アリになれ! 阪神藤川球児監督(44)がイソップ物語「アリとキリギリス」を引き合いに、来春キャンプで体力づくりを重視する意図を解説した。
「今度は貯金ですから。シーズンに対する体力的な貯金をしなきゃいけない。やっぱり甲子園は暑い。夏場の練習量を落としますから。そのためにも『アリとキリギリス』だよ、と。ちゃんと蓄えを持っていかなきゃいけない」
働きもののアリは、冬に向けて夏場からせっせと働き、食料をため込んだ。かたやキリギリスは先を見ず、遊んでいたら後悔するはめになった。プロ野球に置き換えれば、シーズンを通して体力をマネジメントすることに他ならない。
キャンプで体力を「貯金」するという考え方は古くから一般的だった。メジャー流のコンディショニングが入ってきた近年は様相が変わってきたが、日米両方を経験している藤川監督の言葉だから奥が深い。
「アメリカの気候とは違いますから。日本には春夏秋冬がちゃんとある。夏に備えるというのは、日本の本当に大事なところ。過去にやってきた今のコーチたちも、2月に練習していなければ相当体力が落ちることを分かっているし」
今年の阪神は甲子園開催が多かった7月が14勝8敗。ただ、一気に上昇したかった8月は11勝13敗1分けと波に乗りきれず、優勝に1歩届かなかった。「貯金」をいつまで保てるかはともかく、2月に鍛え上げることがシーズンを乗り切る上で重要になる。指揮官は秋季キャンプ中にコーチ陣に経験談をヒアリングしていたという。
かつて中日の黄金期を築いた落合博満監督も、春に猛練習を課した。ランニング、筋トレに個別ノック。沖縄で流す大量の汗が、シーズンではチームの貯金を生むはずだ。【柏原誠】