<プレミアリーグ:マンチェスターU1-3ブライトン>◇19日◇第22節◇マンチェスター
ブライトンの日本代表MF三笘薫(27)がアウェーのマンチェスター・ユナイテッド戦にフル出場し、1-1の後半15分に今季5ゴール目となる決勝点を挙げた。
16日のイプスウィッチ戦に続く2試合連続ゴールで、プレミアリーグ通算15得点。レスターで活躍したFW岡崎慎司の14得点を抜いて日本選手の最多記録となった。前半5分には先制点もアシストし、3-1勝利の立役者となった。
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世界最高の舞台で三笘が新たな伝説を残した。「夢の劇場」オールドトラフォード。不調とはいえ相手は世界的メガクラブ、マンチェスターU。後半15分、右からのクロスボールにファーポスト際に体を投げ出し、右足アウトサイドで押し込んだ。相手選手と交錯しながらゴールポストに飛び込む、アクロバチックかつ泥臭さ満点の1点だった。
日本人最多の15得点に74試合目にして到達。「もっと、もっと取らないと。勝利に貢献しないと試合に出られない。まず試合に出ることで、それ(ゴール)がついてくるだけかなと思う」。日本人の枠を超え、もっと先を見据えている。
注目された一戦となった。1960年代のマンチェスターUの黄金期を支えた名ストライカー、デニス・ロー氏が前日に84歳で死去。追悼セレモニーが試合前に実施され、名将ファーガソン氏ら歴史を彩ったOBがそろった。7万3758人で埋まった本拠地は手向けの勝利を期待する空気が充満していたが、「三笘無双」で切り裂いた。開始早々、背後を突く鋭い抜けだしから“ほぼ三笘のゴール”と言えるアシスト。レジェンドを勝利で送り出すはずの舞台をジャックした。
なぜ三笘はゴールできるのか? 「あそこに入り続けるのが大事」と明かす。その動きは英国で言う「フォックス・イン・ザ・ボックス(Fox in the box)」。足音を消してペナルティーボックスに突如として現れるストライカーを指すが、文字通りずる賢いキツネと化している。推進力あふれるドリブラーのイメージが強いが、それはチャンスメークする上で1つの姿であり、近年は得点するためのオフザボールの動きに磨きがかかる。
プレミア全15得点を分析すると、その変化が見えてくる。得点位置は全体の87%(13点)がボックス内。しかも今季5点はすべてワンタッチゴールだった。世界で最も厳しいボックス内の駆け引き。得点を奪う方策として手数をかけないことは鉄則。ボールの先を読み、持ち前のスプリント力を生かしたフリーランで鋭くスポットへ入り込む。まさに狩猟文化の色濃い国で、ゴール前という深い森に潜むキツネを演じている。
高まる手応え感。「今日のような強度や勝ちたいというメンタリティーを出せば、もっと上に行ける」。くしくも異なる時代を生きたストライカー、ローと三笘が交錯した日。一つの歴史の終わりとともに、新たな歴史が生まれた。
◆アシストも最多 三笘はプレミアリーグ在籍3季目で、通算74試合15得点12アシスト。得点だけでなく、アシストも日本選手の通算最多記録で、2位はMF香川真司とMF稲本潤一の6アシスト。通算74試合出場はDF吉田麻也の154試合、FW岡崎慎司の114試合に次いで3位。アジア選手の最多記録は、韓国代表の孫興民(トットナム)が322試合126得点68アシストで3部門いずれも1位となっている。