EY調査(CEO Outlook)、CEOは地政学を最重要課題とする一方、収益性・AI・戦略的ディールへの重点も強化
■ AIの焦点は導入から企業全体での価値創出へと移行し、CEOの80%がAI投資を拡大している。一方、規制やスキル不足が進展の鈍化要因となっている。
■ ディールは成長を加速する戦略的手段となっており、CEOはM&Aや事業売却を通じてAI・テクノロジー関連の能力強化を進めている。
EYは、最新のM&Aに関する調査レポート「EY-Parthenon CEO Outlook調査 2026年5月期」(以下、「本調査」)を発表しました。本調査は、世界21カ国・地域のCEO 1,200人を対象に実施され、現状や将来に対する彼らの見解を評価・分析しています。
本調査によると、地政学リスクやマクロ経済の不確実性が高まる中でも、CEOはAIや戦略的ディールを通じて、規律ある成長と長期的な変革への取り組みを一段と強めています。
不確実性が続き、複数の外部ショックが重なる環境下でも、CEOは守勢に転じることなく、過去の危機から得た教訓を踏まえ、収益性とレジリエンスを重視しつつ、選択的な成長を優先しています。
地政学を背景に成長戦略の重点が移行
地政学的不確実性は、CEOアジェンダのトップを占めており、56%が今後12カ月における最も重大なリスクと捉えています。これは2025年9月比で28ポイントの上昇であり、足元の地政学的情勢を反映した結果といえます。
地政学の影響は既に顕在化しており、CEOの46%が、エネルギー価格の長期的高騰が企業にとって大きな逆風になると回答しています。これは、地政学の不確実性がオペレーションや財務面のリスクに直結していることを示しています。
しかし、従来の危機局面とは異なり、CEOは足元のマクロ経済の不安定さを理由に事業を縮小しようとはしていません。むしろ、投資先を厳選しながらレジリエンスを高め、短期の業績を維持しています。こうした動きからは、CEOが、収益性とレジリエンスを軸に、急速に変化する環境の中でリスクを見極めつつ、「選択的で規律ある成長」へと軸足を移している様子がうかがえます。
本調査では、CEOの82%が急速な市場拡大よりも、持続可能な長期成長と収益性確保への明確な道筋を優先しています。こうした現実的な対応の中で、CEOは財務の柔軟性、業務効率、人材基盤の強化を重視し、生産性向上に向けてテクノロジーへの依存度を高めるとともに、デジタル・AI投資にも引き続き注力しています。
EY-ParthenonのGlobal Vice ChairであるAndrea Guerzoniのコメント:
「不透明な環境下でも、CEOは投資を縮小していません。過去10年の経験を踏まえ、リスクや不確実性を織り込んだ意思決定を行い、成長投資の重点と狙いを一段と明確化しています。加えて、不安定さは一時的なものではなく構造的なものであると捉え、適応力の強化、市場の継続性の確保、そして規律ある実行による長期的な成長を重視しています」
AIの焦点は導入から全社規模での価値創出へ
AIは、市場評価の過熱の有無にかかわらず、その優位性は揺るがず、地域やセクターを問わず最優先の戦略テーマであり続けています。本調査でも、CEOの80%が2026年にAI投資の拡大を計画しており、同年に投資の縮小を見込む企業はわずか1%にとどまります。さらに、48%が、テクノロジーやAIケイパビリティへのアクセスを加速するため、買収や事業売却を推進しています。
AIはすでに、顧客価値の創出(42%)やイノベーション(40%)といった成長を牽引する領域に加え、オペレーション(41%)や戦略(41%)においても、全社レベルで具体的な成果を生み始めています。こうした成果はCEOの投資への自信につながっており、83%が新興技術への投資に前向きな見方を示しています。
しかし課題は依然として残っています。AIが具体的な成果を生みつつある一方で、断片的で変化の続く規制の枠組みが、AI活用の拡大を阻んでいます。実際、CEOの30%が規制対応に伴うコンプライアンス負担や業務の複雑化を指摘し、38%が規制の断片化や継続的な見直しを、AI活用の効果的な拡大を阻む要因として挙げています。
AIにより、ワークフォース戦略はリスキリング重視へ
AIが雇用を代替するとの懸念は根強いものの、AI投資の加速に伴い、CEOは人員削減ではなく価値創出に向けてワークフォース戦略の見直しを進めています。今後3年間でAIがワークフォース戦略に影響を及ぼすとするCEOは99%に上る一方、AIが採用の減少につながるとの見方は20%にとどまり、2024年の46%から大きく低下しています。
CEOは、AIを人材の代替ではなく、生産性向上や成長を支える手段として位置付けています。本調査でも42%が既存人材の大規模なリスキリングやアップスキリングを見込んでおり、44%が人とAIの能力を組み合わせる形で役割設計の見直しを進めています。
一方で、人材面の制約は依然として大きく、AIの価値創出を阻む主要な障壁となっています。本調査では、CEOの20%が、既存ワークフォースにおけるAI・データ人材のスキル不足や、AI主導の変革を担うリーダーシップの不足を人材面の最大の課題として挙げています。こうした状況は、テクノロジーへの投資だけでなく、リーダーシップ、スキル、オペレーティングモデルへの投資も不可欠であることを示しています。
Guerzoniのコメント:
「CEOは、もはやAIを人の代替手段とは捉えていません。AIが企業全体に組み込まれる中で、専門領域の知見とAIリテラシーを兼ね備えた人材への需要が高まっています。真のリスクは大量の雇用喪失ではなく、スキルギャップの拡大にあります。リスキリングとワークフォース変革への継続的な投資がなければ、企業はAIがもたらす価値を十分に引き出せません」
AIと長期的な戦略適合に基づくポートフォリオ判断
マクロ経済および地政学環境の不確実性が高まる中でも、M&Aは依然として変革と成長の中核的なドライバーと位置付けられています。ただし焦点は、規模の拡大から戦略との整合性およびケイパビリティ強化へと明確に移行しています。M&Aを計画しているCEOの89%は、ディールの選別が一段と進む中でも、今後12カ月で自社の投資意欲が高まると見ています。
計画されているM&Aの主な対象国は引き続き米国が最多で、これにインド、英国、カナダ、ドイツが続いています。
AIケイパビリティは、ポートフォリオ設計や資本配分の意思決定を方向付ける重要な要素となっています。買収や売却の判断における最重要要因として、テクノロジーやAIケイパビリティの強化を挙げたCEOは48%に上り、これに長期的成長戦略との適合(47%)が僅差で続いています。
2026年において、CEOはM&A(62%)、戦略的アライアンス(57%)、合弁事業(45%)、事業売却(42%)など、幅広いディール戦略の推進を見込んでおり、ポートフォリオの再設計を進める中で、短期的な混乱への対応と長期的成長の両立を図っています。
Guerzoniのコメント:
「CEOはディ―ルを、長期的成長に向けた戦略的な手段と位置付けつつ、短期的な環境変化に対応する柔軟性を維持しています。地政学的緊張や経済の不確実性により、ディール活動は一時的に鈍化する可能性はあるものの、取引戦略に対する自信は依然として強固です。これは機会主義的な拡大ではなく、規律あるポートフォリオ判断に基づくものです。CEOは、戦略との整合性と持続的成長を重視し、案件を厳選しています」
EY-Parthenon CEO Outlook調査(2026年5月期)については、下記からご覧いただけます。
CEO調査2026年5月期
これまでのEY-Parthenon CEO調査 については、下記からご覧いただけます。
EY-Parthenon CEO調査 | EY Japan
※本ニュースリリースは、2026 年5月4日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
英語版ニュースリリース:
Geopolitics tops the CEO agenda as leaders tighten focus on profitability, AI and strategic deals | EY - Global
本調査について
EYは、Financial Times Groupの専門的調査・コンテンツマーケティング部門であるFT Longitudeに委託し、2026年3月から4月にかけて、世界各国・地域の大手企業のCEO1,200人を対象に匿名のオンライン調査を実施しました。本調査は、世界の主要企業に影響を及ぼすトレンドや動向についての示唆と、将来の成長および長期的価値創造に関するCEOの見通しを明らかにすることを目的としています。回答者は、21カ国(ブラジル、カナダ、メキシコ、米国、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、フランス、ドイツ、イタリア、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、英国、オーストラリア、中国、インド、日本、シンガポール、韓国)、および5つのセクター(消費財・ヘルスケア、金融サービス、工業・エネルギー、インフラ、TMT〈テクノロジー、メディア・エンターテインメント、テレコム〉)にわたっています。回答企業の年間の全世界売上高の構成は、5億米ドル未満(20%)、5億米ドル以上9億9,999万米ドル以下(20%)、10億米ドル以上49億9,999万米ドル以下(30%)、50億米ドル以上(30%)です。
CEOコンフィデンス指標は、EY-Parthenon CEO Outlook調査の一環で収集したデータを基に、マクロ経済環境や企業業績の見通しに対するCEOの意識を定量化したものです。調査に参加したCEOは、15の項目に対する見通しを、「非常に悲観的」(0)から「非常に楽観的」(100)までの5段階で評価しました。これらの回答は、「セクターの成長」「物価とインフレ」「企業の成長」「人材」「投資とテクノロジー」という5つのテーマグループに分類されました。指標の値が高いほど、経済や自社ビジネスの見通しに対して楽観的な見方が強くなります。指標100は、極めて楽観的であり、50は中立的、0は極めて悲観的であるということ示しています。
〈EYについて〉
EYは、クライアント、EYのメンバー、社会、そして地球のために新たな価値を創出するとともに、資本市場における信頼を確立していくことで、より良い社会の構築を目指しています。 データ、AI、および先進テクノロジーの活用により、EYのチームはクライアントが確信を持って未来を形づくるための支援を行い、現在、そして未来における喫緊の課題への解決策を導き出します。 EYのチームの活動領域は、アシュアランス、コンサルティング、税務、ストラテジー、トランザクションの全領域にわたります。蓄積した業界の知見やグローバルに連携したさまざまな分野にわたるネットワーク、多様なエコシステムパートナーに支えられ、150以上の国と地域でサービスを提供しています。
All in to shape the future with confidence.
EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。EYによる個人情報の取得・利用の方法や、データ保護に関する法令により個人情報の主体が有する権利については、ey.com/privacyをご確認ください。EYのメンバーファームは、現地の法令により禁止されている場合、法務サービスを提供することはありません。EYについて詳しくは、ey.comをご覧ください。
本ニュースリリースは、EYのグローバルネットワークのメンバーファームであるEYGM Limitedが発行したもので、顧客サービスは提供していません。
〈EY-Parthenonについて〉
EY-Parthenonは、変革戦略、トランザクション、コーポレートファイナンスを独創的に組み合わせることで、単なる机上の空論ではない実際に機能するソリューションを提供しています。
私たちは絶えず複雑さを増す世界を前に、EYが提供する包括的なサービスラインアップを活用しながら、未来に対応する戦略コンサルティングです。職能領域に関する深い知識とセクターごとの専門性を備え、革新的なAI技術と投資家の視点を組み合わせることで、CEOをはじめとする経営層、投資機関、政府機関といったパートナーと共に、一歩ずつ、確信を持って未来を形作る支援をします。
EY-ParthenonはEYにおけるブランドの一つであり、このブランドの下、戦略コンサルティングサービスをEYメンバーファームが世界各地で提供しています。詳しくは、ey.com/ja_jp/services/strategy/parthenonをご覧ください。
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