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ナレッジマネジメントとは?誕生背景やSECI(セキ)モデルを解説


今日の企業経営において欠かせない取り組みのひとつとされている、「ナレッジマネジメント」。ナレッジマネジメントとは、企業や個人が蓄積してきた知識や経験を、知的資産として集約し、企業経営に活用することを意味する言葉です。

本稿では、そのナレッジマネジメントについて、概要や誕生の背景、実践に役立つフレームワークを解説します。さらに、記事の後半では、ナレッジマネジメントを効率よく行うために便利なITツールも紹介しているので、ナレッジマネジメントに興味のある方は、ぜひご参考ください。

ナレッジマネジメントとは何か

ナレッジマネジメントとは、企業や個人が蓄積してきた知識や経験、ノウハウといった知的資産を組織内で共有し活用することで、企業全体の生産性や市場における競争力、企業価値を高めていく経営手法のことです。

暗黙知と形式知

今日のナレッジマネジメントは、一橋大学名誉教授の経営学者、野中 郁次郎 氏によって提唱された「知識経営」が基礎となっています。ナレッジマネジメントを理解するうえで欠かせないのが、「暗黙知」と「形式知」という概念です。

暗黙知とは、個人がそれまでに蓄えてきた経験や知識のことで、具体的には、ベテランの職人がもつ技巧や、長年の経験によって身につけた鋭い勘などが挙げられます。これらの暗黙知は言語化されていないことが特徴で、そのために他者へ共有する難易度が高いという性質をもっています。

一方の形式知とは、言語化された知識のことを指しており、具体的には、仕事の手順がまとめられた業務マニュアルや、蓄積してきたデータなどが形式知に含まれます。形式知は、言語化された知識、つまり、言葉や図表で表現された知識であるため、他者に共有することが暗黙知に比べて容易とされています。

例えば、ベテランの職人がもつ技巧を、その人の仕事ぶりを見るだけで盗むことは、なかなか難易度が高い行為といえます。いわゆる、「先輩の背中を見て、仕事を覚える」という方法の知識伝達です。しかし、このベテラン職人がもつ技巧を、詳細に言語化したマニュアルがあるとしたら、どうでしょうか。完全に再現することは難しいかもしれませんが、そのマニュアルを読むことで、「背中を見て覚える」よりも効率よく、ベテラン職人の技巧を理解することができます。

このように、形式知は暗黙知に比べて知識伝達の難易度が低いことがうかがえます。

暗黙知を形式知に変えること

先述した通り、暗黙知は継承の難易度が高く、そのままにしておくと、そこに含まれるノウハウが誰にも伝えられず、属人化してブラックボックスとなる恐れがあります。これは、企業にとって大きな損失です。

ナレッジマネジメントは、このような事態を防ぐために、個人や組織が蓄えてきたナレッジを、組織経営に活かそうとする活動や取り組みを意味します。暗黙知を形式知に変換することで、それまで一部の人たちしか所有していなかったノウハウを組織全体で共有できる知的資産に変え、それを経営に活用することで組織全体の進化を図ります。

ナレッジマネジメントという考え方が生まれた背景

ナレッジマネジメントは、1990年代に、先述した通り、日本の経営学者である野中 郁次郎 氏らによって提唱されたものです。なぜ、ナレッジマネジメントという考え方が生まれたのでしょうか? その背景には、「Japan As a No.1」と言われた1980年代における、日本企業が成功した歴史があります。

当時、欧米人たちは、「なぜ日本企業は成功できているのか?」について、疑問を抱いていました。特に、日本企業はモノづくりの分野において優れた実績を生み出しており、そういった製造業を営む企業の秘訣はどこにあるのだろう?と、欧米人たちは謎に思っていたのです。

野中氏らは、その問いに対する説明という形で、「ナレッジマネジメント」という考え方を提唱しました。野中氏らは、成功要因について、ベテランの暗黙知を形式知として転換し、継承できる企業風土や文化を、日本の伝統企業がもっていたためであると考えました。

ベテランが蓄えてきた知識や経験、つまり暗黙知を自然に継承できる仕組みが、当時の日本企業の中にあり、それを組織経営に活用したことが、当時の日本企業の成功を支えた要因であると考えたのです。これらの分析をもとに経営理論として体系化されたものが、知識経営という考え方です。そして、その知識経営の理論を基礎にした経営手法の一種が、今日におけるナレッジマネジメントというわけなのです。

ナレッジマネジメントの現代における意義

日本の伝統的な経営が発端となって生まれたナレッジマネジメントですが、現代の企業経営においても、その考え方は経営上欠かせないものとして注目されています。その理由について、3つ解説します。

知識経済化の進行

1つ目は、知識経済化の進行です。従来から、企業の経営資源は「ヒト・モノ・金・情報」の4種類が基本とされていますが、近年は無形資産の重要性が比率として高まりつつあり、それに伴い「知識経済化」が進行しています。「新しい知識」「独自性に富んだアイデア」といったものが、市場競争における優位性を確保するために重要というわけです。

そして、これらの知的資産を形成するために、ナレッジマネジメントの考え方が注目されています。ヒトの中に眠る知識や経験といった暗黙知をいかにして形式知に変換し、新たな知的資産を生み出せるかどうかが、知識経済化が進む現代の市場を生き抜くために重要とされています。

働き方の変化

2つ目は、働き方の変化です。従来の日本では終身雇用制度が敷かれており、労働者は「ひとつの会社でずっと働く」というのが当たり前でした。だからこそ、日本企業は、組織の中にナレッジを蓄えることができ、自然とナレッジマネジメントが実践できていたという側面があります。

しかし近年、終身雇用制度は事実上廃止の状況にあり、労働者はよりよい職場環境を求めて、転職をしたりキャリアチェンジを行ったりすることが一般化しています。ヒトが流出すれば、そのヒトが所有していた知識や経験も同時に流出します。これまでは終身雇用の働き方が当たり前だったので、そういったナレッジの流出は起きませんでしたが、働き方が変化したことで、ヒトが所有しているナレッジを、組織の中に形式知として蓄積していくことが求められるようになったというわけです。それに伴い、ナレッジマネジメントの重要性が改めて注目されています。

ITの発達

3つ目は、ITの発達です。現代はデジタル革命の最中にあり、さまざまなITツールが市場に流通しています。ナレッジマネジメントを効率化するITツールも数多く登場しており、従来は実現が難しかったことも、いまなら実践できるケースが増えているのです。

例えば、情報共有についていえば、いまはスマートフォンを使って、いつでも・どこからでも情報にアクセスすることができます。以前は、電話や口頭による情報伝達が中心で、メールにおいても使う場所や使える人材が限られていましたが、いまはデジタル端末が発達しているので、誰もがITツールの恩恵を享受することができます。

このような情勢においては、リアルタイムに共有された情報を、いかに素早く経営的意思決定に反映させられるかが、市場競争を勝ち抜くために重要です。その文脈から、ITを活用した“より効率的なナレッジマネジメント”が現代の企業には求められています。

ナレッジマネジメントのフレームワーク「SECIモデル」

SECIモデル(セキモデル)とは、ナレッジマネジメントによって新たな知識を生み出すことをフレームワークとして体系化したもので、継続的な知識創造のプロセスを表します。

SECIモデルでは、これらの4つのプロセスを経ることで、暗黙知が形式知に変換され、組織における「知識創造」を実現できると提唱しています。また、それぞれの要素がスパイラルのように循環し続けることで、組織の知的資産を形成するとされています。

共同化共通体験を通じて、暗黙知の相互理解を図る暗黙知→暗黙知
表出化共通の暗黙知を言葉や図表などを用いて言語化し、形式知として共有する暗黙知→形式知
連結化形式知同士を組み合わせて、新たな形式知を創造する形式知→形式知
内面化連結化によって生まれた新たな形式知を共有し、各個人がその知識を体得する形式知→暗黙知

SECIモデルの企業実践事例(エーザイ)

SECIモデルをわかりやすく説明するために、企業の実践事例を紹介します。東京都文京区に本社を置く大手製薬会社、「エーザイ株式会社」の取り組みについて見てみましょう。

エーザイでは、ヘルスケアの主役を、患者の方とその家族、生活者であると認識し、「患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を考え そのベネフィット向上を第一義とし世界のヘルスケアの多様なニーズを充足する」ことを企業理念に掲げ、さまざまな企業活動を行なっています。そして、その企業理念を一言で表したものを、「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」と呼んでいます。

エーザイは、hhcの理念を実現するために、社員一人ひとりが患者の方に寄り添い、同じ目線で物事を考え、言葉にならない想いを感じ取ること、つまり「共同化」を行うことが重要と考えており、hhc活動においてSECIモデルを応用した仕組みを採用しています。

そして、SECIモデルをベースに、患者の方の憂慮を知り、解決を図るhhcプロセスを「憂慮のモデル」と呼び、活動の原点としています。

エーザイのhhc活動を、SECIモデルに当てはめてみると、このような事例となります。

共同化患者の方と共に過ごし、その中で担当者が感じた“患者の方が感じている憂慮”を会社に持ち帰り、共有する
表出化憂慮についてグループやチームで議論を行い、患者の方が漠然と感じていた憂慮を具体的なものとして抽出し、言語化する
連結化その憂慮を取り除くための戦略や作戦を考え、実行する
内面化実践の中で得た知見を暗黙知として体得し、今後の活動に活かす

患者の方が感じている憂慮、SECIモデルにおいては暗黙知とされるその感情や想いを、社員が共に過ごすことを通じて組織内に共同化し、その情報をもとに社内で議論を行うことで、言語化する(表出化)。そして、言語化された情報をベースに、憂慮を取り除くためにはどうすればいいのか?を戦略として考え、憂慮の除去に向けて行動を起こす。さらには、実践の中で得た知見を暗黙知としてそれぞれの社員が社内に持ち帰り、共同化のプロセスに回帰する。

エーザイでは、このSECIモデルをベースにした「憂慮のモデル」を実践することで、戦略的知識創造を促し、hhc理念の実現を図っています。

参照:私たちの活動の原点「共同化」|エーザイ株式会社

ナレッジマネジメントの主な手法4種

ナレッジマネジメントには4つの手法があるとされており、活用する目的と手段の組み合わせによって、それぞれ内容が異なります。

活用する目的においては、事業の価値を高めるための「増価」か、業務の効率化を図るための「改善」の2つがあり、活用する手段においては、分散している知識を「集約」して活用するか、既存の知識を組み合わせる「連携」によって活用するかの2つがあります。

それぞれを組み合わせて体系化したものが、これから説明する4種類の手法です。手法ごとに想定される効果が異なるため、企業の状況に合わせて適切に使い分けていく必要があるでしょう。

ベストプラクティス型(改善×集約)

組織の中で規範となる優秀な社員の行動や思考を形式知として社内に共有し、組織全体のレベルアップを図る手法です。例えば、優秀な営業パーソンの行動パターンや思考方法を言語化し、チーム内で共有することで、チーム全体の営業力を向上させる取り組みなどが挙げられます。

経営資本・戦略策定型(増価×集約)

組織内に分散している情報を集約して整理し、それをあらゆる角度から分析したのち、その分析結果を経営戦略に活用する手法です。自社が保有している顧客データや、競合企業の分析結果といったさまざまな情報を多角的な視点から捉え、分析することで、経営戦略の立案や検討に活かします。

専門知識共有型(改善×連携)

ネットワークを活用し、組織内外の専門知識をデータベース化する手法です。具体的には、FAQを作成する取り組みなどが挙げられ、組織内の問い合わせ業務の効率化や、全体の知識レベル向上といった効果が期待できます。

顧客知識共有型(増価×連携)

顧客対応の活動の中で得た知識をデータベース化し、組織内に共有することで、対応品質の向上や最適な対応方法の立案を実現するための手法です。特に、コールセンター業務のナレッジマネジメントに有効とされる手法であり、顧客から寄せられたさまざまなクレームや意見を蓄積し、データベースとして共有することで、オペレーター間の連携強化や対応の標準化に効果をもたらします。

ナレッジマネジメントは実践だけでなくスピードが重要

これまで、ナレッジマネジメントの概要や歴史、現代における意義や実践的フレームワークについて解説してきました。知識経済化が進行し、働き方の変化やIT技術の発展が著しい現代において、組織的知識創造を実現するナレッジマネジメントの実践は、苛烈な市場を勝ち抜くための企業経営において欠かせないものといえます。

しかし、ナレッジマネジメントは、ただ実践するだけで効果を得られるものではありません。実践に加えて、取り組み自体にスピード感をもつことが非常に重要です。その理由は、「経営戦略の策定から、現場で実践するまでのサイクルをいかに短くできるか」が、今後の企業間競争において重要とされているためです。

迅速な経営判断を実現するためには、ナレッジマネジメントによって組織に蓄積した知的資産を、いかに素早く「経営判断の材料」として経営層に共有できるかが鍵となります。そして、経営層はそれらをもとに戦略を策定し、現場はその戦略に基づいて日々の業務を遂行していくのです。

また、個々の現場においても、組織内に蓄積した知的資産を素早く引き出せる仕組みを作ることは重要です。いかに形式知を増やすことができたとしても、それを社員が引き出せないのでは役に立ちません。表出化のための議論もできませんし、もちろん連結化による新たな形式知の創造もできないでしょう。

現場の活動レベルを向上させるためには、知的資産をスピーディに引き出し活用できる体制や仕組みの構築が必要不可欠なのです。

このように、経営戦略を検討する場や企業活動の前線である現場において、ナレッジマネジメントは、ただ実践するだけでなくスピード感が重要です。サイクルの循環速度はもちろんのこと、いかに素早く知的資産を共有できるか・必要な人が引き出せるかが大切になります。

そして、このニーズを満たすために注目されているのが、ナレッジマネジメントに役立つITツールの活用です。次のセクションでは、ナレッジマネジメントの実践や効率化に有効なITツールを紹介します。

ナレッジマネジメントに役立つITツール

ナレッジマネジメントに役立つITツールは、大きく分けて3種類あります。それぞれの特徴や強みについて、解説します。

ナレッジマネジメントツール

ナレッジマネジメント専用に開発されたITツールです。知的情報をツール内に蓄積することができ、その蓄積された情報を検索できます。ナレッジマネジメントツールの強みは、専用システムとして設計されているため、効率よくナレッジマネジメントが行える点です。情報を細かくフォルダ分けできたり、各ファイル内の文字列を検索対象に含めることができたりと、ナレッジマネジメントを効率化するための機能を豊富に備えています。「本格的にナレッジマネジメントを行いたい」といった場合におすすめのITツールです。

ビジネスチャット・社内SNS

ビジネスチャット・社内SNSは、社内コミュニケーションを円滑に行うためのITツールです。もともとはコミュニケーションツールですが、日々のコミュニケーションにはさまざまな知的資産が眠っており、これらを掘り起こすことで、ナレッジマネジメントを効率よく行えるようになります。

具体的には、ビジネスチャット・社内SNSの多くが、メッセージの文字列ややり取りしたファイルを検索できる機能を備えており、公的には形式知化されていない(マニュアルになっていない)ような情報、つまりメッセージのやり取りでのみ完結してしまっているような暗黙知も、ツール内に蓄積されているため、必要なときに検索して引き出すことが可能です。

さらに、ビジネスチャット・社内SNSは、コミュニケーションの活性化や強化を目的に、「掲示板機能」を備えている場合があります。掲示板機能では、社内に向けてさまざまな情報を発信することができ、例えば、成功事例の共有などにも活用可能です。この機能を活用することで、部門間のナレッジ共有を効率的に行えるようになります。

チャットボット・FAQ(ai活用)

専門知識共有型のナレッジマネジメントに役立つITツールです。システム内で質問を投げかけることができ、社内の知識ある人から回答を得られる仕組みになっています。簡単な質問であれば、ボット(決まった処理を行うように自動化されたアプリケーションやプログラムのこと)から回答するように設定できるツールもあり、活用することで担当者の問い合わせ対応業務の負担を大幅に削減することができます。

さらに、ボットに回答のパターンを学習させて、ボットの回答可能範囲を拡大できる「ラーニング機能(ai学習)」がついているサービスがあることも、このITツールの特徴です。システムを使うほどボットの回答精度が高まる仕組みのため、ナレッジマネジメントの高度化を半自動的に推進することができます。

まとめ

暗黙知を形式知に変え、それをもとに別の形式知を生み出す。そこから新たに生まれた形式知を、知的資産として経営判断の材料に加え、優れた戦略を考えること。この一連の流れによって、「組織の知」は螺旋階段のように循環し止揚され、高められていきます。そして、この取り組み自体をナレッジマネジメントといいます。

知識経済化の進行や働き方改革の推進、ITの発達によって、ナレッジマネジメントの実践は今日の企業経営において欠かせないものになりつつあります。

「ナレッジマネジメントをやりたい」「すでに取り組んでいるが、より効率的な方法を模索している」という方は、ぜひ本稿を参考のうえ実践に取り組まれてみてください。

ビジネスチャット「WowTalk」でナレッジマネジメント

筆者所属のワウテック株式会社では、月額300円から使える法人向けチャットツールとしてビジネスチャット「WowTalk(ワウトーク)」を提供しています。WowTalkは、直感的に扱える操作性と、ビジネス利用に適した管理機能が特徴のチャットツールで、業界業種を問わず、幅広いお客様にご利用いただいており、2021年3月には累計導入数10,000社を突破しました。

チャットやグループトークといった基本機能の他に、「共有(掲示板)機能」も搭載しており、この機能を活用することで、社内に散らばる暗黙知を、テキストという形式知に変換して集約することが可能です。特に、他部門や他店舗の成功事例や取り組みを社内に共有したいときに役立ちます。

WowTalkに興味をお持ちいただけた方は、ぜひお問い合わせフォームよりご連絡ください。製品の概要や料金プラン、企業の活用事例など、さまざまな情報について、専門の担当スタッフがご説明申し上げます。また、無料ですぐにダウンロードいただける製品資料も、合わせてご利用ください(ダウンロードフォームはこちら)。

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