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【阪神】原口文仁がFA宣言を決めた理由「若い子に交じってでも」苦渋の心境は表情にも


阪神タイガースの原口文仁選手(32)が国内フリーエージェント(FA)権を行使する決断を発表した。自身の出場機会を求め、阪神在籍中の代打中心からレギュラー争いを目指す決意を固めた。大腸がん治療からの回復を告げられた今年という節目に、この大きな決断を下した。原口選手は、阪神チームに対する愛着を持ちながらも、より多くの打席に立つことへの意欲を優先した。「4打席立ちたい」という強い願望があり、競争の中で力を試したいという純粋な野球選手としての欲求が背景にある。15日から他球団との交渉が解禁されるが、阪神も「宣言残留」を認めており、現時点での去就は未定となっている。受け入れ先があるかどうかは不透明なまま、悔いを残さないために新たな一歩を踏み出した。

FA権を行使する意向を表明し会見する原口(撮影・加藤哉)

俺はもっとやれる-。阪神原口文仁内野手(32)が国内FA権の行使を表明した。12日、甲子園を訪れ、率直な心境を吐露。阪神では代打の切り札として絶対的な存在になったが、出場機会を増やしたい野球人としての欲求を最優先した。大腸がんの完治を告げられた節目の年の、大きな決断となった。FA宣言選手は15日から他球団との交渉が解禁になる。

   ◇   ◇   ◇

FA権の行使を表明した原口の目は、明らかに充血していた。涙や寝不足は否定し「練習を続けているので、そのせいかな、と」と苦笑いしたが、複雑な心境の表れだった。「まだ感情としては、はっきりしたものはない。ちょっと自分でも表現するのが難しい」と丁寧に言葉をつむいだ。

高卒で15年を過ごした阪神への愛着は強い。ファンの人気も抜群。それでも「もっとゲームに出たい、スタメンから勝負したい気持ちが強かった。純粋に打席に数多く立って、貢献したい」と繰り返した。

この2年間はほぼ代打専任。今年は65打席にとどまった。一方、大山の代わりに4番や5番で5試合に先発出場。2本塁打はともにスタメンだった。起用法については「不純みたいな気持ちは全くなくて。与えられた仕事を本当に100%全うしようと常々やってきた」と不満はない。一方で「4打席立ちたい」気持ちと自信もあった。毎日、大山と同じように朝から地道に準備して、どんな出番にも対応できるよう、毎日全力で過ごしてきた。

「レギュラーで出られるチャンスというか、競争できることが一番。野球人としてまだまだやれるんじゃないかという可能性を、自分の中で消せなかった。挑戦できる場所があるのならば、若い子に交じってでも勝負したい」。競争という“原点”に身を置いて、実力勝負をしてみたい。その欲求が勝っていた。

19年1月に大腸がんの手術を受け、丸5年がたった今年1月に完治を告げられた。人生においても節目の年だった。ただ、病気とFA宣言の関連は完全否定した。「球団の数多くのサポートには本当に感謝しています」と頭を下げたが、今回はあくまで野球人としての選択だった。

15日から他球団との交渉が可能になる。現状、どの球団が獲得に名乗りを上げるかは不透明で、その覚悟もできている。阪神は「宣言残留」を認めているため、出戻りの可能性もある。球団からは変わらず、強く慰留されている。先行きは何も分からないが、悔いだけは残さぬよう、第1歩を踏み出した。【柏原誠】

◆原口文仁(はらぐち・ふみひと)1992年(平4)3月3日生まれ、埼玉県出身。帝京から09年ドラフト6位で阪神入り。13年に育成契約となり、16年4月に支配下復帰。同年はオールスターにも選ばれ、107試合に出場し11本塁打という活躍を見せた。19年には2度目の球宴出場。18年の代打での23安打は、08年桧山と並び球団最多。182センチ、95キロ。右投げ右打ち。

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