今季からBプレミア・信州ブレイブウォリアーズのヘッドコーチ(HC)に就任したジャッド・フラベル氏。現役時代ではニュージーランド男子代表「トールブラックス」でのプレーし、引退後はコーチとして、同国男子代表チームやオーストラリアのクラブで指揮を執った経験を持つ。信州ブレイブウォリアーズのHCに就任した背景や描くチーム像はどんなものなのか。フラベルHCに聞いた。
「既存の殻を破った発想が必要」
ーー指導者としてのバスケットボール哲学は
自分の哲学は、長年かけて培ってきたものです。数々の成功体験や、たくさんの経験から学んだことはもちろん、他の成功しているコーチや選手たちからも多くを吸収しながら、この哲学を作り上げてきました。それはバスケットボールに限った話ではありません。例えば、世界で最も強いラグビーチームとして知られる「オールブラックス」のように、他競技からも多くのことを学んできました。
そうした成功しているチームに共通しているのは、選手一人一人が自分たちの強みを理解し、チーム内での役割を明確に把握していることです。バスケットボールコーチとしての私の仕事は、その役割や強みをできる限り鮮明に、クリアに伝えていくこと。それこそが自分自身の役割でもあると思っています。
私自身、比較的小さな国であるニュージーランドの出身です。だからこそ、他のみんなと同じことをやるのではなく、少し違った、ユニークなことを恐れずに取り入れてきました。これは信州においても同じで、自分たちだけの独自のものを作り出していく、既存の殻を破った発想が必要だと考えています。どんなチームにもそれぞれの個性を持っていますが、チャレンジすることを全く恐れてはいません。
またコートの上では、選手たちは野球で言う「ホームラン」を打つ必要はなく、「シングル」と呼んでいるシンプルなプレーでどんどんつないでいくことを大切にしています。その集合体が良いチーム作りだと思っています。
ーー9歳でバスケットボールを始めたきっかけは。また、バスケットボールの魅力とは
子供の頃、私は体がとても小さく、ニュージーランドで一番人気のスポーツであるラグビーには向いていませんでした。大きな選手たちの中でトライを狙っても、なかなか自分には合わなかったんです。そんな中で出会ったのがバスケットボールでした。自分のような小さな体格でも、父や、他の選手をやっつけることができます。そして一人でもリングさえあればプレーを楽しめるし、1on1もできるし、友達を誘えば5on5も3on3もできる。いろんなことができるというのも含めて、「自分のスポーツはこれだな」と思いました。

ーー青野和人ゼネラルマネジャーのビジョンに触れ、HC就任を決断するまでの経緯は
青野さんからアプローチをいただき、お話を伺う中で、彼が持つビジョンの深さと哲学に強く惹かれました。どんなチームも新しいものを作り上げていこうとするものですが、彼の考え方の深さ、そしてどれだけ先まで見据えているかという視野の広さに感銘を受け、「ぜひ一緒にやってみたい」という気持ちにさせられました。青野さんと話したことが、来日を決めた一番の理由です。
ーー来日前の日本のバスケットボールやBリーグについての知識はどの程度あったか
何年も前から、ニュージーランドやオーストラリアから多くの人が日本に来ていたこともあり、長年にわたって日本のことについて多くのことを学んできました。ポール・ヘナレ(茨城ロボッツHC)は親友であり、代表チームで共にプレーし、コーチとしても代表チームやニュージーランド・ブレイカーズで一緒に仕事をしてきました。でも、ポールだけではありません。現在アルティーリ千葉にいるアンドレ・レマニスや、NBLでの経験を持つオーストラリア人コーチのショーン・デニス(東京サンロッカーズHC)もそうです。秋田ノーザンハピネッツのミック・ダウナーもいますし、ジーコ・コロネル(宇都宮ブレックス前HC)、ディーン・ヴィッカーマン(長崎ヴェルカHC)。そしてモーディ・マオール(長崎前HC)もいました。彼ら全員と、これまでのキャリアのどこかで、非常に密接に仕事をしたり、何らかの形で関わりを持ったりしてきました。
そして誰もが、日本や、発展途上にあった当時のリーグについて、とても好意的に話していました。人々のフレンドリーさ、環境、そして国そのものについてもです。私も日本が大好きですし、実際に日本に来て本当に素晴らしい場所だと思っています。
ーー新天地・信州での挑戦への意気込みと、これから築いていきたいカルチャーは
今年は、リブランディングや「Bプレミアリーグ」への移行など、多くの変化がある重要な1年目となります。新しい顔ぶれも増えました。まずはこの1年で、しっかりとした土台を築き上げたいと考えており、それには多大な努力が必要です。良い環境があればそこから良いものを積み上げていけるので、辛抱強く作り上げていきたいと思っています。
チーム内ではすでに、コートの内外を問わず、日々コミュニケーションを取り、全員の意識を一つにすることの重要性について話し合っています。私たちは、結束の固いチームでありたいと願っているからです。ですから、この1年目はそうした文化を醸成し、チームとして高い基準を確立したいと考えています。そして、その基準をコート上で体現し、成功を収めたいと思っています。

(芋川史貴)
