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失せない甲子園への思い=決断迫られたセンバツ中止―八田英二氏に聞く・高校野球(上)


 昨秋まで日本高校野球連盟第7代会長を務めた八田英二氏は在任中、新型コロナウイルス感染拡大を受けて2020年春夏の甲子園大会中止を決断。タイブレーク制や投球数制限の導入など球児の健康問題にも向き合った。激動の3期6年間や高校野球への思いについて聞いた。  ◇ ◇ ◇  インタビューの冒頭、八田氏は「今春(選抜大会)はどうですか?」と切り出した。今も甲子園への思いは失せていない。続いて「在職中、最も厳しい決断」だった20年3月11日、選抜大会中止発表の舞台裏を語った。  新型コロナの脅威が広がる中、高野連は開催の可能性を模索した。一方で全国高校体育連盟の加盟団体は軒並み全国大会実施を断念。一部から「高校野球は特別なのか」という声が噴出した。  甲子園大会は他の高校スポーツとは一線を画す一大イベントだ。主催者や周辺関係者の存在が大きく、「各方面からの圧力が強かった」。3月10日深夜まで続いた会議では中止が与える影響の大きさを訴える意見と、やるべきではないとする主張が激突。当時は感染予防のノウハウがなく、出場する球児の健康を担保できなかった。最後は会長一任で中止を決めた。  八田氏は「球児の泣き顔を報道で見てつらかった」としながらも、「ワクチンもない時にやるのは無謀。決断は正しかった」と言い切る。3月下旬に東京五輪が1年延期されたこともあり、夏の全国選手権は5月半ばにはすんなり中止の方針が固まった。  「うれしかった」と語るのは、選抜に出場できなかった32校を夏の甲子園に招いて行った交流試合だ。5月下旬に改定された政府の基本的対処方針に沿った安全な形での開催を発案。反対意見もあったが、「涙をのんだ球児に甲子園の土を踏ませたい。私が責任を取る」と押し切り、各校1試合限定で実現に至った。  コロナ禍3年目。知見の蓄積やワクチン普及などで状況は変わった。八田氏は「今なら大会はできる。高校野球は日本の文化。携われて幸せだった」。困難なかじ取りをしみじみと振り返った。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える日本高校野球連盟前会長の八田英二氏=2月17日、京都市上京区
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