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3種金属の複合粉末材料で強磁性・高導電性を


半導体テストソケットに応用する導電性フィラーとして有望なFe-Cu-Ag微小複合粉末を開発



ポイント



・ ガスアトマイズ法・熱プラズマ法を用いてFe-Cu-Ag微小複合粉末の合成に成功



・ 磁性を担うFeと導電性を担うCu、Agからなる複合粒子において、Feが中心部に偏在、または微粒子として全体的に分散することで、強磁性および高導電性を実現



・ 半導体テストソケットへの応用により、半導体検査の信頼性向上に期待



 



【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202609025137-O1-GnoB8A7X



 



概 要



国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」という)マルチマテリアル研究部門 Park Kwangjae 主任研究員、劉 崢 上級主任研究員、平山 悠介 研究グループ長は、韓国の国立釜慶大学校 Kwon Hansang教授と共同で、強磁性体であり、高い導電性を実現する微小粉末、鉄(Fe)-銅(Cu)-銀(Ag)複合材料の合成に成功しました。



 



この技術はガスアトマイズ法および熱プラズマ法を用いて、微小粉末Fe-Cu-Ag複合材料を合成するものです。液化金属を噴霧・急速に冷却するガスアトマイズ法によって平均粒径50 µm程度、また金属蒸気を急速冷却する熱プラズマ法では平均粒径100 nm程度の球状の微小粉末が得られました。評価の結果、ニッケル(Ni)粉末に比べてより高い機械的強度と導電性が確認できました。



 



今回合成したFe-Cu-Ag微小複合粉末は、エラストマー型半導体テストソケットにおいて、Ni、または、貴金属がメッキされたNi(平均粒径20~50 µm程度)が用いられることの多い導電性フィラーとして、それらを置き換えるポテンシャルを持つと考えられます。今後ますます微細化・多ピン化する半導体の検査において信頼性向上に貢献すると期待されます。



 



なお、この技術の詳細は、2026年9月11日に第87回応用物理学会秋季学術講演会で発表されます。



 



下線部は【用語解説】参照



 



研究の社会的背景



半導体は、製造後に電気的な特性や動作を確認するためのテストが行われます。その際、半導体とテスター(検査装置)を電気的に接続するために用いられるのが「半導体テストソケット」です。半導体テストソケットには、半導体の端子とテスターを確実に接続するとともに、微細化・多ピン化する半導体に対応し、繰り返し使用しても安定した電気的接続を維持できることが求められます。また、半導体テストソケット内部の接触抵抗が小さく安定していることや、半導体の端子を傷つけにくいことなども重要です。



 



半導体テストソケットの接点に、ゴムのように柔らかく、弾性を持った高分子素材「エラストマー」を使ったエラストマー型半導体テストソケットでは、絶縁性のエラストマーの中に金属などの導電性の粒子、「導電性フィラー」を分散させます。半導体をソケットに押し付けるとエラストマーが圧縮され、導電性フィラー同士、また導電性フィラーと半導体端子・電極が電気的に接触し、電気信号が半導体とテスターの間を伝わります。導電性フィラーには、高い導電性だけでなく、適切な硬さや機械的強度、耐摩耗性など、複数の性能が求められます。さらに、導電性フィラーが強磁性体であれば、製造時に磁場を利用して特定の方向に電気を通す導電経路を形成することができます。



 



現在、エラストマー型半導体テストソケットでは、導電性フィラーにNi、または、貴金属メッキが施されたNiが用いられることが多いのですが、半導体の微細化や多ピン化に合わせてより良い材料、つまり、強磁性体であって高い耐摩耗性と導電性を持つ材料の探索が続けられています。



 



研究の経緯



産総研は、ナノメートルサイズからマイクロメートルサイズまでの幅広い粒径領域において、複合粒子を開発するためのプロセス技術やノウハウを蓄積してきました。また、高性能永久磁石の開発をはじめ、積層造形用材料や高機能金属材料の研究開発にも取り組んでいます。



 



韓国・国立釜慶大学校のKwon Hansang教授とは、これまで複合粉末の開発に関する共同研究を進めてきました。産総研が保有する金属粉末製造技術と、Kwon Hansang教授が有する複合材料設計に関する知見を融合することで、優れた磁気応答性、電気特性および機械的特性を兼ね備えた新しい複合粉末の開発を目指しました。



 



研究の内容



本研究では、強磁性を有し機械的特性にも優れるFeに着目しました。FeはNiと同様に強磁性を有するだけでなく、Niよりも高い飽和磁化を示すことから、磁場応答性の向上が期待されます。そこで、Feと高い電気伝導性を有するCuおよびAgとを一つの粉末中で複合化したFe-Cu-Ag複合粉末を開発しました。原料粉末中の質量比はFe : Cu : Ag = 3 : 5 : 2としました。磁性を担うFeは、CuやAgに比べて導電性に乏しいため、粒子に高導電性を持たせるには粒子表面はCu、Agに富むことが有効です。一方で、Fe、CuおよびAgは互いに固体状態で混ざりにくい非固溶系金属であるため、通常は均一な複合組織を形成することが難しい材料系です。本研究では、この非固溶系金属の特徴を利用し、Feの磁気応答性と機械的特性、CuとAgの高導電性を単一粉末中で発現できる複合粉末の作製を目指しました。



 



図1に、本研究で開発したFe-Cu-Ag複合粉末の微細構造を示します。ガスアトマイズ法では、金属を溶かして液体にした後、これを高速で噴霧して急速に凝固させることで、球状の金属粉末を作製できます。Fe、CuおよびAgを溶融し、噴霧・急速凝固させることで、平均粒径50 µm程度のマイクロサイズのFe-Cu-Ag複合粉末が得られました。走査型電子顕微鏡観察による解析の結果、粒子状のFeとCuがAgマトリックス中に分散内包された、特徴的な複合微細組織を有する粉末が得られました。一方、熱プラズマ法では、金属原料を超高温のプラズマ中で蒸発させ、その後の冷却過程でナノ粒子が形成されます。このプロセスでは、Fe、Cu、Agの蒸気圧の違いが粒子の形成に大きく影響します。FeがCuおよびAgよりも先に核生成することで、Feが粒子の中心部に偏在する構造を持つ、平均粒径100 nm程度のナノサイズの複合粒子が形成されることがわかりました。



 



【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202609025137-O2-z5r8La8S



 



図2に、作製したFe-Cu-Ag複合粉末の特性評価結果を示します。マイクロサイズのFe-Cu-Ag複合粉末は、自動粉体抵抗測定の結果、比較対象であるNi粉末(平均粒径50 µm程度)と比べて荷重によらず高い電気伝導率を示しました。また、ナノサイズのFe-Cu-Ag複合粉末についても、圧粉体評価(四端子法)においてNi粉末(平均粒径5 µm程度)と比較して高い電気伝導率を示しました。これにより、本複合粉末は従来のNi粉末よりも優れた導電性を有していることがわかりました。



 



【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202609025137-O3-Qf794elJ



 



さらに、半導体テストソケット用フィラーとして重要な磁気特性および機械的特性についても評価しました。従来用いられているNi粉末の飽和磁化が約57 emu/gであるのに対し、本研究で開発したFe-Cu-Agマイクロ粉末は63 emu/g、Fe-Cu-Agナノ粉末は56 emu/gを示しました。CuおよびAgは非磁性元素であるにもかかわらず、Fe-Cu-Ag複合粉末はNi粉末と同等レベルの磁気特性を維持しており、これは強磁性を有するFeの寄与によるものと考えられます。



 



機械的特性については、繰り返し荷重に対する耐久性に関係する指標の一つとしてビッカース硬度を評価しました。一般的なNi粉末のビッカース硬度は約100~110 HV(0.98~1.08 GPa)とされていますが、本研究で開発したFe-Cu-Agマイクロ粉末では127 HV(1.25 GPa)を示しました。この結果は、Fe-Cu-Ag複合粉末がNi粉末と同程度の機械的強度を有する可能性を示しています。すなわち、本研究で開発した複合粉末は、半導体テストソケット用フィラーに求められる磁気特性、電気特性および機械的特性をバランスよく備えた材料であると考えられます。



 



今後の予定



電気伝導性の向上は、半導体テストソケット内部の接触抵抗の低減につながると期待されます。接触抵抗が低減すると、半導体デバイスと測定装置の間で電気信号をより安定して伝達できる可能性があります。また、導電経路の抵抗が低くなることで、通電時の発熱抑制にも寄与すると考えられます。したがって、本研究で開発した複合粉末は、半導体テストソケット用材料としての応用が期待されます。今後は、実際のシリコーンラバー型テストソケットへの適用を想定し、組成、粒径、微細構造の最適化を進めるとともに、接触抵抗、耐久性、信号伝送特性などの評価を進めていきます。



 



学会情報



学会名:第87回応用物理学会秋季学術講演会



発表タイトル:ガスアトマイズ法および熱プラズマ法で作製したコアシェル微細構造を有するFe–Cu–Ag複合マイクロ/ナノ粉末



著者:Park Kwangjae、劉 崢、平山 悠介、Kwon Hansang



 



用語解説



複合材料



複数の異なる材料を組み合わせることで、単一材料では得られない特性や機能を発現させた材料。



 



ガスアトマイズ法



金属を溶かして液体状態にした後、高圧ガスで微細な液滴として噴霧し、急速に凝固させることで金属粉末を製造する方法。量産性に優れ、球状の金属粉末を効率良く作製できることから、産業界で広く利用されている。



 



熱プラズマ法



数千~一万度級の超高温プラズマを利用して原料を蒸発させ、その後の冷却・凝縮過程でナノ粒子を生成する製造法。平均粒径数百ナノメートル以下の金属ナノ粉末を作製できる。



 



飽和磁化



磁性材料が磁場によって完全に磁化された状態での磁化の大きさ。磁性材料の性能を評価する重要な指標である。



 



自動粉体抵抗測定



粉末を一定荷重で圧縮しながら電気抵抗を自動測定する手法。粉末材料の導電性を定量的に評価するために用いられる。



 



四端子法



電流を流す二つの端子とは別に電圧測定用の二つの端子を用いた電気抵抗の測定方法。試料と端子の間に生じる接触抵抗の影響を低減し、正確に抵抗値を測定できる。本研究では、粉末を圧縮して成形した試料(圧粉体)の導電性を評価するために用いた。



 



ビッカース硬度



材料表面にダイヤモンド圧子を押し込み、その圧痕の大きさから材料の硬さを評価する指標。数値が大きいほど、変形や摩耗に対して耐性があることを示す。



 



 



プレスリリースURL



https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2026/pr20260904/pr20260904.html



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