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<シービリーブスカップ:米国1-2日本>◇26日(日本時間27日)◇第3戦◇米カリフォルニア州サンディエゴ
ニルス・ニールセン監督(53=デンマーク)率いる新生女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」が、パリ五輪金メダルの開催国・米国(FIFAランキング1位)を2-1と下し、初優勝を飾った。
ともに2勝で並んでいた中、MF籾木結花(レスター)とDF古賀塔子(フェイエノールト)の得点で3連勝した。米国に勝利するのは2012年3月のアルガルベ杯以来、史上2度目。2年後のW杯ブラジル大会に向け、最高の船出となった。今大会4得点、3アシストの田中美南(ロイヤルズ)が大会最優秀選手(MVP)に選ばれた。
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強く、明るく、笑顔が映えるナデシコがいた。優勝セレモニーでムードメーカー高橋を中心に、誰もが笑顔でトロフィーリフトを行った。常に壁となってきた米国を破った。相手を強く意識するゆえのメンタルブロック-。心のブレーキを解き放たせた。過去1勝8分け31敗。11年W杯決勝のPK戦は引き分け扱いのため、12年以来史上2度目という待望の勝利。以前なら戦う前から気持ちで負けていた。それを乗り越えたことが一番の収穫だった。
ニールセン監督は「勇敢に戦った。怖がらずにパスを回してくれた」。そしてこう続けた。「米国のような勝者のメンタリティーにあふれたチームを倒すということは日本の目指すところ。それが実った」。初陣の大会で3連勝、10得点。ボールを保持して主導権を握るサッカー。11年W杯で頂点に立った頃を想起させる流動性を復活させた。
個性を解き放たたせる-。前半2分、長谷川のスルーパスを受けた籾木の鮮やかなターンからのゴール。後半5分、FKからのこぼれ球から決めた19歳古賀もしかり。チャレンジすることを恐れず、常に前向きに戦った。その結果だった。
その耳にピアスを光らせるニールセン監督は、個性派のアーティストに他ならない。短所に目をつむり、長所を引き出す。その信念は音楽の世界から得た。エリック・クラプトンを好み、崇拝するのは「キング・オブ・ポップ」マイケル・ジャクソン。「聞くたびに新たな発見がある」。音楽同様、なでしこの魅力にも敏感だ。個性を束ね、より一体感を高める。「見てて楽しい、やって楽しい」は選手たちが同様に口にする言葉だ。第2戦のコロンビア戦で開始早々にミドルシュートをたたき込んでいるMF谷川は「1人1人の個性を大事にしてくれる。伸び伸びとプレーできるからうまくいく」と証言した。
ただ本当の道のりはここからだ。この日の米国は若手中心メンバーだったことも踏まえ、DF熊谷は「タイトルは取れたけどまだまだ。今回をいい自信にして世界で戦えるチームになりたい」。なでしこの花を再び世界で咲かせるため-。ニールセン監督のもとブラジルへの旅路が始まった。