EY税理士法人調査、物価上昇でも海外赴任者の処遇制度の改定は限定的
- 物価上昇や為替変動など海外赴任を取り巻く環境の変化にもかかわらず、2020年以前から赴任支度金(海外赴任時の準備一時金)の金額を見直していない企業が全体の3割以上。
- 海外赴任者の一時帰国費用補助について、家族帯同・単身・独身いずれの赴任形態でも、半数以上の企業が年1回以上の帰国を負担しているケースが主流であることが判明。
- 赴任支度金(海外赴任時の準備一時金)を支給している企業は93%に上り、平均支給額は本人約30万円、帯同配偶者約16万円、帯同する子約5万円。
- 海外赴任者向け株式報酬プランは71%の企業で未導入。一方で、EY税理士法人には導入や制度設計、税務コンプライアンス対応に関する相談が寄せられており、グローバル人材の獲得・維持に向けた施策として注目が高まりつつある。
EY税理士法人(東京都千代田区、統括代表社員 蝦名 和博)は、海外赴任者の実態調査である「EYモビリティサーベイ」の10回目を実施しました。今回は、海外赴任における処遇制度である「一時帰国費用補助」「赴任支度金」「株式報酬プラン」について、国内外企業の実態調査・分析を行いました。
本調査により、物価上昇や為替変動など海外赴任を取り巻く環境の変化にもかかわらず、一時帰国制度および赴任支度金については、改定の動きが限定的であることが浮き彫りとなりました。一方で、株式報酬プランに関しては、未導入企業が大半を占めるものの、一部で導入検討の動きが始まっており、グローバル人材の確保・定着(リテンション)の観点から、今後制度導入の必要性が高まる可能性があります。
本調査は、海外赴任者関連制度の現状を明らかにすることを目的に2026年2月16日~同年4月24日に実施し、国内外の企業から計213名(有効回答数:181件)の回答を得ました。回答者の多くは人事・経理・経営企画系の管理部門に所属する担当者です。
第10回EYモビリティサーベイの調査結果(一部抜粋)
[一時帰国費用補助]
1. 一時帰国費用の補助頻度
海外赴任者への一時帰国費用補助の頻度については、家族帯同・単身赴任・独身赴任を問わず年1回以上の頻度で帰国費用を会社が負担する企業が半数以上に達し、最も一般的なパターンとなっています。具体的に、家族帯同では60%が年1回以上補助し、19%が2年に1回以上補助するという結果で、前回2022年秋調査から大きな変化はありません(年1回以上:60%→60%、2年に1回以上:24%→19%)。単身赴任者では51%が年1回以上、30%が半年に1回以上の一時帰国費用を会社負担で補助しており、独身赴任者では62%が年1回以上、15%が半年に1回以上の補助を受けています。いずれも、ほとんどの企業が少なくとも年1回ペースの帰国支援を提供していることが分かります。
2. 一時帰国費用の会社負担範囲
一時帰国時の航空運賃に関して、「赴任地国内空港から日本の空港までの往復航空運賃」は約8割の企業が会社負担としており、これが最も一般的な支援内容です。また、帰国期間については、往復日数を含め10~14日と定める企業が31%で最多ですが、期間を特に定めない企業も22%存在します。一時帰国中の宿泊費まで補助する企業は1割強にとどまり、前回調査より低下しています(19.1% → 13.3%)。こうした結果から、近年の生活インフラ充実に伴い、慰労一時帰国(R&R)の制度は、生活支援よりも業務パフォーマンス維持の観点で設計される傾向がうかがえます。
3. 一時帰国費用の負担先
一時帰国費用を誰が負担するかについては、「日本本社が負担」とする企業が全体の48%と、約半数が本社での負担を選択しています。一時帰国費用についても、日本本社・現地法人間の費用負担の整理が実務上の検討事項となることが示唆されます。
[赴任支度金]
1. 赴任支度金の支給状況
海外赴任に伴い、93%の企業が何らかの赴任支度金(赴任準備一時金)を支給しており、海外赴任時の標準的な支援制度となっています。支給時期は「赴任前に支給」する企業が64%で最多でした。
2. 赴任支度金の金額
平均支給額は赴任者本人に約30万円、帯同する配偶者に約16万円、帯同する子には約5万円で、一般的に帯同者が増えるほど支給額も増額される傾向です。また、支給額の算定方法を見ると、役職や年収にかかわらず一律に同額を支給する企業が44%と最も多く、全体の傾向として一定額を定額給付するケースが主流です。
3. 赴任支度金に関する課税・用途
赴任支度金を日本国内でどのように税務上取り扱うかについては、対応が分かれています。42%の企業が非課税扱いとする一方、37%が課税対象としています。支給目的としては、現地生活に必要な家具・日用品などの購入費用をカバーするための支給とする企業が最も多く、その他赴任準備に伴う雑費全般の補填とするケースも見られます。額の見直し時期については、33%の企業が2020年以前から金額を改定しておらず、海外のインフレや物価上昇を踏まえた支給水準の更新が遅れている可能性も示唆されます。また、海外赴任終了後に支給される帰任支度金については、56%の企業が赴任時と同額を支給する基準としていました。
[株式報酬プラン]
1. 株式報酬プランの導入状況
海外赴任者向け株式報酬プランは71%の企業で未導入という結果となった一方で、EY税理士法人には導入や制度設計、税務コンプライアンス対応に関する相談が寄せられており、グローバル人材の獲得・維持に向けた施策として今後検討が進む可能性があります。
2. 株式報酬の種類と課題
現在、海外赴任者に提供されている株式報酬としてはRS(譲渡制限付株式)が最多で、その他ストック・オプション(SO)やパフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)などの欧米型の長期インセンティブも一部導入されています。しかし税務コンプライアンス管理に課題もあり、赴任先で株式報酬の税務コンプライアンスを適切に管理できている企業は全体の4割程度にとどまる状況です。
EY税理士法人 パートナー 藤井 恵(ふじい めぐみ)のコメント:
第10回EYモビリティサーベイでは、「一時帰国制度」「赴任支度金」「株式報酬プラン」といった海外赴任者の処遇制度の現状を多角的に調査しました。2022年調査にて反響の大きかった一時帰国制度および赴任支度金については、物価上昇など海外赴任を取り巻く環境の変化にもかかわらず、制度改定の動きが限定的にとどまっていることが浮き彫りとなりました。これは2020年以前から支度金の金額を見直していない企業が全体の3割以上に上るなど、近年のインフレ局面にあっても多くの企業でこれら制度が十分に改定されていない実態を示すものです。一方で株式報酬プランに関しては、現時点で未導入企業が大半を占めますが、一部で導入検討の動きが始まっており、今後グローバル人材の確保・定着(リテンション)の観点から制度導入の必要性が高まる可能性があります。
近年、円安や海外物価の上昇に伴い、海外赴任による金銭的メリットは従来に比べ大きく減少しています。赴任関連の従来からの制度である一時帰国支援や赴任支度金についても、物価や為替変動に合わせた抜本的な見直しが各社で求められています。また、デジタル技術の進展によりリモートワークが普及する中、帯同家族を伴っての長期海外赴任に慎重になる社員も増えており、海外赴任が会社からの「命令」というよりも、本人の任意選択になりつつある昨今の状況では、従来の福利厚生的な支援策だけでは人材の動機づけが不十分な場合もあるでしょう。グローバルな人材獲得競争が激化する中、従来の「日本人社員を一定期間海外に送り出すための制度」から、より多様な人材、家族形態、働き方、報酬制度を前提としたグローバルモビリティ制度へ移行する過渡期であることがうかがえます。他社動向やグローバル標準のインセンティブを踏まえ、海外赴任者に対する報酬体系・支援制度を再設計することが、効果的なタレントマネジメントの観点からも重要と考えられます。
第10回EYモビリティサーベイ調査 概要
・目的: 海外赴任者に関する処遇・人事施策・税務等の実態を明らかにする調査
・ テーマ: 海外赴任における一時帰国・赴任支度金・株式報酬の現在地
・ 実施期間: 2026年2月16日(月)~4月24日(金)
・ 回答者数: 213名(有効回答数:181件)
主な調査結果のポイントは、以下の資料から詳細をご確認ください:
第10回EYモビリティサーベイ調査結果
[EYについて]
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[EY税理士法人について]
EY税理士法人は、EYメンバーファームです。税務コンプライアンス、クロスボーダー取引、M&A、組織再編や移転価格などにおける豊富な実績を持つ税務の専門家集団です。グローバルネットワークを駆使して、各国税務機関や規則改正の最新動向を把握し、変化する企業のビジネスニーズに合わせて税務の最適化と税務リスクの低減を支援することで、より良い社会の構築に貢献します。詳しくは、ey.com/ja_jp/about-us/ey-taxをご覧ください。
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