
<近本光司コラム:研鑽>
阪神近本光司外野手(30)が日刊スポーツで本音をつづるコラム「研鑽」(けんさん)。25年第1弾は30歳を迎えてたどり着いた独自の「目標設定論」を展開した。「勝負の年」と位置づける今季は国内FA権取得、通算1000安打、200盗塁と大きな節目が迫る。キャリアの分岐点に立つ中で意識するのは「今を生きる力」。野球人生の“終わり”も脳裏に浮かべながら臨む今季への思いを語り尽くした。【聞き手=山崎健太】
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日刊スポーツ読者の皆さん、阪神タイガースの近本光司です。春季キャンプが終わりました。今年も充実したキャンプを送ることができ、シーズンに向けて着々と準備を進めています。昨年11月に30歳を迎え、今季は「勝負の年」と位置付けています。今回は僕にとっての野球人生のゴール、年齢との向き合い方や今季の位置付けについて話していきたいと思います。
30歳という1つの節目を迎え、この先のプロ野球選手としての時間を考えた時に、本当にもう終わりが近づいてるなと思いました。ビジネスマンだったら50代後半。そろそろ定年を迎えるという感覚です。実際に定年間近の人と「僕もそうなんすよ」みたいな話をしたら、まだ全然、まだまだ若造の分類だから「いや、まだ30でしょ?」と言われました(笑い)。
でも野球界では30歳以上で野球する人は少ないし、引退が見えてくる年齢でもある。野球人としてはある程度、最終形態というか「こういうプレースタイルになっていくんだろうな」と想像する人が多いと思います。
じゃあ自分はどういう形にしていくか。それは今想像したところで結局変化するものなので、僕はあまりイメージはしない。その時に自分がどういう状態なのか、どういうスタイルなのかというのは、逆に自分でも楽しみな部分です。「年齢で変化を感じますか」と聞かれても分からないのが事実。でも正直少し実感する部分もある。でも認めたくない自分もいます(笑い)。なので、そこはあまり意識しなくてもいいのかなと今は思っています。
今年は“FA年”や1000安打、200盗塁なんて言われますけど、結局は目の前のことをしっかり取り組むことでしか積み上がっていかないと思っています。もちろん先を考えてそのために目標を決めることも大事です。でも今やっている目の前のこと、今日という日をしっかり取り組む方が僕はいいなと思います。
引退するまでのプレースタイルを決めていないのも、積み上がった結果そういう形になってるっていう気持ちでいいかなと思っています。そこまで縛られることもないし、目標を決めるのも別にその目標設定が正しいかどうかも分からない。後付けの方が気持ち的にも楽なので(笑い)。
今年も1年始まりますが、終わって振り返った時に「今シーズンもいいデータ取れたな」と思えたら良いですね(笑い)。もちろん成績が良いに越したことはないんですけど、ただ成績が良かっただけじゃなくて、自分の新しい一面が見られたり、「これができなかったな」とか「なんでこの成績だけ伸びてるんだろう」とか。それがしっかり見られたら、それは自分の中でも成長につながるし、来年にもつながる。またそれが3年後、5年後につながってくると思います。
人生まだまだ。30歳の若造なんでね(笑い)。勉強というか探究してっていう感じですかね。本当にいつまで野球できるかも分からないし、大げさに言うといつまで生きられるかも分からない。でもいつかは終わりが来るから、今できることはしっかりやろうと思います。
結局は1日1日の積み重ねだと思います。シーズンも長い目で見たら前半、後半、1カ月となりますけど、その日の試合でどれだけ自分の体を理解して相手にアプローチができるかだと思います。もっと細かく見たら「さっきの打席がこうだったから次の打席はこういうアプローチをしよう」みたいなことになります。結局は細かく自分の体とメンタルをコントロールできるかだと思っています。でも方向性を見失う時もある。「なんでこんな練習やトレーニングをしているんだろう」と考える時もあります。でもそれは1つ「なんとかなるっしょ」という気持ちでやってるから大丈夫だと思っています。
今年のキャンプもそうでした。始まると絶対に力むし疲れてくる。だから自主トレでやってきたことができないのは想定内。じゃあその中で何が残っていくのか。何が削られて自分の中で本当に大事なものがどれだけ残っていくのかをキャンプで確認してシーズンに向けて準備を進めていました。
やってる時は常に「これが良い」と思ってやっているので、シーズンが終わって振り返った時に「こういう意識で打席に入った時に新しい引き出しが増えたな」とか「あれ? あの時は良いと思ってたけど実際良くなかったな」というのは終わってからしか分からない。そういう意味では良かった悪かったも含めて、たくさんあればいいなと思いますね。
○…近本は3日、甲子園室内練習場での全体練習で軽快な動きを披露した。雨天のため屋外での外野守備練習はできなかったが、フリー打撃、ゴロ捕球などで汗を流した。チームは4日から9日まで本拠地・甲子園で中日戦など5試合が予定されている。今年初の甲子園ゲームとなる4日中日戦から徐々に本番モードに突入していく。