
<DeNA1-1阪神>◇13日◇ハードオフ新潟
プロ5年目の阪神高寺望夢内野手(22)が起死回生のプロ初本塁打を放った。
「6番遊撃」で今季初めてスタメン出場すると、1点を追う9回2死からDeNA入江から右翼越えのアーチを描いた。佐藤輝、中野、村上ら虎の主力選手がそろう20年ドラフトでただ1人の高卒選手。非凡な才能を持つ黄金ドラフトの弟分が、新潟で輝きを放った。チームは今季2度目の引き分け。首位をキープした。
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土壇場の一振りで球場の雰囲気を一変させた。0-1の9回2死。敗色濃厚ムードの中、高寺がDeNA入江の低め148キロ直球を捉えた。打球はあっという間に右翼の柵越え。ボールはグラウンドにはね返ったため、何が起こったか分からず二塁まで全力で走った。高卒5年目、期待の若虎が初々しいプロ1号だ。
「ストレートがいいので、振り負けないようにスイングしていこうと。2アウトで追いつけた。入って良かった」
今季初めてスタメンに抜てきされた一戦で、結果を残した。前戦まで18試合連続遊撃スタメンの小幡が、「左下肢の軽度の筋挫傷」で前日12日に出場選手登録を抹消され、代わってプロ初の「6番遊撃」で先発出場。「やるしかない、チームのために、と考えていた」。第3打席まで二ゴロと2犠打も、今季初安打が、起死回生の1発となった。
新施設を存分に生かし、夜な夜なバットを振り込んだ。3月に開業した「ゼロカーボンベースボールパーク」。寮生の高寺は併設の室内練習場へ通うことが日課。練習等を終え、食事をとった後、1人で黙々と打ち込んだ。「めちゃくちゃいい環境なので、たくさん練習します」。快適な環境にも甘えず鍛錬を積んだ。
出場機会を増やすため、さまざまな守備位置に挑戦した。2月の春季キャンプ。主力中心の宜野座組で、内、外野問わず、泥にまみれた。この日に1軍で初守備の遊撃も練習。「慣れて、どこでも守れるようになればいいし、うれしい。やるべきことをやる」。準備してつかんだ、先発出場のチャンスをものにした。
家族も観戦する中で、記念のアーチ。「見に来ているときに打ててよかった。(本塁打の記念球は)実家に送ります」。起用に応えた姿に、藤川監督は「価値のある引き分けだった。(高寺は)素晴らしかった」とたたえた。
佐藤輝、中野、村上らチームの主力を担う選手がそろう20年の黄金ドラフトで唯一の高卒選手。「ここからがスタートと思うので、もっと打てるように頑張りたい」。年上の選手たちに続き、弟分が輝きを増し始めた。【塚本光】
◆高寺望夢(たかてら・のぞむ)2002年(平14)10月17日生まれ、長野県出身。上田西から20年ドラフト7位で阪神入団。22年6月8日のソフトバンク戦で1軍デビュー。昨季はウエスタン・リーグで最多安打を記録した。178センチ、76キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸は650万円。
▷高寺の恩師、上田西の吉崎琢朗監督「(プロ1号は)テレビで見ていました!冬にうちで自主トレした際に、今年にかける気持ちはすごく伝わっていました。1度は2軍に行きましたが、粘り強く期待に応えられましたね。今は、OBのオリックス横山(聖哉)や巨人笹原(操希)と高寺で切磋琢磨(せっさたくま)していると聞いています。いただいたチャンスの場で活躍して、チームの勝利に貢献してくださいね」
▷阪神藤川監督 途中から出た選手も自分がなんとかゲームをキープさせるといいますか、非常に必死になった姿が出たので、みんなの頑張りのおかげで1-1で終わることができたのかなと。自分たちの中では価値がある引き分けだなと思ってます。
▷阪神岩崎(5番手で11回に登板し、1回9球無安打無失点)「みんな粘ったんじゃないですか。(勝っていても、負けていても)もちろん。また頑張ります」
▷阪神湯浅(延長最終回を1安打無失点で締め、今季7戦無失点をキープ)「みんながつないでくれたので、試合を壊さないように、引き分けのまま終わらせられるようにと思ってマウンドに上がりました」
▷阪神及川(開幕から17試合で防御率0・00をキープ)「なんとか抑えられてよかったです。(記録は)継続していくだけなんで、なんとか引き分けに終われてよかったです」