<ワールドシリーズ:ヤンキース11-4ドジャース>◇第4戦◇29日(日本時間30日)◇ヤンキースタジアム
本拠地の重苦しい空気を、ヤンキースのアンソニー・ボルピ遊撃手(23)がひと振りで変えた。
1-2と1点ビハインドで迎えた3回2死満塁。乾いた音を残した打球は、ライナーのまま、左翼席へ飛び込んだ。「フェンスを越えたのを見た時、真っ暗になったよ。ただ、相手に重圧をかけ続けたかったんだ」。PS初のアーチが逆転のグランドスラム。大歓声の中、ベンチ前で出迎えたジャッジと強烈なジャンプタッチを交わした。
19年ドラフト1位でジーターの後継者と呼ばれるスター候補が、ようやく大舞台で主役を演じた。地元マンハッタン生まれで、根っからのヤ軍ファンとして育った。前回世界一となった09年当時、8歳だったボルピ少年は優勝パレードでジーター、松井らに歓声を送った。その15年後、今シリーズ3連敗中だったヤンキースを救った。それでも、「クレイジーな気分だけど、夢はWS制覇」と冷静な姿勢は変わっていない。6回には、20年ドラフト1位オースティン・ウェルズ捕手(25)が、右翼2階席へ貴重な追加点となるソロ。若き「ドラ1」コンビの活躍で窮地を脱し、辛くも踏みとどまった。
依然、1勝3敗と絶対的不利は変わらない。もっとも、8回には一挙5点を追加するなど、打線全体は上向き。極度の不振続きだったジャッジが4戦目で初適時打を放つなど、ようやく快音も響いた。「流れはこちらへ来た。ただ、気持ちの持ち方は同じだよ」。前夜まで神妙だった主将は、ニヤリと笑った。【四竈衛】