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音が導くスプリント走への効果


早稲田大学の研究グループは、メトロノームを用いた聴覚ガイドがスプリント走の効果的な指導法になり得ることを示しました。研究では異なるテンポ(遅いテンポ90%、速いテンポ110%)のメトロノームを使用し、スプリント中のランナーのピッチとストライドを解析。この結果、速いテンポでピッチが増加し、遅いテンポでストライドが増加することがわかりました。これにより、聴覚ガイドが選手個々の動作タイプに応じたトレーニング調整に寄与する可能性が浮上しました。また、聴覚ガイドは非言語デバイスであるため、幅広い年齢層に適用できるという利点があります。これらの成果は陸上競技のコーチング手法に革新をもたらす可能性があると同時に、一般的な健康増進やフィットネス分野にも影響を与えることが期待されています。

~聴覚ガイドでスプリントの走りを最適化する指導法の立案~

2025年4月11日
早稲田大学

詳細は早稲田大学HPをご覧ください。

研究発表のポイント
●聴覚ガイド(メトロノーム)を利用することでランニングにおけるピッチが変化することが過去の研究で報告されているものの、高速度のスプリント走への影響はあまり知られていません。
●この研究では、メトロノームを用いた聴覚ガイドがランナーのリズム同期を促進し、スプリント走の動作を調節できることがわかりました。
●具体的には、遅いテンポのメトロノームでは、ストライドが増加し、速いテンポのメトロノームでは、ピッチが増加したことが明らかとなりました。
●これらの結果は、コーチングにおけるスプリント走指導の新たな手法として応用できる可能性があります。

早稲田大学スポーツ科学研究科博士課程(研究当時 修士課程)の長谷 伸之助(はせ しんのすけ)、早稲田大学スポーツ科学学術院の中川 剣人(なかがわ けんと)講師(現在、上武大学ビジネス情報学部・准教授)、早稲田大学スポーツ科学学術院の礒 繁雄(いそ しげお)教授らの研究グループ(以下、本研究グループ)は聴覚ガイド(メトロノーム)を用いて中学生のスプリント走におけるピッチ(※1)とストライド(※2)の調整効果を明らかにし、スプリント走動作を調整させる指導法を実証しました。
本研究成果は、Public Library of Scienceが発行する「PLOS One」誌にて2025年3月21日にオンライン公開されました。

(1)これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)
スポーツ現場におけるコーチングでは、コーチの指示や言葉かけによって選手のパフォーマンスが変化することが報告されています。一方で、指示や言葉かけによる指導効果は、選手のスキルレベルや指示内容にも影響を受けることが報告されています。そのため、言語や選手の理解度に依存しない非言語デバイス(音楽やメトロノームなど)によるコーチングが注目されています。過去の研究では、音楽やメトロノームを用いた聴覚ガイドが低速度のジョギングや長距離のランニングにおけるピッチに影響を与えることは報告されていましたが、高速度のスプリント走における具体的な効果については十分な検証がなされていませんでした。

(2)今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと
本研究では、先行研究で使用されていた聴覚ガイドのテンポ(※3)を参考に、被験者である中学生の自然なスプリント走中のピッチに基づきテンポが遅い(90%)および速い(110%)メトロノームを設定し、スプリント走中のピッチ、ストライド、走速度などの各パラメータをビデオカメラで測定し、解析しました(図1)。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202504097123-O1-PXHmv5X5

その結果、遅いテンポの条件では、ピッチが減少した代わりにストライドが増加し、速いテンポではピッチが増加することが明らかとなりました(図2)。走速度は、ピッチとストライドの積で決まるため、ピッチもしくはストライドを操作し、変化させることは、スプリント走のトレーニングにおいてパフォーマンス向上に寄与する指導法になる可能性があります。ただし、ピッチとストライドは互いに負の相互作用があるとされ、一方が増加すると他方が減少する傾向があるため、スプリント走におけるコーチングでは、選手の個々のランニング動作やタイプを踏まえたうえでスプリント走動作の最適化を図る必要があります。

 
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202504097123-O2-vN2Dc828
図2 左:スタートから40mまでの5m区間ごとのピッチの変化
         右: スタートから40mまでの5m区間ごとのストライドの変化

(3)研究の波及効果や社会的影響
本研究成果は、個々のスプリント走動作を最適化するトレーニング手法として、陸上競技の指導法に革新をもたらすとともに、健康増進やフィットネス分野への応用も期待されます。また、聴覚ガイドは非言語デバイスであるため、幅広い年代を対象に適用できる可能性があります。

(4)今後の課題
ピッチは変化したもののメトロノームのテンポにスプリント走のピッチを同期させる課題に被験者の注意が向き、スプリント走速度が低下してしまった傾向もみられました。そのため、聴覚ガイドのテンポ設定の最適化や走速度が統制された測定環境(例:トレッドミル) での音によるピッチの変化を検証することで、より実践的なトレーニング指導法が確立できると考えられます。

(5)研究者のコメント
本研究により、聴覚ガイドがスプリント走におけるピッチに及ぼす具体的な効果を実証できたことは大きな成果です。今後は異なる環境条件で検証を進め、陸上競技指導の革新に寄与する手法として確立していきたいと考えております。

(6)用語解説
※1 ピッチ: ランニングにおける1秒間あたりの歩数 [Hz]
※2 ストライド: ランニングにおける1歩分の移動距離 [m]
※3 テンポ: ビート(拍)とビートの時間的制約 (例:速いもしくは遅いなど)

(7)論文情報
雑誌名:PLOS One
論文名:Effects of rhythmic auditory guide on sprint running
執筆者名(所属機関名):長谷 伸之助(早稲田大学スポーツ科学研究科)、中川 剣人 (早稲田大学スポーツ科学学術院(現在、上武大学ビジネス情報学部・准教授)) 、礒 繁雄 (早稲田大学スポーツ科学学術院)
掲載日時(現地時間):2025年3月21日(オンライン掲載)
掲載URL:https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0319738
DOI: 10.1371/journal.pone.0319738

(8)研究助成
なし

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