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300 GHz帯テラヘルツ波を用いた 車両通信システムの超高速上り伝送に成功


実走行車両から最大140 m先へ14.6 Gbit/sの 5G標準仕様準拠無線伝送を実証



2026年11月5日

京都大学 原田博司研究室



国立大学法人京都大学の原田博司 情報学研究科教授、香田優介 同准教授らの研究グループは、テラヘルツ帯(300 GHz帯)において、実際に走行する車両から最大140 m離れた受信機に対し、第5世代移動通信システム(5G)の無線通信規格による信号構成を基に、国内の5Gで利用されている最大チャネル帯域幅(400 MHz)の約20倍に相当する7.8 GHz幅の超広帯域信号を用いて、14.6 Gbit/sの高速無線伝送に成功しました。また、チャネル帯域幅100 MHzとした場合にも、120 mにわたる通信エリアを形成できることを実証しました。本成果は、これまで主に固定通信や近距離通信での利用が想定されてきたテラヘルツ帯において、実際の車両走行環境下で超高速無線伝送が可能であることを示すものです。これにより車両が取得する高精細映像、高精度3次元地図情報、点群データなど、自動運転に必要となる大容量の情報を、走行中の車両から路側インフラへ高速に伝送する通信システムへの応用が期待されます。今後、テラヘルツ帯を利用した車両通信技術の研究開発を進めることで、より安全で高度な自動運転を支える超高速無線通信インフラの実現に貢献することが期待されます。



 



1. 背景



 商⽤サービスが開始されている第5世代移動通信システム(5G)は、「⾼速・⼤容量」「低遅延」「多接続」といった特⻑を持ち、現在、個人向けの通信サービスだけでなく、産業や社会基盤を⽀える重要なインフラとして、さらなる⾼度化が期待されています。この⾼度化には、より広範な周波数資源の確保が不可⽋であり、現在 5G向けに割り当てられている Sub-6 GHz 帯および 28 GHz 帯に代表されるミリ波帯の有効活⽤に加え、新たな周波数帯の開拓が求められています。なかでも自動運転分野においては、車両向け通信システムV2X(Vehicle-to-Everything)が注目されています。V2Xは、車両同士あるいは車両と路側インフラとの間で、位置情報、各種センサー、メーター、モニターを用いた周辺環境の情報を共有することにより、交通事故の削減や自動運転の高度化に貢献することが期待されています。一方、自動運転車両に搭載されるカメラやLiDARなどのセンサーは高性能化・高精細化が進んでおり、取得される映像や点群データなどの情報量は今後さらに増大すると予想されています。こうした大容量情報を走行中の車両から路側インフラへ短時間で伝送するためには、従来よりも広い周波数帯域を利用した超高速無線通信技術の開発が重要となります。



 



 その有⼒候補として、現在の5Gで利用されている28 GHz帯の10倍の周波数に相当する300 GHz帯のテラヘルツ波が注⽬されています。テラヘルツ帯では、現在国内の5Gで利⽤されているチャネル帯域幅を大幅に上回る超広帯域の確保が可能であり、高精細映像、高精度3次元地図情報、点群データなどの大容量情報を高速に伝送することで、V2X通信システムの可能性を大きく広げる技術として期待されています。



 



 京都大学では、テラヘルツ波を用いた広帯域V2X通信システムの実現に向けて、超広帯域移動伝送試験装置の開発を進めてきました。2026年2月には、5Gの無線通信規格による信号構成を基に、国内の5Gに割り当てられている最大チャネル帯域幅(400 MHz)の約20倍に相当する7.8 GHz幅を用い、時速1000 kmの移動に相当するドップラー周波数環境下でも14.6 Gbit/sの伝送が可能な6G向け広帯域移動伝送試験装置を開発しました。しかし、これまでの300 GHz帯における評価は、実験室内で高速移動時のドップラー周波数を模擬した基礎実験にとどまっており、実際に走行する車両を用いた屋外環境での伝送性能や通信可能な範囲は明らかになっていませんでした。このため、テラヘルツ波を利用したV2X通信システムの実用化に向けて、実際の車両走行環境における超高速無線伝送と通信エリアの形成を実証することが課題となっていました。



 



2. 研究成果



実際の道路環境において、時速約20 kmで実際に走行する車両から最大140 m離れた建物内の受信機に対し、300 GHz帯の超広帯域信号を用いて14.6 Gbit/sの高速無線伝送に成功しました。本実験では、2026年2月に開発した6G向けテラヘルツ帯広帯域移動伝送試験装置を使用しました。本装置は以下の4つの特長を有しています。



 



1.     テラヘルツ帯(300 GHz)において、5Gの無線通信規格の信号構成を基にしたOFDMA方式の物理層信号を送信可能



2.     現行の5Gの無線通信規格で採用されているサブキャリア間隔120 kHzのOFDMA方式を用い、チャネル帯域幅100 MHzにおいて176 Mbit/sの伝送が可能



3.     OFDMA ⽅式のサブキャリア間隔を現行の120 kHzから960 kHzに拡大するとともに、チャネル帯域幅を7.8 GHzに広帯域化することで、14.6 Gbit/s の超高速伝送が可能



4.     高速移動環境で発生するドップラー周波数偏移を自動的に推定・補正し、受信信号との同期を安定して維持する信号処理方式をソフトウェア無線技術によって実装。時速1000 kmの移動に相当するドップラー周波数環境下でも安定した信号受信が可能



 



今回の伝送実験では、受信機を道路沿いの建物内に設置し、実際に走行する車両に送信機を搭載して伝送特性を評価しました。受信アンテナのビーム方向を変化させた以下の2つの条件で測定を行い、それぞれの条件で得られた通信可能範囲を組み合わせることで、通信エリアを評価しました。



 



1.       受信機を、実験対象の道路を見渡せる建物内の高さ約5.8 mの位置に設置し、受信アンテナのビームを水平方向から2度下方へ向けて、道路上に照準しました。この状態で、送信機を搭載した車両を受信機から約10 m~340 mの範囲で走行させ、伝送特性を測定しました。なお、車両に搭載した送信アンテナの高さは1.5 mとしました。



2.     同じ受信機の設置位置において、受信アンテナのビームを4度下方に向け、送信機を搭載した車両を受信機から約10 m~340 mの範囲で走行させ、伝送特性を測定しました。



 



送受信アンテナには、いずれも利得43 dBiのカセグレンアンテナを使用しました。また、すべての実験において、送信アンテナは水平方向に受信機を向くように設定しました。一方、受信アンテナのビーム方向は走行する車両に追従させず、各測定条件において固定しました。



 



各測定地点における伝送特性を評価しました。本評価では、5Gの信号伝送におけるブロック誤り率(BLER:Block Error Rate)を評価指標とし、BLERが0.1以下の場合を通信可能と判定しました。現行の5G標準仕様に相当するチャネル帯域幅100 MHzの場合には、受信機から50~170 mの範囲においてBLERが0.1以下となり、120 mにわたる連続した通信エリアを形成できることを確認しました。一方、チャネル帯域幅7.8 GHzの場合には、受信機から140 m離れた地点において14.6 Gbit/sの超高速伝送に成功するとともに、100 MHz帯域幅で形成した通信エリア内の複数地点においても通信できることを確認しました。これらの結果から、100 MHz帯域幅によって比較的広い通信エリアを確保し、そのエリア内で7.8 GHzの超広帯域信号を利用した超高速伝送を行うという、テラヘルツ帯V2X通信システムの重要な設計指針を得ました。本成果は、車両が取得する高精細映像、高精度3次元地図情報、点群データなどの大容量情報を、走行中の車両から交差点などに設置された路側インフラへ高速にアップロードする通信システムへの応用可能性を示すものです。



 



3. 波及効果、今後の展開



テラヘルツ帯(300 GHz帯)において、実際に走行する車両からの無線伝送により、チャネル帯域幅100 MHzで120 mにわたる連続した通信エリアを形成するとともに、7.8 GHzの超広帯域信号を用いて、受信機から140 m離れた地点で14.6 Gbit/sの超高速無線伝送を実現しました。これにより、比較的狭い帯域幅で広い通信エリアを確保しながら、超広帯域信号によって大容量情報を高速に伝送するという、テラヘルツ帯V2X通信システムの新たな設計指針を示しました。本成果は、これまで主に固定通信や近距離通信での利用が想定されてきたテラヘルツ帯について、実際の車両走行環境での移動通信への適用可能性を大きく広げるものです。特に、車両が取得する高精細映像、高精度3次元地図情報、点群データなどの大容量情報を、走行中の車両から交差点などに設置された路側インフラへ高速にアップロードする通信システムへの応用が期待されます。今後は、実際の道路環境における通信エリアのさらなる拡大や、車両の走行状況に応じた通信の安定化などに向けた研究開発を進め、テラヘルツ帯を利用した超高速V2X通信システムの実用化を目指します。



 



詳しくは



https://www.dco.cce.i.kyoto-u.ac.jp/ja/PL/PL_2026_11.html



をご覧ください



 



 



 



 



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