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50歳55歳60歳でのリタイアは可能?必要資金のシミュレーション結果を紹介


早期リタイアをして悠々自適な生活を送るには、資金がいくら必要になるのでしょうか。資金不足の状態で退職すると、途中で生活が破たんしてしまうため、リタイアの計画は慎重に立てることが重要です。

本記事では50歳・55歳・60歳の3パターンに分けて、完全リタイアやセミリタイアの必要資金をシミュレーションしました。資金が不足しているときの対策や、リタイアの注意点についても詳しく解説します。

50歳・55歳・60歳でリタイアするのに資金はいくら必要?

平均的な生活水準の単身世帯を想定すると、50歳で完全リタイアをするには約6,800万円、セミリタイアでは約5,300万円の資金が必要です。本記事では55歳や60歳、2人以上世帯のリタイアについてもシミュレーションを行いました。

単身世帯の必要資金2人以上世帯の必要資金
完全リタイア50歳:6,838万8,960円
55歳:5,833万1,760円
60歳:4,827万4,560円
50歳:1億1,995万776円
55歳:1億231万956円
60歳:8,467万1,136円
セミリタイア50歳:5,330万3,160円
55歳:4,827万4,560円
60歳:4,324万5,960円
50歳:9,309万1,046円
55歳:8,467万1,136円
60歳:7,585万1,226円

(※平均寿命を想定。セミリタイアについては、65歳まで生活費の半額を稼ぐ場合。)

セミリタイアを選ぶ場合でも、安定した生活を送るには4,000万円以上の資金が必要になります。なお、実際の生活費は地域や家族構成、ライフスタイルなどで変わるため、上記の金額はあくまで参考程度に留めてください。

50歳でリタイアするのに必要な資金を計算

50歳でリタイアするのに必要な資金は、単身世帯で約6,800万円、2人以上世帯で約1億2,000万円です。アルバイトなどで副収入を得るセミリタイアの場合は、単身世帯で約5,300万円、2人以上世帯で約9,300万円が必要資金となります。

本記事のシミュレーションは、総務省統計局による家計調査をもとに計算しています。以下のデータは、2023年分の生活費とその内訳をまとめたものです。

<単身世帯の生活費>

消費支出の内訳1ヵ月あたりの平均金額
食料4万2,049円
住居2万3,799円
光熱・水道1万3,045円
家具・家事用品5,760円
被服及び履物4,447円
保健医療7,367円
交通・通信2万1,654円
教育2円
教養娯楽1万8,794円
その他の消費支出3万704円
合計16万7,620円

(参考:e-Stat「家計調査 家計収支編 単身世帯用途分類 001 用途分類(総数) 全国 | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口」)

<2人以上世帯の生活費>

消費支出の内訳1ヵ月あたりの平均金額
食料8万1,738円
住居1万8,006円
光熱・水道2万3,855円
家具・家事用品1万2,190円
被服及び履物9,297円
保健医療1万4,645円
交通・通信4万2,693円
教育1万446円
教養娯楽2万8,630円
その他の消費支出5万2,498円
合計29万3,997円

(参考:e-Stat「家計調査 家計収支編 二人以上の世帯用途分類 001 用途分類(総数) | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口」)

<シミュレーションの前提条件>
平均寿命:男女平均の84歳として計算(※)
毎月の生活費:家計調査の平均金額
セミリタタイア時の収入:生活費の半額(65歳まで)
完全リタイア時の収入:なし
老齢基礎年金:考慮しない
(※)参考:厚生労働省「令和4年簡易生命表

ここからは単身世帯と2人以上世帯に分けて、50歳でのリタイアに必要な資金をシミュレーションします。

単身世帯のシミュレーション

平均寿命まで生きることを想定した場合、50歳でのリタイアに必要な資金は以下のように計算できます。

<完全リタイアをする場合>
生活する年数×1年分の生活費=完全リタイアの必要資金
(84歳-50歳)×(16万7,620円×12ヵ月)=6,838万8,960円

<セミリタイアをする場合>
収入を得る年数×1年間の収入=生活費の足しになる資金
(65歳-50歳)×(16万7,620円÷2×12ヵ月)=1,508万5,800円

完全リタイアの必要資金-生活費の足しになる資金=セミリタイアの必要資金
6,838万8,960円-1,508万5,800円=5,330万3,160円

2人以上世帯のシミュレーション

2人以上世帯についても、同じ流れでリタイアの必要資金を計算します。

<完全リタイアをする場合>
(84歳-50歳)×(29万3,997円×12ヵ月)=1億1,995万776円

<セミリタイアをする場合>
(65歳-50歳)×(29万3,997円÷2×12ヵ月)=2,645万9,730円
1億1,995万776円-2,645万9,730円=9,309万1,046円

55歳でリタイアするのに必要な資金を計算

完全リタイアの時期を55歳に遅らせると、単身世帯では約5,800万円、2人以上世帯では約1億200万円が必要資金になります。セミリタイアを想定した場合の必要資金は、単身世帯で約4,800万円、2人以上世帯では約8,500万円です。

以下では50歳でのリタイアと同じ流れで、単身世帯と2人以上世帯のシミュレーションを行います。

単身世帯のシミュレーション

55歳でリタイアをする場合は、将来の支出が減る代わりに、セミリタイアで収入を得られる年数が減ります。したがって、各パターンの必要資金は次のように計算できます。

<完全リタイアをする場合>
生活する年数×1年分の生活費=完全リタイアの必要資金
(84歳-55歳)×(16万7,620円×12ヵ月)=5,833万1,760円

<セミリタイアをする場合>
収入を得る年数×1年間の収入=生活費の足しになる資金
(65歳-55歳)×(16万7,620円÷2×12ヵ月)=1,005万7,200円

完全リタイアの必要資金-生活費の足しになる資金=セミリタイアの必要資金
5,833万1,760円-1,005万7,200円=4,827万4,560円

2人以上世帯のシミュレーション

次に、2人以上世帯のシミュレーション結果を見てみましょう。

<完全リタイアをする場合>
(84歳-55歳)×(29万3,997円×12ヵ月)=1億231万956円

<セミリタイアをする場合>
(65歳-55歳)×(29万3,997円÷2×12ヵ月)=1,763万9,820円
1億231万956円-1,763万9,820円=8,467万1,136円

60歳でリタイアするのに必要な資金を計算

60歳で完全リタイアをする場合の必要資金は、単身世帯で約4,800万円、2人以上世帯で約8,500万円です。セミリタイアを想定した場合は、単身世帯で約4,300万円、2人以上世帯で約7,600万円が必要資金になります。

ここまでと同じ流れで、具体的なシミュレーションを見てみましょう。

単身世帯のシミュレーション

退職を60歳まで遅らせると、平均寿命までの支出はさらに減りますが、セミリタイアで得られる収入も限られます。実際のシミュレーション結果は以下の通りです。

<完全リタイアをする場合>
生活する年数×1年分の生活費=完全リタイアの必要資金
(84歳-60歳)×(16万7,620円×12ヵ月)=4,827万4,560円

<セミリタイアをする場合>
収入を得る年数×1年間の収入=生活費の足しになる資金
(65歳-60歳)×(16万7,620円÷2×12ヵ月)=502万8,600円

完全リタイアの必要資金-生活費の足しになる資金=セミリタイアの必要資金
4,827万4,560円-502万8,600円=4,324万5,960円

2人以上世帯のシミュレーション

次に、2人以上世帯のシミュレーション結果を紹介します。

<完全リタイアをする場合>
(84歳-60歳)×(29万3,997円×12ヵ月)=8,467万1,136円

<セミリタイアをする場合>
(65歳-60歳)×(29万3,997円÷2×12ヵ月)=881万9,910円
8,467万1,136円-881万9,910円=7,585万1,226円

50歳・55歳・60歳でのリタイアを現実的にする方法6つ

早期リタイアの資金が不足している場合は、どのような対策が考えられるでしょうか。ここからは、50歳・55歳・60歳でのリタイアを現実的にする方法を紹介します。

1.セミリタイアで資金の不足分を賄う

完全リタイアが難しい場合は、収入源を残すセミリタイアを考えてみましょう。セミリタイアにはアルバイトやフリーランスなどの選択肢があり、働き方次第では資金の不足分を賄えます。

たとえば、生活費の半額を65歳まで稼ぐ場合、単身世帯が50歳でリタイアする必要資金は1,500万円ほど減ります(※)。それでも資金が不足している場合は、正社員や契約社員として働く方法もあるでしょう。

(※)前述のシミュレーションから、完全リタイアでは約6,800万円、セミリタイアでは約5,300万円の資金が必要。

現在の資産額や生活水準、年齢などから、どれくらいの収入源が必要になるかを考えてみてください。

2.退職金をもらえる会社に転職する

退職金をもらえる会社への転職も、リタイアを現実的にする方法です。厚生労働省の調査によると、2022年における退職金の平均給付額は以下の通りです。

学歴大学・大学院卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(現業職)
自己都合1,441万円1,280万円921万円
早期優遇2,266万円2,432万円2,146万円

(参考:厚生労働省:「令和5年就労条件総合調査概況」、勤続20 年以上かつ45歳以上の退職者が対象。)

まとまった退職金があれば、完全リタイアでも安定した生活を送れるかもしれません。ただし、退職金は勤続年数に左右されることが多いため、転職先の制度は事前に確認したり、早めに転職をしたりなどの対策を考えましょう。

3.年金資産を積みたてる

収入源を確保しづらい老後に備えて、年金資産を積みたてる方法も一つの選択肢です。公的な年金制度に加えて、確定拠出年金や個人年金保険などを活用すると、効率的に年金資産を形成できる可能性があります。

<確定拠出年金とは>
毎月拠出した掛金を使って、投資信託や定期預金などの金融商品を運用する制度です。個人で掛金を負担するものは「iDeCo(イデコ)」、勤務先が拠出するものは「企業型DC」と呼ばれます。

運用している資産は原則60歳まで受け取れませんが、拠出時や給付時に所得控除が適用されるのに加えて、金融商品のリターンは全て非課税になります。

<個人年金保険とは>
契約時に決めた年齢に達すると、保険料や運用状況などに応じた年金を受け取れる私的保険です。確定年金や有期年金、終身年金などの種類があり、商品によって年金の受け取り方法や最低保証などの仕組みが異なります。

個人年金保険で支払った一部の保険料には、所得控除の一つである生命保険料控除が適用されます。

4.将来受け取れる年金を計画に入れる

厚生年金保険や国民年金保険に加入している場合は、将来受け取れる年金も活用できます。厚生労働省年金局の資料(※)によると、厚生年金の平均受給額は月14万4,982円、国民年金では月5万6,428円が平均です(2022年度末のデータ)。

(※)参考:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況

老齢基礎年金の受け取りは65歳からですが、66歳~75歳まで受給を繰り下げると、期間の長さに応じて年金額が増額されます(年金の繰下げ受給)。老後資金が不足している場合は、繰下げ受給も視野に入れて計画を立てましょう。

5.長期の資産運用を計画する

金融商品に興味がある場合は、長期の資産運用も選択肢になるでしょう。資産運用にはさまざまな方法があり、代表的なものとしては株式投資や投資信託、債券などが挙げられます。

たとえば、東証のプライム市場に上場されている株式に投資をすると、どれくらいのリターンを期待できるのでしょうか。日本取引所グループの資料「株式平均利回り(2024年1月)」によると、2024年1月時点での単純平均利回りは2.06%(※)です。仮に1,000万円を10年運用した場合は、約220万円のリターンが生じる計算になります。

(※)参考:日本取引所グループ「その他統計資料

ただし、金融商品は値下がりをする可能性があるため、相場状況によっては資産を失うかもしれません。各商品のリスクをきちんと理解した上で、資産状況や目的に合った投資先を選ぶことが重要です。

6.生活費を下げる

将来の資金が不足している場合は、生活費を下げることも対策になります。

50歳でリタイアをして平均寿命まで生きる場合、月々の生活費を1万円節約すると、必要資金は408万円(12万円×34年間)減ります。さらに節約をすれば、必要資金を1,000万円以上減らせるかもしれません。

前述のシミュレーション結果と資産状況を比較しながら、目標となる節約金額を設定してみましょう。

50歳・55歳・60歳でリタイアするときの注意点

完全リタイアをしてから資金が不足すると、日々の生活は破たんしてしまいます。計画を進めてから失敗しないように、50歳・55歳・60歳でリタイアするときの注意点についても押さえておきましょう。

十分な資金がないと生活は安定しない

必要最低限の資金を用意するだけでは、リタイア後の生活は安定しません。想定外の支出にも対応するには、資金にある程度の余裕を持たせる必要があります。

たとえば、病気やけがで入院をする場合、身内の冠婚葬祭が続いた場合など、急な支出はさまざまなタイミングで発生します。どのような状況にも対応できるように、常に十分な資金を残せる計画を考えましょう。

再就職が難しい職業もある

リタイア後に資金が不足すると、多くの人は再就職を考えるでしょう。しかし、中には再就職が難しい職業や業界、企業などもあります。

同じ職場に戻れない場合は、労働条件が変わることを覚悟しなければなりません。就職先によっては、給与や福利厚生などの待遇面が下がったり、ストレスが溜まりやすかったりなど、さまざまな弊害が生じることもあります。

これから退職を考えている人は、今の会社を退職するリスクや、再就職のしやすさを慎重に判断してください。

ライフスタイルが変わると支出も変動する

リタイア後にライフスタイルが変わると、日々の支出も変動します。支出が減る分には問題ありませんが、生活費が増える場合は注意しなければなりません。

注意したいケースとしては、両親の介護が必要になる場合や、子どもが産まれる場合などが挙げられます。その他、引っ越しで月々の家賃が上がったり、マイホームや車を購入したりする場合にも生活費は変わります。

支出が変動すると、リタイアに必要な資金も変わってくるので、将来の生活をイメージしながら計画を立ててください。

資産1億円でリタイアした場合の年齢別の生活水準

平均寿命を想定した場合、資産1億円ではどのような生活を送れるでしょうか。以下の表は、リタイアをする年齢別の生活水準をまとめたものです。

リタイアの時期完全リタイアの生活水準セミリタイアの生活水準
50歳年294万1,176円
月24万5,098円
年338万4,876円
月28万2,073円
55歳年344万8,275円
月28万7,356円
年379万5,075円
月31万6,256円
60歳年416万6,666円
月34万7,222円
年437万6,191円
月36万4,682円

セミリタイアについては、生活費(単身世帯)の半額を65歳まで稼ぐことを想定しています。

※小数点以下は切り捨ててシミュレーションをしています。

50歳の場合

50歳から平均寿命まで生きる場合、実際に生活するのは34年間(84歳-50歳)です。したがって、使える生活費は以下のように計算できます。

<完全リタイアの場合>
保有資産額÷生活する年数=1年間に使える生活費
1億円÷34年=294万1,176円

<セミリタイアの場合>
収入を得る年数×1年間の収入=保有資産額の足しになる資金
(65歳-50歳)×(16万7,620円÷2×12ヵ月)=1,508万5,800円

保有資産額÷生活する年数=1年間に使える生活費
(1億円+1,508万5,800円)÷34年=338万4,876円

生活費を月額に換算すると、完全リタイアでは月24万5,098円、セミリタイアでは月28万2,073円になります。

55歳の場合

55歳でリタイアをする場合は、29年分の生活費を保有資産で賄うことになります。以下では、50歳と同じ流れでシミュレーションを行います。

<完全リタイアの場合>
1億円÷29年=344万8,275円(1年間に使える生活費)

<セミリタイアの場合>
(65歳-55歳)×(16万7,620円÷2×12ヵ月)=1,005万7,200円(足しになる資産)
(1億円+1,005万7,200円)÷29年=379万5,075円(1年間に使える生活費)

月額に換算すると、完全リタイアでは月28万7,356円、セミリタイアでは月31万6,256円の生活費を使えます。

60歳の場合

次に、60歳でリタイアをする場合の生活水準をシミュレーションします。平均寿命を想定した場合、実際に生活する年数は24年間です。

<完全リタイアの場合>
1億円÷24年=416万6,666円(1年間に使える生活費)

<セミリタイアの場合>
(65歳-60歳)×(16万7,620円÷2×12ヵ月)=502万8,600円(足しになる資産)
(1億円+502万8,600円)÷24年=437万6,191円(1年間に使える生活費)

月額に換算すると、完全リタイアでは月34万7,222円、セミリタイアでは月36万4,682円の生活費を使えます。

50歳以降にリタイアするなら現実的な計画を立てよう

50歳で完全リタイアをする場合、単身世帯では約6,800万円、2人以上世帯では約1億2,000万円の資金が必要です。セミリタイアを選ぶと必要資金は減りますが、それでも5,000万円以上の資金を用意しなければなりません。現時点で資金が不足しそうな人は、転職や資産運用なども視野に入れて現実的な計画を立ててみてください。

※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。
※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買及び投資を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の運用成果等を保証するものではありません。

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