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【宮本慎也】侍ジャパン、前日の先発変更への追加クレームで台湾の闘争心MAX 今後へのいい教訓


日本はラグビーWBSCプレミア12の決勝戦で台湾に0-4で敗れ、優勝を逃しました。前日の予告先発ルールの変更が試合の流れを変え、台湾のエース、林投手の圧倒的な投球が日本を圧倒しました。台湾は、前日の急な先発変更で日本の抗議を受けたが、違反の罰金を承知で決勝にエースを投入。試合開始時間や大会ルールそのものは日本に有利だったものの、このルール違反の処理が逆に台湾の闘争心を駆り立て、日本側への負の影響を与えました。台湾の精神的な高揚が試合を制した一方、日本は優勢と思われた流れを逆手に取られ、5回の失点によって試合の主導権を失いました。結果として、勝利への油断が敗北を招くという貴重な教訓が得られたといえます。

日本対台湾 台湾に敗れ優勝を逃し、ぼうぜんとする日本ベンチ(撮影・鈴木みどり)

<ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12:侍ジャパン0-4台湾>◇24日◇東京ドーム

圧倒的な勝利を重ね、全勝で決勝戦に進出した日本。今大会を見続けている人は勝負事に絶対はないとはいえ、高い確率で勝てると思っていたのではないか? もちろん、ここまでの戦いぶりを見れば、そう思うのは当たり前とも思える。しかし、今試合は始まる前から嫌な予感がしていた。

なぜか? 前日、先発投手を巡っての経緯が嫌な予感の始まりだった。今大会は予告先発だったが、台湾が前日の試合前の直前に急きょ、先発を変更した。デーゲームで米国がベネズエラに勝利。日本-台湾戦の結果に関係なく両チームの決勝進出が決まり、台湾が予告先発していたエース林■(■は日の下に立)■(■は王ヘンに民)を、今試合の決勝戦に先発させるためだった。

当然、日本は抗議して台湾は罰金を科せられ、前日の試合は林と同じ左投手が先発することで変更が認められた。ルール破りを認めていては、競技そのものが成り立たなくなる。決まっているルール内で判断するなら、日本の主張は正しいだろう。しかし、そもそも今大会は、スーパーラウンドで試合開始時間が確定されていた日本に有利なルールでもあった。

個人的な臆測だが、林はダイヤモンドバックスの所属投手で「連投はさせない」という条件で今大会に参加していたのだと思う。台湾側からすれば消化試合にエースを先発させる必要はなく、決勝戦で先発させたいのは当然だろう。日本の勝利確率を度外視して言えば、大会を盛り上げるためにもその方がいい。

ルール違反をした台湾だが、そもそもの今大会のルールや開催日程は日本が有利。そして実力差もあった。そんな条件下で「同じ左を先発させろ」など、小さなクレームを付けることに、それほどの意味はないと思っていた。本来なら負い目を感じてもいいはずの台湾だが、追加のクレームで闘争心はMAXに膨れ上がっていた。

先発した林は、すさまじい迫力だった。ボールが抜けて打者の頭部付近にいっても「なんか文句あるのか!」という表情。インコースにもどんどんと投げ込み、荒れ球の投手に好投する条件にはまっていた。捕手もピンチを招く度に投手にゲキを送っていた。打席でも先制本塁打を放った。

気迫に押されたのか、日本の戸郷ー坂倉のバッテリーも序盤はフォークでかわすピッチング。こうした投球だと短いイニングならいいが、3回り目ぐらいから苦しくなる。案の定、5回には2本塁打を浴びて4失点。試合の主導権を奪われてしまった。

勝負事の怖さだろう。このゲームに限らず、余計な発言で相手チームを怒らせ、負けてしまった試合は何度も見てきた。ただ、圧倒のまま優勝するより、今後へのいい教訓になったと思う。劣勢な精神状態をはね返す本当の実力をつけてほしい。(日刊スポーツ評論家)

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