ロッテからポスティングシステムでメジャー移籍を目指す、佐々木朗希投手の大争奪戦がスタートしました。ジョエル・ウルフ代理人によると、既に20球団以上が接触していることを明らかにしました。
その中で最有力候補は、ドジャースであることに間違いありません。本拠地ロサンゼルスは1年中温暖な気候に恵まれ、日本人が住むにも快適な場所。その上ドジャースは12年連続プレーオフ出場、今年は8度目の世界一に輝いた常勝軍団です。日本人選手の受け入れ態勢も十分に整っています。
しかしながら先発投手陣に課題があり、既に今オフはジャイアンツからFAで先発左腕ブレーク・スネルを獲得。それでも優勝するには、もう1人の先発投手獲得を目指しており、日本の若きエース佐々木獲得を最優先事項としています。
また、ドジャースは伝統的に投手王国であり、幾多の大投手を輩出しています。若手育成にも定評があり、メジャー30球団で断トツの18人もの新人王が誕生。昨年WBCで日本代表の同僚だった大谷翔平、山本由伸両投手もいて、佐々木にとって最適なチームと言えます。
それに対し、佐々木争奪戦にはパドレスが自信を示しています。パドレスには佐々木が尊敬するエースのダルビッシュ有投手が所属しています。23年からダルビッシュとは6年契約を結んでおり、28年まで契約が残っています。したがって、もし佐々木が入団すれば、今後4年間チームメートになれるわけです。
今年パドレスは地区シリーズでドジャースに敗れたものの、全米随一の野球専門誌「ベースボール・アメリカ」選出による、最も優秀な球団組織に贈られる「オーガニゼーション・オブ・ザ・イヤー」を受賞。将来を見つめるチームにとって最高の栄誉です。また、本拠地サンディエゴはロサンゼルス以上に晴れの日が多く、いまやパドレスはドジャースに匹敵するほど魅力的なチームでもあります。
しかし、ウルフ代理人が地理的条件について「問題にしていない」と言うのであれば、大都市ニューヨークを本拠地とするヤンキースに行って欲しい気持ちもあります。なぜならロッテの大先輩であり、往年のエースだった伊良部秀輝投手の存在があるからです。
1997年ロッテのエースだった伊良部はヤンキース入りを強く希望し、ロッテと業務提携していたパドレス経由で念願のヤンキースに移籍しました。当時日本人最速158キロの剛速球を武器に「和製ノーラン・ライアン」と称され、98年チームの世界一に貢献。日本人初のチャンピオンリングを手にしました。
ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMも、佐々木に対して「プレゼンテーションの用意をしている」と争奪戦へ準備万全です。今は亡き伊良部のヤンキース魂を受け継ぎ、ワールドシリーズの大舞台でドジャース大谷との対戦も見たいものです。
それでも、本人が西海岸を希望するならエンゼルス入りをひそかに期待しています。なぜなら、70年代にエンゼルスで伝説の速球王ノーラン・ライアンが大活躍し、日本では「カリフォルニア超特急」と呼ばれた剛速球が人類初の時速100マイル(約161キロ)を突破しました。そのライアンと同じチームで投げる姿を見たいからです。
3年前にエンゼルスのペリー・ミナシアンGMと会った時、「日本人投手に興味がある」と言い、当時オリックスの山本らの話題で盛り上がりました。そして、今オフようやくアストロズからFAの菊池雄星投手獲得に成功。佐々木も取って、フリーウエーシリーズで大谷との対決も見たいものです。
はたして、大本命とされるドジャース以外の球団に、令和の怪物が行く可能性はあるのか? 来年1月23日(日本時間24日)の交渉期限まで、いろいろ移籍先を妄想しながら待ちたいと思います。
【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)