<東京6大学野球:早大4-0明大>◇優勝決定戦◇12日◇神宮
楽天ドラフト1位の宗山塁内野手(4年=広陵)の大学野球が終わった。初球から積極的に振りにいったが「序盤、初球のカーブや緩いボールで簡単にカウントを取られた」と、打ちあぐね3打数無安打。「実力不足と認めるしかない」と脱帽した。
試合後、両チーム応援団によるエール交換では、じっと早大応援団を見つめ4年間の日々を巡らせた。「これまで、自分が明治で過ごしてきた日々、生活を思い返していた。とくにこの1年間はいろいろ考えながら過ごした濃い1年間だった」。主将としてチームのことを最優先に考えた日々を思い浮かべた。
「チーム宗山」の1年が終わった。今年2月下旬、練習試合で右肩甲骨を骨折。真っ先に田中武宏監督(63)に「ベンチにずっと入りたいです。遠征も行きたいです」と直訴した。春季リーグ開幕戦には出場したが、その後に右手中指第1関節を骨折し、5月11日から欠場。宗山は、主将としてプレーで貢献できなくとも、ベンチでできることがあると、気持ちを切り替えチームメートを鼓舞し続けた。必至にボールを追いかけるチームメートの姿を目に焼き付け、大事な仲間の存在を知った。田中監督は「ムネ(宗山)の声がかれていた。試合に出ていたら、そんなに声は出さない。それだけ一生懸命だったということでしょう」と、立場が変わっても野球と真摯(しんし)に向き合う姿に胸打たれた。
10日の夜、優勝決定戦が決まると、田中監督は宗山、副主将と3人で寮近くのホルモン屋へ足を運んだ。「早大戦はこうしよう、ああしようって言いながら、ご飯を食べました」。仲間ともう1試合、野球ができる。宗山にとって、それが何よりうれしかった。
この試合、劣勢の中でもベンチの最前列で声を出し続けた。「自分のことだけではなく、チームのことを考えながらやったこの日々はこれからにつながってくると思います」。『チーム宗山』として優勝はつかめなかったが、大切な仲間の存在は、かけがえのない財産になった。
この悔しさは忘れない。「これからの自分の野球の糧にしていくしかない。コンスタントに結果を残し続け、息の長い選手を目指していきたい」。次はプロ野球のステージで。これからも宗山は輝き続ける。【保坂淑子】