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米国の景気後退、中国経済の回復、ユーロ圏のインフレについて投資家が知っておくべきこと


※インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供するコンテンツです。

〔要旨〕

  • 米国の景気後退?:データは、米国経済が確かに減速していることを示唆しているが、景気後退が確実に進行していることを示すものではない
  • 中国のリバウンド:直近のデータからは、中国の経済成長が冷え込んでいることが示唆されるが、それは一時的かつ不均衡なものと考えられる
  • 欧州のインフレ:ユーロ圏のヘッドラインインフレ率は低下したが、ECBが利上げをやり過ぎる可能性がリスクとしてある

米国の雇用統計が力強い一方で、コストコが、鶏肉など(消費者がより安価な肉)を購入するようになっているのは景気後退を予感させる、とするなど警告を発している企業もある。米国経済は景気後退に向かっているのか?

米国経済に関する相反するシグナルを踏まえて、6月にFRBはどうするか?

中国経済のリバウンドは終わったのか?

ユーロ圏経済に何が起きているのか?インフレは?

日本の株式市場で何が起きているのか?

今後の展望

やれやれと、ほっと一息ついています。債務上限の適用は2025年1月まで停止され、米国が債務不履行に陥ることを心配する必要はなくなりました。ワシントンD.C.で友達を作りたければ犬を飼えと言われていますが、政治家たちは妥結に達し、Xデーの前に法案成立を成し遂げ、市場に前向きなサプライズを与えました。(個人的にもちょうどほっとするタイミングを迎えたところです。米国が債務上限のドラマを乗り切っただけでなく、私の家族もプロムシーズンのドラマを何とか乗り切りました。いくつもドレスを選び、手の込んだ「プロムポーズ」を計画したと思ったらブートニア(ボタンホールに挿す花飾り)を忘れ、一大イベントのあるXデーの直前に急遽注文に対応できる花屋を探したりと、おおわらわでした。)

債務上限のドラマが終わった今、世界経済で起きていることを大局的に見るには絶好の機会です。以下では、クライアントから最もよく聞かれる質問にお答えします。

米国の雇用統計が力強い一方で、コストコが、鶏肉など(消費者がより安価な肉)を購入するようになっているのは景気後退を予感させる、とするなど警告を発している企業もある。米国経済は景気後退に向かっているのか?

米国経済には「景気後退への執着」があり、多くの市場関係者がこの問に固執しています。私のコラムの長年の読者なら、私と下の息子がホラー映画を愛好していることを覚えておいでかもしれませんが、私が思うに最も良い例えは、ゾンビに噛まれると、噛まれた者もゾンビになると(観ている側が)自動的に思い込むことです。すぐに殺されたり捉われる者もいれば、ゾンビになる結末が予期されながら、成り行きをこわごわ見守られる者もいます。市場関係者は、2022年3月以降の米連邦準備理事会(FRB)による5.25%の政策金利の引き上げは、経済的にゾンビに噛まれたのと同じであり、経済は確実に景気後退に向かうだろうと考えています。しかし、経済データが示す姿は単純ではなく、やや相反したところがあります。

直近の米国の雇用統計が、非常に力強いのは確かです。4月の求人労働異動調査(JOLTS)では求人数が再び1000万件を超えましたが、これはパンデミック前の700万件付近を大幅に上回る水準です1。他方で離職率は2.4%に低下し、雇用の流動性低下を示唆しています1 。加えて調査の回答率が低かったことから、上方バイアスが生じた可能性があり、また企業が実際には採用の意図がないにもかかわらず、求職者プールがどの程度堅調かを見るために求人を掲載する、「幻の」求人があるとの報告もあります。確かに5月の米雇用統計では、雇用者数は市場予想より15万件近く多く、力強い内容となりました2 。しかし私がみるところ、賃金インフレを測る重要な指標となることから、FRBの引き締めサイクルにおいてより重要な労働関連の指標は、平均時給です。そして、平均時給は明らかに鈍化しています。

一歩引いて見ると、経済指標の中でも労働市場に関連する指標はラグをもって表れる傾向があり、また、金融政策を実行してから実体経済に影響するまでは、通常大きな政策的ラグがあることを認識することが重要です。現在、FRBが設計した米国経済の減速が見られますが、それは、非常に力強い労働市場にはまだそれほど大きく影響していません。そして労働市場の力強さからすると、最終的に労働市場にはわずかなへこみを与えるだけに終わるかもしれません。失業率は、依然として比較的低いままとなっています。

しかし金融政策は、別の形で米国経済に影響を及ぼしています。FRBの引き締めによってもたらされた地方銀行のミニ危機の結果、与信条件の厳格化が起こりました。直近のFRBベージュブック(米地区連銀経済報告)では、ほとんどの地区で金融情勢は安定しているか幾分引き締まった状況にあり、「貨物不況」が進行していると指摘されました。ダラー・ゼネラルやメイシーズなどの大手小売企業は、家計の「ベルトの締め付け」を示唆する消費者の嗜好の変化を伝えています。別の大手小売企業コストコも、消費者が肉類でも牛肉のような高価なものを避け、鶏肉のような安価な方を選ぶようになっており、これは過去の景気後退時にも見られた傾向だとしています3 。ほとんどの兆候が、米国経済の大きな減速を示唆しています。そのうち最も直近のデータは、米供給管理協会(ISM)による5月の調査結果です。5月のサービス業購買担当者景気指数(PMI)は50.3まで低下しました4 。これはまだ拡大領域にありますが、過去3年で最低の水準でした。先行指標として有用なサブ指数である新規受注指数も大幅に低下しました。良いニュースとしては、サービス業でもインフレの低下がみられることで、サブ指数である支払価格指数は56.2まで低下しました4 。

ゾンビの例えに戻りますが、詳しい方ならば、ゾンビに噛まれたからといって必ずしも致命的ではないということをご存知でしょう。ウォーキングデッドの映画の中には、そうした例外があります。例えば、私の息子が丁寧に説明してくれたように、噛まれたのが手足であれば、その手足を素早く切り落とすことで、(ゾンビに)「変化」し、永遠にボロを着て人間を追い掛け回す運命を避けられる場合がほとんどです。だから積極的な利上げサイクルにあっても、経済が景気後退、特に深刻な景気後退を避けられる例外があると、私は信じています。勘違いしないでいただきたいのは、ダメージはあるでしょうが、深刻で広範な景気後退は回避できるかもしれない、ということです。

米国経済に関する相反するシグナルを踏まえて、6月にFRBはどうするか?

私はFRBは6月の金融政策決定会合で、利上げを決定しないと考えています。以前も述べたように、5月会合でのFRBの発言は混乱を招くような内容でしたが、私は、これは(事実上の)条件付き一時停止であったと考えています。つまり、FRBが再び利上げを行うためのハードルが、以前よりずっと高くなったことを意味すると考えます。

この1週間、米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者から、6月利上げの「見送り」を提唱するメッセージが出されてきましたが、彼らの主張には説得力があります。特に、FRB副議長候補に指名されたジェファーソン理事は、「次回会合で利上げを見送ることにより、FOMCはより多くのデータを見てから追加引き締めの程度について決定できる…」と述べました5 。利上げ見送りにより、FRBは、データに弱い部分が出てくるのを見定めるのにより時間をかけることができ(個人的には、実際そのようなデータが出てくると予想しています)、それが将来の利上げを防ぐことにもなると考えています。私のの考えでは、今はFRBにとってある種危険な時期です。データが完全なディスインフレを示すのを待つことを焦れば、利上げをやり過ぎて「オーバーキル」してしまうリスクがあります。インフレは望ましい方向に進んでおり、以前から申し上げているように、その道のりは不完全なものとなるでしょうが、だからといってこれ以上引き締める理由にはなりません。

中国経済のリバウンドは終わったのか?

中国経済のリバウンドはまだ終わっていないと私は考えています。確かに最近のデータでは経済成長の冷え込みが見られますが、それは一時的かつ不均衡なものだと考えています。製造業は、世界的な需要の鈍化を反映して期待外れとなりましたが、サービス業は今後しばらくは堅調に推移すると考えられます。そうした考えを裏付ける最新のデータとして、5月の中国財新サービス業PMIは57.1となり、4月の56.4から上昇しました6 。これで5カ月連続での拡大領域となりました。パンデミック後に経済再開した他の国でも、似たようなサービス支出のサイクルのパターンが見られました。数年にわたる新型コロナウイルス規制により、中国は長く巻かれたバネのように(力をためこんでおり)、経済のリバウンドはまだまだ終わっていないと考えています。

ユーロ圏経済に何が起きているのか?インフレは?

5月のS&Pグローバル/HCOBユーロ圏製造業PMIは44.8で、4月の45.8から低下しました7。製造業の大幅な縮小が進行しており、特にドイツは大きな打撃を受け、製造業PMIが36カ月ぶりの低水準となりました7 (とはいえ、製造業の低迷は中国や米国など他の多くの国でも見られることを強調しておきます)。それでも、サービス業はこれまで比較的堅調であり、ユーロ圏サービスPMIは55.1でした8 。力強い労働市場により、これが続くのではないかと私は考えています。これは、多くの国が直面している、パンデミック後の不均衡な経済環境の一端を示しています(上記の中国に関する質問で述べたのもその例です)。

インフレに関しては、5月のユーロ圏のヘッドラインインフレ率は予想よりも低下し、6.1%となりましたが、これは主にエネルギーや食品価格を含む財インフレがさらに緩やかになったことに起因しています9 。リスクとして、欧州中央銀行(ECB)が利上げをやり過ぎるのではないかということがあります。ラガルドECB総裁は先週、基調的なインフレがピークに達したという明確な兆候はないため、ECBは引き締めを継続すると改めて示しました。特にインフレ期待がよりよくアンカーされつつあることから、ラガルド総裁が慎重な姿勢で臨むことを期待したいところです。

日本の株式市場で何が起きているのか?

最近の日本の株式市場の上昇の背景には複数の要因があるようですが、その多くは2023年末にかけて持続する可能性が高そうです。最も重要な要因は、日本銀行による緩和的な金融政策の継続(もちろんこれは、他の主要先進国の中央銀行と対照的です)やインバウンド需要の増加により、今年後半に日本経済が米国や欧州経済より速く成長すると予想されていることにあるようです。また、バリュエーションも比較的魅力的です。

日本株は、構造的な要因にも支えられていると思われます。東京証券取引所が企業に対し、株主のことをもっと考えるよう求めたことで、日本ではコーポレート・ガバナンス改革が進んでいます。また最近の大幅な賃金上昇により、日本が中期的な経済成長のポテンシャルを加速させることができるのではないかという投資家の期待も高まっています。

今後の展望

債務上限をめぐるドラマが終わった今、中央銀行が今後どのような動きを見せるかに注目が集まっており、それはデータによって左右されることになります。カナダ銀行(BOC)はここ数年、政策的リーダーのような存在となっていますが、今週、金融政策決定会合を開き、直近の成長率とインフレに関するデータを踏まえて、条件付き一時停止を維持できるかどうか評価する予定です。BOCの政策決定は他の中央銀行にも波及する傾向があり、ゾンビに噛まれたような感染力があることから、これは重要な会合となります。

また、オーストラリア準備銀行とインド準備銀行も金融政策決定会合を予定しています。また、日本の国内総生産(GDP)や先行指標などの重要な指標、ユーロ圏GDPと雇用統計、5月のカナダの雇用統計など、重要な経済データが発表される予定です。中央銀行が慎重な姿勢で臨み、各国が、目下悩まされているインフレに負けずに回復力を発揮することを期待したいと思います。

(執筆協力:木下智夫)

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

1. 出所:米労働統計局、2023年5月31日
2. 出所:米労働統計局、2023年6月2日
3. 出所:ビジネスインサイダー、“Costco customers are bypassing the beef aisle to shop for chicken and pork as a recession looms”、 2023年5月30日
4. 出所:米供給管理協会、2023年6月5日
5. 出所:London South East、“Pressure cooker”、 2023年5月31日
6. 出所:財新メディア、S&Pグローバル、2023年6月5日
7. 出所:S&Pグローバル、ハンブルグ商業銀行、2023年6月1日
8. 出所:S&Pグローバル、ハンブルグ商業銀行2023年6月5日
9. 出所:ユーロスタット、2023年6月1日

ご利用上のご注意
当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。

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