
金沢工業大学Beyond SDGs推進センター所長の平本督太郎教授(情報デザイン学部)は、2026年7月2日、韓国・ソウルで開催された国際会議「THE 100th TOSOK INTERNATIONAL TOURISM CONFERENCE &SEOUL INTERNATIONAL TOURISM FORUM 2026」の特別セッション「Sustainable Tourism Destinations」に登壇しました。
近年、世界各地で観光需要が回復・拡大する一方、観光客の集中によるオーバーツーリズムが課題となっています。日本でも、地域経済への効果が期待される反面、住民生活への影響や自然・文化資源の保全との両立が求められています。
平本教授は、日本の現状を紹介するとともに、「観光地の持続可能性」を評価する際には、経済効果だけでなく、地域住民の幸福度や暮らしの質を示すウェルビーイングを重視すべきであると提言しました。また、国連社会開発研究所(UNRISD)が開発した持続可能性評価指標「SDPI」および観光分野向けの「SDPI-Tourism」の活用可能性について紹介し、持続可能な観光を理念にとどめず、データに基づく政策や実践へつなげる必要性を訴えました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202609165998-O1-V7g7vzKK】
(写真右から2番目)
観光振興と地域住民の暮らしをどう両立するか
「THE 100th TOSOK INTERNATIONAL TOURISM CONFERENCE &SEOUL INTERNATIONAL TOURISM FORUM 2026」は、韓国観光学会による第100回国際学術大会と、ソウル特別市および韓国観光学会が主催する「2026 Seoul International Tourism Forum」をあわせて開催したものです。2026年7月1日(水)から3日(金)まで、ウェスティン朝鮮ソウルなどを会場に行われました。
特別セッション「Sustainable Tourism Destinations」には、UNRISD、上海交通大学、株式会社Public Square、韓国の行政・研究機関などから専門家が参加。観光地の持続可能性を指標に基づく政策設計や成果の評価にどのようにつなげるかについて、各国の事例を交えながら意見を交わしました。
平本教授は、日本ではインバウンド観光客の増加に伴い、一部の地域で住民生活への影響や、観光振興と自然・文化の保全との間に摩擦が生じていることを説明しました。その上で、国が整備する地域別のウェルビーイング指標を可視化したダッシュボード※や、沖縄県を例とした客観データと主観データの比較を紹介。観光施策や自然保全を進める際には、経済的な効果だけでなく、地域住民の暮らしやウェルビーイングを重視する必要性を示しました。あわせて、SDPIを通じて、企業や組織が地域社会を支える社会的基盤の維持・再生に向けた行動につなげていく考え方を示しました。
※デジタル庁 地域幸福度 Well-Being指標
https://well-being.digital.go.jp/dashboard
観光地の持続可能性を「見える化」する新たな指標とは
セッションでは、UNRISDのIlcheong Yi氏が進行を務め、UNRISDが開発したSDPIと、その観光分野への応用について説明しました。また、上海交通大学のWeimin Zhang教授からは中国における持続可能な観光都市づくりの現状と課題が、Public Square CEOのPam Lee氏からはSDPI-Tourismの観光地への適用について紹介されました。
SDPIは、企業や組織の活動を、経済、社会、環境、ガバナンスなどの観点から捉え、持続可能性に関する実際の成果や影響を評価するための指標です。SDPI-Tourismは、この枠組みを観光地の政策や運営に応用し、持続可能性に関する測定結果を政策の実施や改善につなげることを目指しています。
国際連携を通じて日本での実装を目指す
国際会議への参加にあわせて、平本教授らはUNRISD、Public Square、上海交通大学の関係者と、今後の連携可能性について意見を交換しました。
打ち合わせでは、SDPIの日本語化や日本企業等での試行など、今後の連携の可能性について意見を交換しました。Beyond SDGs推進センターでは、今回の国際会議への登壇と関係者との協議を契機に、UNRISDやPublic Squareをはじめとする関係機関との対話を継続し、SDPIの日本語化や日本企業等での試行など、日本国内での活用可能性を検討していきます。
UNRISDとは
United Nations Research Institute for Social Development(国連社会開発研究所)の略称。社会開発、不平等、ジェンダー、持続可能な開発などについて研究し、その成果を政策提言につなげる国連の研究機関です。本部はスイス・ジュネーブ。
※UNRISD公式ページをもとに作成。▶ https://www.unrisd.org/en
SDPIとは
Sustainable Development Performance Indicatorsの略称で、UNRISDが開発した、企業や組織の持続可能性に関する成果や影響を評価するための指標。社会経済、ガバナンス、環境の各領域について、持続可能な開発に即した基準や目標値と実際の成果を比較することで、組織の現状や課題を把握します。専用のオンラインプラットフォームでは、傾向分析を含むレポートを作成できます。
※SDPI公式ページをもとに作成。 ▶ https://sdpi.unrisd.org/
Public Squareとは
地域のデスティネーション(観光地)開発やMICE分野の戦略的運営を専門とする韓国のコンサルティング企業。産官学のネットワークを生かし、スマート観光都市や持続可能な都市政策に関する研究にも取り組んでいます。また、UNRISDとの連携により、観光地向けの持続可能性指標「SDPI-Tourism」の開発を進めています。
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