東京学芸大が23日、第57回関東大学サッカー大会(関東大学リーグ3部参入戦、会場は非公表)最終節で尚美学園大を1-0で破り、1位で関東3部への自動昇格を決めた。
鹿島アントラーズやベトナム1部ハノイFCで監督を務めたOBの岩政大樹氏(42)は、8月末からチームにコーチとして復帰し、チームを関東復帰へ導いた。
「選手たちがよくやってくれた。(参入戦)5試合で勝ち点11、失点3で得点も多く取れた。理想的な展開だった。こんなにことごとくうまくいくことはなかなかない。桐田さん(英樹監督)はじめ、選手たちの積み重ねたことが出た」
大学時代の1期上にあたる桐田英樹監督の作りあげたチームに、1エッセンス加える役割を果たした。監督がたたき込んだサッカーの原理原則を元に、ビルドアップや最後の崩しのアイデア、プロで培ったセットプレーの守り方などを惜しみなく伝えた。
導かれるように学芸大での指導が実現した。昨季限りで鹿島の監督を退任すると、今年1月からハノイで指揮を執った。チーム作りに手応えを感じ、シーズン終了時に来季のオファーを受けたが断った。来季国内で監督を務めるために、秋の時点でフリーである必要があったからだ。夏に帰国すると、指導という観点では空白の半年が生まれた。そこで浮上したのが母校での指導だった。「自分自身がたくさん学びを得られた。現場でいろいろ選手と向き合わないと分からないことがある。ハノイでの成功体験を日本人に当てはめて、同じように結果に結びつけられて、自分の中で確立できた」と手応えをつかんだ。
元日本代表経験もある大学のレジェンド。影響力が大きいだけに、その帰還は悪い方に転ぶ可能性もあった。しかし顧問の新海宏成准教授は大学時代の同期で、桐田監督は先輩。1学年下の星貴洋コーチも含めて旧知の仲間がそろっていたことがプラスに作用した。「半年でここまで上昇気流に乗れたのは、周りに近い存在があったからこそ。母校だからというのはあった」。
8月末に初めて来た頃から、チームは大きく成長した。「指導者として優勝ってあまり経験がないので、そういう意味でも自分の中で大きな経験でした。学生、学芸大に感謝です」。これ以上ない、恩返しとなった。【佐藤成】