
メジャーリーグは、レギュラーシーズンの約4分の1を消化しました。そろそろ野球ファンの緊張が緩み始め、中だるみする頃になります。また、米4大プロスポーツのうちNBAとNHLがプレーオフたけなわで、王座を懸けた熱き戦いに注目が集まる時期となっています。
そこでメジャー機構は他のスポーツに負けじと、ファンの興味を引き付けようとして、史上初めて「ライバル対決ウイークエンド」と銘打って画期的なイベントを開催しました。5月16~18日(日本時間17~19日)の週末にかけて、全米各地で一斉に同都市対決や同州対決などライバル同士の試合を組みました。
中でも、我々にとって最大の注目カードは、西海岸ロサンゼルスを舞台とした「フリーウエーシリーズ」のドジャース対エンゼルス戦。大谷翔平投手にとって古巣との対戦であり、5月17日はロサンゼル市が昨年定めた「ショウヘイ・オオタニデー」。それに合わせるかのようにベテラン左腕クレイトン・カーショーが復帰。また、18日は菊池雄星投手との「花巻東対決」など見どころ満載でした。
さらに全米最高の注目カードとなったのは、テレビで全国中継もされたニューヨークの同都市対決「サブウエーシリーズ」のヤンキース対メッツ戦。昨年オフにヤンキースからFAとなり、プロスポーツ史上最高の15年総額7億6500万ドル(約1110億円)でメッツと契約したフアン・ソトがヤンキースタジアムに戻って来るとあって、かつてないほどの盛り上がりを見せました。
一方、大都市シカゴは「ウインディシティークラシック」、最近では通称「クロスタウンクラシック」と呼ばれるカブス対ホワイトソックス戦。5月8日に米国初のローマ教皇が誕生し話題となりましたが、そのレオ14世がシカゴ出身で当初はカブスファンと報じられました。しかし、実際はホワイトソックスファンであることが判明。因縁の対決に拍車を掛けました。
他には「オハイオカップ」と銘打たれた同州対決のレッズ対ガーディアンズ戦。今年からレッズの監督となったテリー・フランコナ監督は、2004、07年とレッドソックス時代に「バンビーノの呪い」を解くなど2度の世界一に輝き、13~23年のガーディアンズ監督時代は3度も最優秀監督賞を受賞した名将。古巣との対戦で注目を集めました。
同じ東部ペンシルベニア州に本拠を置き、1887年以来、長きに渡りしのぎを削って来たフィリーズ対パイレーツ戦もありました。昨年ナ・リーグ新人王に輝き、来年3月のWBC米国代表に選出されたパイレーツの先発右腕ポール・スキーンズに対し、同リーグMVPを2回受賞したフィリーズの主砲ブライス・ハーパーという夢の対決も実現しました。
また、同じアリゾナ州ピオリアで春季キャンプを行い、毎年インターリーグで対戦するパドレス対マリナーズ戦は、ロックンロールの殿堂入りエディー・ヴェダーに敬意を表し、公式に「ヴェダーカップ」と命名されています。その他にも紹介し切れないぐらい好カードがめじろ押し。この週末はどこも、観客動員数を伸ばしました。
ライバル対決ウイークエンドが終わると、今週末の24~26日(同25~27日)はメモリアルデーウイークエンド。これは毎年5月の最終月曜日がメモリアルデー、いわゆる戦没将兵追悼記念日で、週末から来週月曜日にかけて3連休となります。
メモリアルデーは夏のシーズンの始まり。すなわち、本格的な野球シーズンの到来を意味します。学校は夏休みに入り、各球団にとってはまさに書き入れ時。メジャーはシーズンの盛り上げ方がうまいと、いつもながら感心するばかりです。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)