
MLBワールドツアーの一環として、3月18、19日に日本で開幕シリーズが行われます。「東京シリーズ」と銘打ってのカブス対ドジャース2連戦が近づいてきました。東京都内では、さまざまなイベントで大変な盛り上がりを見せています。日本での開幕シリーズの歴史を振り返ります。
今から思えば、1980年代から大リーグは、野球の国際化、世界普及のため、ヨーロッパ、それも野球に全く縁のない旧共産国のチェコあたりまで指導者を派遣し、子供たちに野球の魅力を伝えて来ました。その頃からメジャーの世界戦略が、着々と浸透して行きました。
84年のロサンゼルス五輪で野球が公開競技となり、92年のバルセロナ五輪では正式種目として採用されました。野球がオリンピック種目になったことで、世界の野球は大きな進歩を遂げ、国境を越え、世界のさまざまな国で野球が楽しまれるようになりました。
96年に米国、カナダ以外の国として初めてメキシコで公式戦が行われ、地元の英雄フェルナンド・バレンズエラ(パドレス)が先発して勝利投手となりました。99年には初の開幕戦も行われ、地元出身のビニー・カスティーヤ(ロッキーズ)が大活躍。メキシコでの公式戦開催は大成功に終わりました。
2000年には初の日本開幕戦が行われ、メッツとカブスが対戦しました。当時は両チームとも日本人選手がいなかったにもかかわらず、東京ドームは連日超満員の大観衆。95年日本人大リーガーのパイオニア、ドジャース野茂英雄投手の活躍により、日本国内でも一気にメジャー人気が沸騰していたからです。
以来、日本での開幕戦は恒例行事となり、03年マリナーズの日本開幕戦はイラク戦争の影響で中止となりましたが、翌年あの名門ヤンキースが来日。特別に栄光のピンストライプのユニホームで試合に臨み、巨人時代の本拠地だった東京ドームで開幕第2戦、松井秀喜外野手が待望の凱旋(がいせん)アーチ。場内から大歓声が上がりました。
08年には前年世界一に輝いたレッドソックスが来日し、「1億ドルの男」として話題になった松坂大輔が開幕投手を務め、リリーフの岡島秀樹が勝利投手となりました。12年はついにマリナーズが来日し、メジャー記録の10年連続200安打を引っ提げてイチローが凱旋(がいせん)。開幕戦でいきなり4安打の固め打ちを見せました。
19年はマリナーズが再び日本開幕戦を行い、イチローの引退試合となりました。試合後、ファンの拍手に応えるかのように手を振りながら場内を1周。メジャー19年間で通算3089安打など数々の金字塔を打ち立て、日本最高の安打製造機がバットを置きました。
そして、今年カブス対ドジャースの日本開幕戦です。昨年世界一のドジャースは大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希各投手を擁し、カブスは今永昇太投手、鈴木誠也外野手が在籍し、日本人対決が実現します。史上空前の大フィーバーとなっています。
今や、米4大プロスポーツの中でNFLやNBAなどに負けず、メジャーリーグもグローバル化を目指し、市場拡大の動きが高まっています。特に、近年はワールドツアーとして日本や韓国、英国の首都ロンドンなど、世界各地で公式戦を開催するようになりました。その中でも最大のマーケットは日本であり、日本人選手たちの活躍が成功のカギを握っていると言えます。
そこに世界最高の野球選手、投打二刀流のスーパースター大谷が登場しました。彼こそが世代から世代へと受け継がれる「球界の宝」です。その球界の宝を一目見ようと、日本開幕戦のチケットは空前のプラチナペーパー化。それはお金で買えない価値があり、球場で見られる人は孫の代まで語り継ぐことでしょう。
【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)