
<春季高校野球岩手大会花北地区予選>◇2日◇北上市民江釣子野球場
頼れる3年生が、勝利を決定づける1発を放った。今春センバツ8強の花巻東が、花北青雲を11-0で下した。9-0の5回2死三塁、新田光志朗外野手(3年)が右越えに2点本塁打で5回コールド勝ちを決めた。
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鮮やかな幕切れだった。花巻東は9点リードで5回を迎えた。四球から盗塁などで走者を三塁に進めるも、すでに2死。投手も6回に向けて投球練習を行って備えていた。だが、打席の新田はこの回で試合を終わらせる一心だった。「ここで絶対に自分が決めてやるという思いしかありませんでした」。内角直球を捉えた当たりは「いったな」と手応え十分。右翼スタンドに吸い込まれた高校通算15本目は、県大会切符をつかむ決勝弾となった。
今春センバツではレベルの高さを痛感した。準々決勝で準Vに輝いた健大高崎(群馬)に1-9で大敗したが、収穫もあった。全3試合での打率は5割5分6厘。今秋ドラフト候補の健大高崎・石垣元気投手(3年)の155キロを中前へはじき返した。「甲子園は自分の持っている力以上を発揮できる場所だった」。大舞台での緊張感や雰囲気に、極限の集中力を生み出された。
さらに「後輩に負けたくない」という、並々ならぬ思いもモチベーションになる。同校は巨人古城茂幸内野守備コーチ(49)を父に持つ古城大翔内野手や、今春センバツでドジャース大谷やエンゼルス菊池も背負った出世番号「17」をつける赤間史弥外野手(ともに2年)が注目されている。新田は「1個下がすごい活躍をしているので、自分も負けないように存在感を出していかなくてはいけない」と闘志を燃やしている。
昨秋の岩手大会決勝では、一関学院に4-6で敗れた。同東北大会では4強入りしてセンバツ出場を決めるも「夏なら甲子園には行けていない」と満足はしていない。「まだ、岩手のてっぺんを取っていないので、夏につながるように、優勝にこだわってやっていきたい」と引き締めた。2度と敗戦の屈辱は味わわない。「もっとレベルアップして、あの舞台に戻り、次こそは勝ち上がりたい」。勝利を積み重ね、笑顔のエンディングを迎えるつもりだ。【木村有優】