阪神藤川球児監督(44)が20日、都内のホテルで行われた12球団監督会議に初めて出席し、ライバル指揮官との対面で火花を散らした。セ・リーグの5監督とは「勝負の前に話すことはない」との信念で会話なし。CS1位のアドバンテージについての話題では、日本ハム新庄剛志監督(52)の力強い一言で「心に火がついた」とも。3月28日の敵地広島戦で開幕するシーズンを念頭に、火の玉指揮官が熱いハートで“前哨戦”に臨んだ。
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藤川監督の表情は穏やかだった。だが目の奥には早くも戦いの炎が宿っていた。
「セの監督ですか? 全然話してないですね」。12球団監督会議デビューで、今季戦う敵将11人と対面。特にセ・リーグでは、V争いのライバル巨人阿部監督はもちろん、元同僚で北京五輪も共闘した広島新井監督らとも会話を弾ませることなく、火花を散らした。
「我々の世代がちょうどそういう時代ですから。あまり勝負の前に話すことはない世界観で過ごしてきた。最後の世代というか」
現役時代、シーズン中も含めて相手選手と言葉を交わすことはなかった。敵となれ合わない本能そのまま、“前哨戦”に臨んだ。
監督会議ではセのDH制、7回制、“申告三振”の導入など、さまざまなテーマが話題になった。藤川監督のハートに点火したのは、現行の「CSのルール」だった。大きくゲーム差をつけて優勝した場合、リーグ1位のアドバンテージが1勝は少ないのでは? そんな意見が出た時だった。
「ほとんどの監督さんが『それ(今のまま)でいいじゃないか』と。強いチームが勝つんだという意味では、ぼくも同じように心に火がついたと言いますか」
虎の先輩でもある新庄監督が、きっぱり言ったという。「ゲーム差、離されなければいいじゃない」。阪神で2年間ともにプレーし、格好いいと慕う大先輩のズバリなひと言。「一言で終わった。いいな、やっぱりだなと。勝負師だなと思いましたね。10ゲーム差離していようが、離されていようが、目の前に来た相手チームと本気で戦うことが一番重要ですから」。どれだけゲーム差が開いても、2個のアドバンテージなど全く無用。闘将としてのあるべき姿を再確認した。
5人の新監督の1人として、先輩指揮官たちの話を聞いての気づきがあった。「チームを背負ってやっているというところと、とにかく戦うんだという。CSであったり、DH(の話)となった時には、全然表情が変わりますね」。スイッチが入ったかと問われると、笑いながらも否定しなかった。「感じる部分はありましたよ。それはお互い勝負師ですから」。シーズンの戦いはもう始まっている。【磯綾乃】
○…阪神藤川監督が日本ハム新庄監督からかけられた一言を明かした。「『ハイタッチしようね』とおっしゃていました」。新庄監督が試合前のメンバー表交換時に行っている恒例の儀式。交流戦などで対戦した際のオファーを受けたようだ。「底辺にあるのは(野球ファン減少への)危機感だと思います」と賛同した。監督会議では、藤川監督から野球人気拡大へのアイデアを提案したという。「テレビ、メディアの使い方。それからSNSの使い方も考えて、子どもたちにつなげていかなければということは、僕の言える範囲では言いました」。SNSを駆使している新庄監督らとタッグを組み、プロ野球界を盛り上げていく。