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<明治安田J1:東京V0-1清水>◇第1節◇16日◇国立◇観衆5万2541人
3季ぶりJ1復帰の清水エスパルスが「聖地・国立」から再出発の一歩を踏み出した。
23年J1昇格PO決勝と同カードとなった東京Vとの開幕戦は1-0で完封勝ち。雪辱を果たし、J1では904日ぶりの白星を挙げた。DF高橋祐治(31)はPO決勝でPKを献上し、J1昇格を逃した戦犯として誹謗(ひぼう)中傷を受けた。同じピッチ、同じ相手との一戦で途中出場し、無失点に貢献。2年前の悪夢と決別した。
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悲劇の国立が歓喜に変わった。高橋にとって悪夢となったPO決勝から442日-。後半40分から途中出場すると、危なげない守備で完封勝利に貢献した。試合後は笑顔だった。「たくさんの人の支えがあってここまでこれた。2年前の悔しさを国立で晴らすことができて本当によかった」。
勝てばJ1昇格だった23年12月2日のPO決勝。1点リードの試合時間残り3分で同点とされた。そのPKを献上したのが高橋だった。正当なスライディングに見えたが、判定は覆らなかった。PKを決められ、年間順位が上だった東京VがJ1昇格。天国から地獄に突き落とされ、「自分のせいでJ1に上げられなかった」と責めた。
自身のSNSには容赦ない卑劣なコメントが寄せられた。妻で元AKBのタレント高城亜樹にも誹謗(ひぼう)中傷の被害が及んだ。事態が深刻化し、クラブが法的措置の対応を取る声明を発表。「自分のせいでいろんな人を悲しませてしまった」と、さらに背負い込んだ。
それでも家族やチームメート、サポーターの支えで再起した。「批判してくる人はごく一部。その何倍も何十倍も応援してくれている声をいただいた」。活躍を期待するサポーターの声援を力に変え、昨季は守備の要としてリーグ戦30試合に出場。J2優勝でのJ1復帰に貢献し、「楽しみにしていた」J1の舞台に戻ってきた。
試合後はMF乾貴士(36)に促されて「あの場所」に向かった。自身のスライディングでPKを献上した場所で記念撮影。「笑いに変えられましたね。ここから純粋にサッカーが楽しめる気がします」と言った。重い十字架を背負った2年間の苦しみからようやく解放される。やっと、心の底から笑えることができた。【神谷亮磨】
◆高橋祐治(たかはし・ゆうじ)1993年(平5)4月11日、滋賀県生まれ。京都の下部組織から12年にトップ昇格。その後は讃岐、鳥栖、柏と渡り歩き、23年に清水に加入。J通算262試合出場5得点。妻は元AKBでタレント高城亜樹。実姉は女優でモデルの高橋メアリージュン、モデルの高橋ユウ。187センチ、80キロ。右利き。
◆清水の国立 公式戦の白星は1-1からのPK戦を5-4で制した02年2月23日のゼロックス杯鹿島戦以来23年ぶり。同年8月17日のJ1横浜戦で0-0と引き分け、03年からは10連敗を喫した。その後も3試合連続ドローと「鬼門」にしていた。もっとも、J1リーグ戦に限ると、通算19勝1分け12敗と白星先行。95~00年に12連勝を記録するなどJ1の国立開催を得意にしていた期間もある。