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【阪神】85年開幕戦「隠し球」敗戦責任をコーチが引き受け罰金 吉田義男さんと一枝修平さんの絆


阪神タイガースの元名監督である吉田義男さんが91歳で逝去されました。彼は1985年に球団初の日本一を達成した監督として、多くの野球ファンに記憶されています。吉田さんは、阪神で「今牛若丸」として知られた名遊撃手でもありました。特に印象的なのは、1985年の広島戦での隠し球事件です。この試合での敗北は、吉田さんにとってプロ野球の厳しさを再認識する瞬間となりました。彼は、このようなミスをチームの責任と見なし、コーチ陣と共に罰金を納めることで一体感を維持し、チームワークを重要視しました。彼のリーダーシップは結果的に阪神を団結させ、成功へと導いた要因のひとつだったと振り返られます。

吉田義男さん(2024年3月撮影)

<吉田義男さんメモリーズ13>

「今牛若丸」の異名を取った阪神の名遊撃手で、監督として1985年(昭60)に球団初の日本一を達成した吉田義男(よしだ・よしお)さんが2月3日、91歳の生涯を閉じました。日刊スポーツは吉田さんを悼み、00年の日刊スポーツ客員評論家就任以前から30年を超える付き合いになる“吉田番”の寺尾編集委員が、知られざる素顔を明かす連載を「吉田義男さんメモリーズ」と題してお届けします。

   ◇   ◇   ◇

今年もプロ野球の開幕が近づいてきた。25年シーズンの新生阪神は、敵地広島に乗り込んで、3月28日からマツダスタジアムでの3連戦で幕を開ける。

計3度の監督を務めた吉田さんは「開幕ダッシュはポイントですわ」と説いた。過去に同じ広島での開幕戦で“落とし穴”にはまった苦い思いが脳裏にこびりついている。

これでもか、これでもかとこだわった守備の達人が、敵の内野陣から仕掛けられたトリックプレーにあった。ベンチで怒りに似た悔しさを覚えたのは想像に難くない。

「まさかでした。悔しくてたまらんかったです。長いこと野球やってますけど、あんなプレーにあったことはありませんでした。めったにあるもんと違いますからね」

吉田さんが2度目の阪神監督に就いた1985年(昭60)の開幕戦だった。4月13日、広島市民球場での広島戦。3対3の同点で迎えた延長10回表の攻撃だった。

広島のサウスポー大野に、代打北村が左前打で出塁し、1番真弓がきっちりと犠打を決めた。勝ち越しのお膳立てができた瞬間、二塁走者・北村が“隠し球”にひっかかった。

広島の指揮をとったのは前年、日本一になって緻密な野球で知られた古葉竹識監督だった。二塁木下、ショート高橋の二遊間。最後は北村が木下からタッチを受けた。

絶好のチャンスがつぶれたばかりか、その裏の阪神はストッパー山本和が福嶋に中越え二塁打のサヨナラ打を浴び、開幕からショッキングな負けを喫した。

チームの敗戦は、監督が一身に責任を負う。2番弘田から、バース、掛布、岡田のクリーンアップで得点をもくろんだベンチの選手起用は裏目に出た。

「あんなんプロとして恥ずかしいプレーです。くせ者タイプの木下にまんまとやられた。不注意といえばそれまでだが、だれも気付かなかったということになりますわな」

また吉田さんは「ヘッドコーチ」のポジションに重点を置いた。監督を支える“番頭”は作戦面はもちろんのこと、チームワークを構築するカギと思っていたからだ。

開幕から衝撃的なサヨナラ負けを喫した試合後のことだ。コーチ会議の冒頭、三塁コーチの一枝修平さん(日刊スポーツ評論家)が「あのプレーはコーチの責任です」と切り出した。

そして、その場でコーチ全員から罰金を徴収したのだった。ヘッドコーチの肩書は気心の知れた土井淳さんで、守備・走塁担当の一枝さんは“ヘッド格”だった。

吉田さんは、一枝三塁コーチに全幅の信頼を置いた。逆にユニホームを脱いだ一枝さんが、最後まで吉田さんを「監督」と慕ったのは、2人の間にあるキズナの証しだった。

高齢になった一枝さんが体調を崩した際も、吉田さんは真っ先に兵庫県内の病院に見舞っている。その後も「一枝はどうしてますか?」と常にその様子を気に掛けた。

監督の吉田さんにとって“隠し球”は「気の緩みととられても仕方がなかった」という屈辱だった。ただ組織を束ねるリーダーとして簡単に弱みを見せるわけにはいかない。

だが腹心の一枝さんが率先して責任の所在がコーチにあることを明確にすることで、“親分”の吉田さんが受けたショックを和らげ、監督を孤独にしなかった。

そして吉田さんも「勝ち負けの責任はわたしにある」と自身も罰金を差し出すのだった。監督、コーチが一蓮托生を確認し、チームも“一丸”になっていった。

因縁の広島戦。初代日本一監督が天国から「勝ちきるまで油断はあきませんで。締まっていけよ」と見守っている。勝機はチーム一丸にあると言わんばかりに…。【寺尾博和】

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