攻めのレースで重圧克服＝鈴木、「最速」の底力―東京マラソン

　「日本最速」の称号が付くことで感じていた重荷や重圧を、自らの力ではねのけた。日本人トップの４位でゴールし、世界選手権代表の座を手繰り寄せた鈴木。「１年間とても苦しかったけど、それをきょう乗り越えたかなと思う」。声を詰まらせながら語った。 　昨年２月のびわ湖毎日で出した２時間４分５６秒の日本記録を更新するペースで進んだ。ペースメーカーに、もっと速く走るよう促す場面も。中間点辺りから世界選手権代表を争う日本勢を振り落とすと、３０キロすぎからの単独走でもライバルとの差をさらに広げた。 　大会前に脚を痛め、万全な仕上がりに程遠い状態。その中でも「早い段階で勝負を決めたかった」と、攻めの走りに徹した。終盤に失速して日本記録の更新こそならなかったものの、鈴木の集中力を高く評価する富士通の福嶋監督でさえも「５分台が出るとは思っていなかった」と驚かせた気迫のレースだった。 　自ら「目立つのが得意でない（タイプ）」と言う。日本記録保持者となって注目され続けたこの１年は「精神的にきつかった」だけに、追われる立場で出せた結果の喜びはひとしおの様子。「自分のレースをしながら、世界との差を少しずつ縮めていきたい」。すっかりマラソン界の主役となった２６歳の視線は、世界での戦いに向いている。（了） 【時事通信社】 〔写真説明〕日本勢トップの４位でゴールする鈴木健吾＝６日、東京都千代田区（代表撮影）