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佐々木麟太郎のスタンフォード大で話題の米国進学、サッカーでも増加傾向に その若者たちの実像


今夏の渡米に向けて練習を積むHBO品川の吉田、藤田、渡辺の3選手(左から順)

Boys be ambitious!

「北海道開拓の父」クラーク博士の言葉のように、大志を抱いて海を渡る若者は多い。

少し前の話題になるが、プロ野球を選択せず、岩手・花巻東高からアメリカの超名門スタンフォード大学に進学した佐々木麟太郎選手は、世間でも驚きのニュースとして取り上げられた。それは選手としての知名度の高さに加え、学業面でも世界に名だたる超難関大学だったからに他ならない。

■HBO品川が海外進出を支援

ただ野球選手がアメリカという場所を目指すことはしごく当然だろう。それこそベースボールの本場なのだから。だがサッカーでも高校卒業後にアメリカを目指す傾向が強まっているという。

東京都社会人サッカー2部リーグ所属の「HBO品川」で代表を務める泉規靖さんが言う。

「野球の佐々木選手じゃないですが、サッカーもアメリカの大学への進学が増えています。入学が9月だから渡航前にHBOでトレーニングや試合に出たいという、高校卒業したての選手が結構やってきます」

その言葉に誘われ、HBO品川が都内で行うトレーニングにお邪魔した。

このクラブは「サッカーを通じて海外に挑戦する」という理念を持つ。チームとして挑戦するのでなく、野心を持って海外に飛び出そうとする若者個人を支援する。当然、リーグ戦の途中に主力選手が次々と抜けていってしまうが、そんなことはお構いなし。他のクラブにはない独自路線を突っ走っている。

これまで欧州、アジア、オセアニアなどの海外へと渡航したOBたちが現地でネットワークを作り、さまざまな情報を持って新たな選手を迎え入れるという仕組みが出来上がった。しかもクラブの利益を追求したものでなく、蓄積したノウハウを志ある若者たちに提供するばかり。留学代行会社とも連携しながら応援する。大きな収入源はなく、月1万円ほどの格安な会費で運営している。

大志を抱いてHBO品川にやってくる選手の共通点とは何か。泉代表に問うと、こう回答した。

「サッカーだけでなく、人としての成長を求めています。そしてサッカー以外の学びを得ることによってセカンドキャリアへを考えている、ということだと思います。それは異国での文化、歴史、環境、語学というところでしょう」

この日、アメリカ行きを目的に入団している3選手から話を聞くことができた。なぜ若者たちはアメリカを目指すのか? 各選手のバックボーンも踏まえ、彼らの実像を紹介したい。

■学生アスリート環境面は充実

★藤田樹(ふじた・みき)

2003年(平15)2月6日、徳島市生まれの21歳。中学、高校(徳島市立)とJ2徳島ヴォルティスのアカデミーでプレー。ポジションはボランチ、アンカー。毎年のように全国大会に出場しており、最高成績は16強。

3年前にアメリカの大学で学生アスリートとしてのキャリアをスタートさせ、昨夏からNCAA(全米大学体育協会)ディビジョン1(1部)に加盟するガードナーウェブ大学(ノースカロライナ州)に加入。半年間在籍した後に一度帰国しており、今夏からはまた別の大学に編入することになっている。

「アメリカって学生アスリートへの待遇もいいし、環境面も整っている。大学で単位を取りながらサッカーをしたいと思った。NCAA1部となると、プロみたいな感じ。試合の前泊もあるし、試合前の軽食含めて色々と準備されます。毎日の練習からGPSデータを装着していますし、競技に集中できる環境です。選手もフィジカルが強く個々の能力が高い。ただ日本人の狭いスペースを突ける俊敏性は求められています」

なぜアメリカに?

「小6の春休みに家族旅行でニューヨークに行きました。街の様子とか、違う文化、異世界を体験してアメリカ好きになりました。ユース時代の先輩でアメリカに行っていた人がいたので、自分も普通とは違う経験がしたいと高3の8月に決断しました」

試験は? どういう勉強を?

「Duolingo English Test(デュオリンゴ英語試験=アメリカの大学が採用する英語試験)というのがあって、そこで一定の点数を取れば英語はクリアになります」

アメリカの大学は学費が高いことで知られる。年間平均は州立大が約350万円、私立では約600万円となっている。一般家庭で手が届く金額ではないが、どうやってやりくりするのか?

「返さなくていい奨学金をもらっています。サッカー部なのでアスレチック奨学金(スポーツ選手対象)があるのと、学業面でもGPA(Grade Point Average=学業成績表)が4段階あって、そこで3・5以上なら結構もらえます。この2つがメイン。ただ生活費も必要なので日本の奨学金も借りて、そこは自分が返します」

アメリカの大学は勉強との両立が厳しいと聞きますが?

「ビジネスを専攻していますが、授業と試験をパスしないと、サッカーに来なくていいから勉強するように、と言われます。サッカーと勉強にフォーカスするような環境です」

将来の夢は?

「あと1年、もしくは1年半大学に通って学位を取り、プロサッカー選手になりたい。具体的には決めていないが、オーストラリアなど別の国に行くことも考えています」

■メッシら一流選手とプレーしたい

★吉田凱(よしだ・かい)

2005年(平17)6月26日、東京都江東区生まれの18歳。高校からスポーツが盛んな高知の明徳義塾へ進学。1年生からレギュラーとして活躍し、3年生で主将、10番を背負うFWとして全国高校選手権に出場。1回戦で静岡学園と対戦し、0-6と完敗…。「やれないことはなかったが、相手が一枚上でした」。

なぜアメリカを?

「小さい頃から海外でプレーしたいと憧れがありました。中2くらいから、サッカーには限界があるなと感じつつもあきらめられない。サッカーだけじゃない、セカンドキャリアを考えた時に、英語という語学があれば、サッカーが無理ってなった時に英語を活かしたら就職に強いと思いました。英語を学びながら大学のトップリーグでプレーしたいと考えるようになりました。両親も、自分が頑張るなら、と後押ししてくれました。両親は僕がやりたいと思うことを第一に優先して考えてくれ、ずっと応援してくれます。感謝しています」

今夏からハワイ島にあるハワイ大学ヒロ校への入学が既に決まっている。どういう経緯で?

「(海外進学の)エージェントがあって、サッカーのトライアウトに参加したら、そこに来日していた大学がハワイ大学だった。たまたま直接声を掛けてもらって、そのまま入学することになりました。それと同時に、英語の点数を取る試験がありました。授業料については大学が欲しいと言ってくれたので、奨学金で免除されます。今はちょうど手続きとかやっています。経営学を学びますが、2年たったら本土の大学に編入したいと考えています」

同じ年齢のプロ野球の佐々木麟太郎選手もアメリカに渡りますが、どう思いますか?

「セカンドキャリアを考えた時に語学は必要になんだな、という考えがあると思う。自分としてもいい選択をしたと思っています」

アメリカのカルチャーは好きですか?

「もともと洋楽が好きで、最近は洋画もよく見るようにしています」

将来の夢は?

「アメリカでプロサッカー選手になりたい。MLS(メジャーリーグサッカー)も盛り上がっていてメッシもいるし、有名な選手も(欧州から)来ている。そこで一緒にプレーできたらと夢みています」

■いろんな国から集まるのも魅力

★渡辺翔星(わたなべ・しょうせい)

2005年(平17)9月28日、東京都国分寺市生まれの18歳。中学時代はFC府中でプレーし、高校から山梨・日大明誠へ。180人ほども部員がいる中、1年生からレギュラーに定着。左サイドバック、トップ下として活躍。全国経験はないが、インターハイ予選で県3位。

なぜアメリカへ?

「海外に興味がありました。海外で一度は生活してみたいと。アメリカなら語学を学べるし、いろんな国から選手が集まるのも魅力だし、そこでどれだけ自分を表現できるのか」

高校の監督から、同校の先輩がミズーリバレー大学(ミズーリ州)にいることを教えられ、自身の気持ちも固まった。両親も賛成してくれたという。そしてエージェントを通じて、同じ学校に進むことが決まった。

「エージェントにお任せしました。入試みたいなものはなく、英語の点数を取るとか、大学のサッカー部の監督さんとビデオ通話で1回面談をしました」

奨学金を活用するが、全額カバーではないという。両親の支援を受けながら、これから自分の力で道を切り拓いていくことになる。

「自分のプレーでどれだけ評価してもらえるか。学業ではビジネスを専攻します。しっかり勉強して、いろんな資格を取りたいと考えています」

プレーには自信がある?

「それなりに自信はありますし、挑戦できるレベルにあると思います。行くのが楽しみです。第一印象が大事なので、ここ(HBO品川)でコンディションを上げたい」

アメリカを目指す高校生は増えている?

「増えていると思います。同じ高校でもう1人、塾にも何人か目指している人がいます。今は英会話学校に週2回通っていて同じ夢を持つ目指す人たちと、お互いに刺激を受けながら頑張っています」

将来の夢は?

「サッカーをやっている限りはプロサッカー選手を目指して頑張りたいと思います。自分の中で何かやりきったと思えることがあればアメリカでの学業や生活で得たものを活かしたセカンドキャリアを、と考えています」

3選手とも7月末までHBO品川でプレーし、8月に渡米。9月から新生活が始まることになる。

■大学スポーツ人気で放映料は破格

近年のニーズに伴い、アメリカ留学をサポートする会社は増えている。そういった会社がトライアウトを主催し、毎年のように米国の大学関係者がこぞって来日。先に紹介した吉田選手もまた、この冬のトライアウトで進路が決めている。

大学事情に詳しい関係者によると、スポーツ文化が各地域に根付いているアメリカでは「カレッジスポーツ」の人気が高く、放映権料はケタ違いになるのだという。NCAAのバスケットボール、アメリカンフットボールなどが代表的だろう。

それらスポーツイベントが地域の祭りの役割を果たし、多くのステークホルダーが密接に絡み合い大金が動いていく。アメリカ全体なら年間総額で数億ドルと言われている。

当然、大学は知名度を売るために好選手を求める。そこは学生であってプロでないため給料を支払う必要がない。一方の学生側からすれば、整った環境で競技に打ち込める上、さらにはセカンドキャリアにつながる学びが得られる。双方のギブ・アンド・テークががっちりかみ合っている。

「サッカー選手が終わった後、アメリカに行った経験があれば大きい。学位を取ればいろんな道も作れると思いました」

既に現地の大学で2年ほど過ごしている藤田選手の言葉こそ、アメリカを目指す若者たちのアンサーだろう。

スポーツの世界でプロとなり成功するには才能や技術はもちろん、運にも左右される。むしろプロで成功とは金の鉱脈探しの趣さえある。それでも19世紀のゴールドラッシュさながらに21世紀のアメリカへと冒険の旅に出る。

Soccerboys be ambitious!

「現代の開拓者たち」はおのおののアメリカン・ドリームに向かって突き進む。【佐藤隆志】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サカバカ日誌」)

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