<潜入>
日本ハム新庄剛志監督(53)は春季キャンプ第1クール最終日の4日に、ドラフト1位の柴田獅子投手(18=福岡大大濠)のフリー打撃を初めてチェックした。紅白戦が行われた2軍キャンプ地の沖縄・国頭に到着後指揮官が真っ先に向かったのは、柴田がいた室内練習場。緊張感が漂う中で、大物ルーキーのスイングに「合格」を与えるまでの10分間に潜入した。
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午前10時20分。柴田は国頭の室内練習場でティー打撃をしていた。そこに「おはようございます」。声の主は新庄監督だ。気付いた柴田は慌てて「おはようございます」と頭を下げる。そしてティー打撃再開。その姿を、指揮官は見る角度を変えながら、ずっと見つめていた。
5分後、柴田はヘルメットをかぶり打席へ入った。新庄監督も室内練習場の中央へ移動。その途中で声をかけた。「アピールしなくていいよ。普通に打って」。柴田も「はい!」と元気よく返事。3分間2セットのフリー打撃が始まった。
柴田は「昨日(3日)は打球に角度を出せなかったので、バットを潜り込ませるという課題でやっていた」とノーステップで高弾道の打球を連発した。約20スイングを見届けた新庄監督は、柴田には声をかけずに退出。報道陣には「合格。この本数で。すばらしい。さすが」。端的に褒め言葉を残したのが同10時半だった。
もともとは紅白戦の開始時間(午前11時半)に間に合うように国頭に到着する予定だった。ただ柴田の打撃練習が10時20分からと知り、名護からの出発時間を早めた。そこまでして見たかった新庄監督は「2球打った時点でOKぐらいの打撃フォーム。最初は詰まるのは間違いないけど、今のフォームを崩さなければ、だんだん慣れていく。全然問題ない」とたたえた。
柴田の第1クールは投手がメイン。野手メニューは「(3、4日目の)バッティングだけ」(柴田)だった。その中で、たった2スイングで新庄監督のハートをつかんだ大物ルーキー。指揮官は「投げる方も見てみたい」。投打で夢が広がる10分間だった。【木下大輔】