
ドジャース大谷翔平投手(30)が、本来の姿を取り戻しつつある。「父親リスト」から復帰して4戦16打数2安打の打率1割2分5厘だったが、直近5試合では19打数8安打で同4割2分1厘と劇的に改善。MLB公式のデータ分析サイト「ベースボール・サバント」によれば、昨年と比べてボールを捉えるインパクトの位置が投手側にズレ、対右投手の構えのスタンスもやや開いていた。打撃コーチらとの話し合いで微調整。完全復調に近づき、5月に臨む。(取材・構成=斎藤庸裕)
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V字回復には訳があった。例年、春先は本調子とはいかない。まだシーズン序盤の4月で絶対数が少ないとはいえ、データでは右方向に引っ張ったゴロが今季は32・1%(4月終了時点)。過去7年間の平均を10%上回っている。条件をゴロに限定すると54・3%で、例年より15%増。ともに自己ワーストの数値だ。大谷の不調が続くときは、引っ張った打球、特にゴロが多くなる傾向がある。
「ベースボール・サバント」によると、昨年と比べてボールを捉えるインパクトの位置が変化。「50-50」を達成し、キャリアハイの成績を残した昨年、大谷はホームプレートの前部分から平均3・7インチ(約9・4センチ)の位置で捉えていた。一方で今季は平均1・6インチ(約4・1センチ)で、5センチほど前でインパクトしている。これに関してベイツ打撃コーチは「打球がライト方向だと、前になる。投球に対して動き始めるタイミングの問題。早く動こうとすると(体が開いて)ポイントを前にしてしまう」と原因を分析した。
大谷が打撃で最も重視する構えにも誤差が生じていた。昨年と比べスタンスは2・2インチ(約5・6センチ)広い。また、右投手に対して今季は体を開く角度が大きくなっており、昨季の7度から今季は8度。ベイツ打撃コーチは「意図的ではなかった。左投手の時のように自然と開くようになってしまっていて、今は元に戻している」と証言。確かに、約1週間前の時点では対右投手で体の開きの角度は9度だった。そこから1度修正され、現在8度。昨年の状態に近づきつつある。
同コーチによるとシカゴ遠征(4月22~23日)で大谷と話し合ったという。「自分を信じずに早く(体を動かして)打とうという感じがあった。詰まってもいい、打ち負けてもいいと思えると、もっと自分を信じて(引きつけて)打てるようになる」。すると大谷は26日のパイレーツ戦で3安打。左中間へのライナーで二塁打をマークした。30日のマーリンズ戦では、崩されながらも中堅フェンス直撃の三塁打を放った。わずかなズレを数度、数センチ単位で修正。状態を上げ、前半戦で最初のヤマ場となる敵地10連戦を迎える。