
<巨人2-0広島>◇30日◇東京ドーム
巨人山崎伊織投手(26)がセ・リーグ新記録となる開幕から35イニング連続無失点とした。前回登板で球団記録の高橋尚に並ぶ28年イニング連続無失点として迎え、広島打線を7回まで0に抑えた。63年中井(阪神)と23年村上(阪神)の31回を塗り替え、次回登板ではプロ野球記録の38回1/3に挑む。チームは6回に増田陸内野手(24)の1000日ぶりの打点となる適時二塁打で奪った2点を守り、連勝を3に伸ばした。
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ここまで取っておいた新たな宝刀を抜いた。2点リードの7回、山崎は1死一、二塁のピンチを背負った。広島の代打坂倉を三振に切って、再び代打の堂林。「序盤からフォーク、フォークってならなかった。残しておいたじゃないですけど」。今季習得し、ここまでの「0」行進でも威力十分だった浅く落ちる決め球を4連投した。ここぞの冷静な大胆さで空振り三振に仕留め、ほえた。「投げ切れた」と、気づけば開幕から105個のアウトを並べ、無失点は35イニングに延びていた。
初回には“巨人史”に名を刻んだ。2死から好調の4番末包を打ち取り、飛球を自らキャッチ。29イニング無失点とし、07年高橋尚の28イニングの球団最長記録を塗り替えた。「1人ずつ1人ずつ」と念じながら、以降も記録に気負わない。4回2死一、三塁。抑えればセ・リーグ史に名前を刻む場面で菊池を外角高めの直球で右飛とした。
「イ・オ・リ!」。試合後のヒーローインタビューで大歓声を受けた直後、静寂なベンチ裏で「リハビリから始まったんですけど、ここまで投げれるとは思ってなかった」とぽつりと言った。東海大4年の20年6月に右肘のトミー・ジョン手術を経験。1年目からリハビリの日々を過ごした。同様に20歳過ぎで手術をする後輩たちを案じ、声をかける。
「リハビリしてる時はほんとに投げてる姿とか想像つかないんですけど、やっぱり1日1日が大事なんで」。23年10月に手術を受けた21年ドラフト7位の花田は「手術する時から、伊織さんに『長い時間がかかるから』と言葉をもらって」と話す。焦らずに地道な日々を送ること。その大切さを説かれた。4月27日の3軍戦で約1年半ぶりのマウンドに立ち、「伊織さんの今の活躍が希望です」と復活を描く。
開幕からの無失点記録は1リーグ時代の39年高橋(阪急)の38回1/3、2リーグ制後は21年平良(西武)の38回がある。「投げてる姿をしっかりと見ていただいて、自分もそこで投げるんだという気持ちになってもらって。リハビリも『頑張ろう』という気持ちになっていただけたらうれしいですね」。迫る金字塔への歩みは己だけの道ではない。【阿部健吾】
▼山崎が7回を無失点に抑え、開幕から35回連続無失点のセ・リーグ新記録。63年中井(阪神)と23年村上(阪神)の31回を更新した。中井は救援→救援→完封→完封→完封→先発、村上は救援→先発→完封→先発→先発で記録したが、山崎は5試合すべて先発。パ・リーグ記録の38回をマークした21年平良(西武)は全試合救援、プロ野球記録の38回1/3をつくった39年高橋(阪急)は完封→完封→救援→救援→完封→救援。過去に開幕から31回以上無失点の投手は全員救援登板があったが、山崎はオール先発で無失点を続けた。また、山崎の登板はすべて4月で、月間30回以上投げて無失点は24年7月高橋宏(中日)以来5人目。