り盛りする。
依玲奈さんは大手航空会社の客室乗務員から高級宝飾ブランドでの勤務のキャリアを経て“料理人”になった。美人で知的で明るい-。自然と周りに人が集まる雰囲気を持った人だった。「元々は旦那のご飯作りからなんです。スポーツ選手の嫁は栄養とかしっかり考えてとか言われているんですが、当時は全然、料理が好きじゃなかったんです」と赤裸々に明かす。
コロナ禍を機に専門学校に通い、ミシュラン2つ星の飲食店にも勤務した。真二さんが引退後はJ3金沢で営業職に就いたこともあり、依玲奈さんはクラブハウスの食堂で働くことになったという。主に練習後のランチを提供し「選手のみなさんは元選手の嫁ということで安心して、いろんな相談もしてくれる。若い選手が多いので寮母さんのような存在なんですかね」。
スポーツ選手の胃袋を支える食事が好評で夕食もリクエストされるようになった。「最初はうまく食材の都合をつけてやっていたんですが、やっぱりそれだと限界があるんですよね。お弁当だったら自宅でも食べられるし、サポートできるかなと思って始めることにしたんです」。空き店舗を探し始めたら1カ月もたたずに見つかり、「marutsuji」をオープンさせた。
弁当は無添加、地産地消、グルテンフリー、30品目の素材にこだわる。アスリート弁当やキッズ弁当のメニューに並び、週4回購入可能のサブスク(1万5000円)も展開する。「スポーツ選手はもちろんなんですが、このあたりは住宅街なのでご家族で使ってもらえるようなお店にしていきたいなと思っています」と店の前まで出て見送ってくれた。
日替わり弁当とスモークサーモンとアボカドサラダを手に球場に戻った。まだ空に明るさが残る1回に増田陸が自身初の先頭打者アーチ。さらに2死からキャベッジが打った瞬間の1発は“場外”に消えるNPB通算11万号。試合開始から試合が動き、キーボードと打ちまくる。右翼席の外周に到達したホームランボールを捜索、5回裏には出前「すしレース」と大忙しだった。とはいえ、サッカー担当時代の縁が金沢の場外でもつながり、うれしかった。30日からは交流戦前最終カードの中日戦(バンテリンドーム)。チーム状態は悪くない。先発マウンドは赤星、グリフィン、戸郷で締めくくる。最後にひと言だけ。「優しい味でおいしかったです。ごちそうさまでした」。【巨人担当・為田聡史】