新しい資本主義の担い手であるベンチャー企業。政府からユニコーン100社創出が宣言されたこの状況下において、「現在の成長企業・ベンチャー企業の生き様」は、最大の関心事項と言える。ジャンルを問わず、一社のトップである「社長」は何を思い、どこにビジネスチャンスを見出しているのか。その経営戦略について、これまでの変遷を踏まえ、様々な角度からメスを入れる。
これまでの事業変遷について
——まずは株式会社Helpfeelの事業変遷についてお聞かせください。
洛西 弊社は、テクノロジーの発明により、人の可能性を拡張することをミッションとしています。現在は「ナレッジギャップの解消」を掲げてプロダクトの開発と運用に取り組んでいます。創業当初はNota, Inc.としてBtoCを中心に事業を展開していましたが、現在は社名をHelpfeelに変更し、BtoB分野にシフトしました。企業と顧客の間、企業の部署間などに存在するナレッジギャップを解消することを目指し、さまざまなソリューションを展開しています。
——Helpfeelが急成長している理由や背景にあるニーズについて教えてください。
洛西 企業における問い合わせ対応にかかるコスト削減が大きなニーズとなっています。IT企業やECサイトを運営する企業をはじめ、キャンペーン時に問い合わせが急増するなど、さまざまな企業でコールセンターの維持費用が課題となり、そのコストが年間で数億円に達することも珍しくありません。それだけのコストをかけても、営業時間外は電話対応ができなかったり、お電話くださったお客さまを数十分も待たせてしまったりと、対応に課題を抱える企業が増えています。
さらに、お客さまとの接点が短期化してきていることを背景に、LTV(ライフタイムバリュー)の向上を意識する経営者が増えてきています。そのため、短期間で顧客満足度を高め、初めて利用していただいたお客さまにリピートしてもらうことが重要になっています。こうした課題を抱える企業が増えている中で、Helpfeelが選ばれるようになっています。
——Helpfeelが提供するサービスについて詳しく教えてください。
洛西 もともとはBtoC向けのサービスを提供していましたが、今はBtoB向けのサービスをメインに展開しています。これまでに、画像や動画の瞬間キャプチャー/共有ツール「Gyazo(ギャゾー)」や、ドキュメント文化が育つナレッジベース「Helpfeel Cosense(ヘルプフィール コセンス)」を開発してきました。そして、さらなる成長ドライバーとして、FAQのAI検索システム「Helpfeel(ヘルプフィール)」を開発し、BtoBで提供しています。
——グローバル展開についてはどのように考えていますか?
洛西 「Gyazo」に関しては、世界で市場を開拓し累計ユーザー数は2,100万にのぼり、世界でもスクリーンショットのクラウド共有ツールの分野で高いシェアを誇っています。「Helpfeel」は検索型FAQのジャンルに属しますが、使われている検索技術は世界初のものです。現在は人的リソースなどの課題もあるために日本市場を優先していますが、将来的にはグローバル展開を考えています。
飛躍的な成長を遂げた秘訣
——株式会社Helpfeelが急速な発展を遂げた理由についてお話しいただけますか?
洛西 従来のウェブサイトのFAQは、CMS(コンテンツマネジメントシステム)で作られており、回答をエンジニアでなくても更新できることや、見栄えが整ったウェブサイトを作れることに価値がありましたが、一方でユーザーが調べたい情報を見つけられないという課題がありました。次に登場したのがチャットボットで、多くの企業が採用しましたが、これもユーザーが欲しい答えに辿り着けないケースが多くありました。
それに対して、Helpfeelは検索性に焦点を当て、ユーザー自身が問題を解決できることをもっとも重要視して開発されたサービスです。また、検索ワードのデータを分析し、より使いやすいFAQになるよう改善を繰り返すことが可能です。
——DXが目的というより、ユーザーの悩みを解決する手段としてHelpfeelが生まれ、結果的に検索ヒット率98%を達成したということですね。
洛西 はい。Helpfeelを導入することで電話の問い合わせが減り、実際のコストダウンが実現でき、また、サイト上でHelpfeelの検索から購入につながることがわかると、企業のROIの見方も変わってきます。
——生成AIの活用もHelpfeelの成長に大きく寄与していると思いますが、AIの使いどころは難しいとされています。御社が工夫されている点があれば教えてください。
洛西 AIは確かに使い方が難しく、誤った情報を出してしまうリスクが問題視されています。しかし、私たちは「企業としてここまでは言っていいが、ここからは言ってはいけない」といった情報を事前にチェックして制御できるAI製品を開発しています。これにより、企業が使いやすく、正確な情報を伝えることができるようにしています。
——Helpfeelを導入した企業の反響はいかがでしょうか?
洛西 実際、Helpfeelの導入後は、多くの課題を解決している企業が多いです。他社のサービスからリプレースでHelpfeelを導入する企業も多く、そのことからも従来のチャットボットやCRMが抱えていた問題点や市場の課題感を改めて実感しました。Helpfeelの利用継続率は99%以上で、解約率は1%未満です。導入から短期間で企業への問い合わせが目に見えて減少するケースが多く、さらにコンテンツのチューニングも弊社が伴走しておこなうため、導入企業の満足度は非常に高いです。
経営判断をする上で重要視している点
——Helpfeelの解約率が1%を切るという驚異的な数字を維持しつつ、さらに受注率や導入企業数を増やし、売上を伸ばすために、経営判断で重要視しているポイントは何でしょうか?
洛西 経営判断においては、SaaSの経営指標を常に注視しています。特にARR(年間経常収益)やMRR(月次経常収益)など、サブスクリプション型の収益を最大化することに重点を置いています。現状、サービスの解約率が非常に低いため、新規営業やマーケティングへの積極的な投資が可能です。これらの投資が最終的に売上にどのようにつながるかを見極めつつ、バランスを取りながら経営判断をおこなっています。
——多くの企業が解約率を抑える方法や導入後のフォローに力を入れていますが、Helpfeelはすでにその部分が出来上がっている点でかなり特徴的ですよね。
洛西 私たちのプロダクトとサービスは導入後のコンサルテーションや改善のメソドロジーがしっかりと構築されている点が他社にはないところだと自負しています。引き続き新規顧客の獲得に注力しており、展示会にも積極的に出展しています。その効果もあって認知度が高まっていることを実感しています。
事業拡大の未来構想
——事業拡大の未来構想についてお伺いしてもよろしいでしょうか?
洛西 未来構想として、私たちはあらゆるナレッジギャップの解消を目指しています。これまではFAQの分野に特化してHelpfeelを提供してきましたが、現在はヘルプデスク的な役割を超え、自己解決プラットフォームとしての展開を進めています。たとえば、商品の検索など、他の用途でも利用されています。
——具体的にどのような事例があるのでしょうか?
洛西 銀行の例では、銀行のウェブサイトに導入されたHelpfeelに「子供」と入力すると、子供の教育資金を貯めるための商品の案内が表示されます。このように、キーワードから「この商品で解決できます」といった具体的な商品を提案することが可能です。これにより、これまでコストセンターだと捉えられがちであったコールセンターやサポートセンターが利益を生む組織へと変っていきます。
ZUU onlineユーザーへ一言
——最後に、ZUU onlineユーザーに一言お願いできますでしょうか。
洛西 昨今、AI分野への関心が非常に高まっていますが、経営者の皆さんが気にしているのは、実際にAIを導入することで業績が向上するかどうかですよね。これからは、AIを使うことが当たり前の時代になり、AIを使っていかに成果を出すかが重要となってきます。Helpfeelは、まさに企業のP/Lに影響を与える、投資価値の高いプロダクトだと考えています。投資家目線で見ても、我々は注目されているAI銘柄の中でも成長中ですので、ぜひその観点からもご注目いただければと思います。
——本日はお話をお聞かせいただきありがとうございました。
- 氏名
- 洛西 一周
- 社名
- 株式会社Helpfeel
- 役職
- 代表取締役