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2022年度、累計163万人超のストレスチェックデータを分析


業務負担度や疲労感が増加する一方で、失職への不安が改善

2022年8月1日
株式会社ドクタートラスト
https://doctor-trust.co.jp/

 株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦、以下「ドクタートラスト」)のストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者163万人超のデータを活用し、さまざまな分析を行っています。
 今回は2022年度にストレスチェックサービスを利用した受検者のうち、およそ41万人の結果を分析し、従業員のストレス度合の変化を調査しました。

YouTubeで解説動画公開中
【前編】2022年度は働く人たちの「疲労感」が悪化!ストレスチェック結果における41万人のデータを分析!(解説:ストレスチェック研究所 チーフアナリスト 服部恭子)

【動画:https://www.youtube.com/watch?v=l7yFdJ3IfBw

 
【後編】2022年度、働く人たちのストレスで改善した項目は?企業は人材を大切にする傾向に!ストレスチェック結果における41万人のデータを分析!(解説:ストレスチェック研究所 チーフアナリスト 服部恭子)

【動画:https://www.youtube.com/watch?v=aPvQCSrm1rY

 結果の要約

2022年度のストレスチェックでは、以下の特徴がみられました

・ 不良な結果となったのは「ワーク・セルフ・バランス(ポジティブ)」「仕事の質的負担」「仕事の量的負担」
・ 良好な結果となったのは「職場のハラスメント」「役割明確さ」「抑うつ感」
・ 2021年度より大きく悪化したのは「身体的負担度」「疲労感」
・ 2021年度より大きく改善したのは「安定報酬」「役割葛藤」「情緒的負担」

はじめに

 ストレスチェック制度は、2015年12月以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が義務づけられています。制度開始から7年が経過し、当初の設問数57項目版ではなく、ワーク・エンゲイジメントなどが測定でき、職場環境改善により効果的な80項目版が今では主流となりました。ドクタートラストでも設問数80項目版を提供し、国内トップクラスの受検者数を誇っています。
 今回の調査では、2022年度にドクタートラストでストレスチェックを受検した方のうち、410,352人の最新結果、経年比較の分析結果をご紹介します。

全体の概要
1. 受検率と高ストレス者率
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307277564-O8-5eIJC8AN

 図1は、2019年度~2022年度の受検率および高ストレス者率です。受検率とは対象者に対して何人が受検したかを表した割合です。それぞれの受検率は、各年度にドクタートラストでストレスチェックサービスを利用した企業における受検率平均を示しています。
 2022年度の受検率も安定して90%を超えました。受検者の皆さんに制度が浸透していることや、受検期間の周知や未受検者への受検勧奨といった徹底努力もあり、実施企業数が増えたにもかかわらず高受検率を維持しているものと考えられます。
 高ストレス者とは、ストレスチェックの結果、「ストレスの自覚症状が高い」または「自覚症状が一定程度あり、ストレスの原因や周囲のサポートの状況が著しく悪い」とされた人を指します。2021年度が15.0%であるのに対し2022年度は15.5%で、0.5%増加していました。

2. 各尺度の経年変化
 ストレスチェックは、80の各設問に対して「そうだ」、「まあそうだ」、「ちがう」、「ややちがう」の4択形式で回答し、全42尺度を算出します。

 
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307277564-O6-zLuFfcC5

 図2は、2022年度の不良10尺度を示したグラフです。数値は大きいほど不良(好ましくない)、小さいほど良好(好ましい)を示しています。
 2022年度は「ワーク・セルフ・バランス(ポジティブ)」が最も不良な尺度となりました。この尺度は、設問「仕事でエネルギーをもらうことで、自分の生活がさらに充実している」への回答状況から算出します。2020年度以降、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた3年間となりました。長引くコロナ禍でイベントの自粛や制限によってプライベートを充実させるのが難しいと答えた人が多いのではないかと考えられます。
 このほか「仕事の質的負担」「仕事の量的負担」、さらに「活気」なども上位に挙がっています。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307277564-O9-602T83lD

 図3は、2022年度良好だった10尺度を、平均点が低い(好ましい)順に示したグラフです。
 2022年度は、「職場のハラスメント」が最も良好な尺度となりました。この尺度は、設問「職場で自分がいじめにあっている(セクハラ・パワハラを含む)」への回答状況から算出しています。2022年4月から規模を問わず全企業のハラスメント対策が義務化されました。企業側のハラスメントへの意識もより強まり、ヒアリングを行うと、ハラスメントセミナーの新たな実施など、さまざまな施策を立ち上げているところも少なくない様子がうかがえます。
 このほか「役割明確さ」「抑うつ感」さらに「身体的愁訴」なども上位に挙がりました。

経年で特に差が生じた5つの尺度

 2022年度の結果の中で昨年度よりも差が大きく変化した尺度をご紹介します。その中でも差の大きかった5尺度は以下のとおりです。
 括弧内の数値は2021年度にくらべて、どれくらい良好もしくは不良に変化したかを示しています。

【悪化した項目】
① 身体的負担(‐3.0%)
② 疲労感(「ひどく疲れた」-1.7%、「へとへとだ」-2.2%、「だるい」-1.2%)
【よくなった項目】
③ 安定報酬(+2.1%)
④ 役割葛藤(+1.9%)
⑤ 情緒的負担(+1.0%)
以下では、それぞれについて解説します。

1.  身体的負担
 身体的負担は、設問「からだを大変よく使う仕事だ」への回答状況から算出します。(図4)

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307277564-O7-Heu8s3YC

 図4のとおり、不良回答をした割合が2021年度にくらべて3.0%増えました。「身体的負担」は業種や職種間での差も大きく、特に2022年度は「生活関連サービス業、娯楽業」※で悪化傾向がみられました。生活関連サービス業、娯楽業は、2020年の新型コロナウイルス感染症流行初期に大きなダメージを受け、人員整理を余儀なくされた企業も多い業種です。コロナの制限が徐々に解除されたことで、人手不足に対応しきれなくなり、身体的負担につながったと考えられます。
※日本標準産業分類に基づきます(以下、同じ)。生活関連サービス業、娯楽業は、個人に対して日常生活と関連して技能・技術、または施設を提供するサービスなどが分類されます。

 
2. 疲労感
 疲労感は、設問「ひどく疲れた」「へとへとだ」「だるい」の回答状況から算出します。(図5~7)

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307277564-O10-EztGmg6t

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307277564-O2-YYKq3wHe

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307277564-O4-QU43sBWx

 疲労に関する3つの設問は、2020年度以降、悪化の傾向がみられます。
 2022年度からはテレワークが減少傾向にあり、出社率が増えました。コロナ禍のテレワーク勤務や外出自粛により運動不足で体力が落ちたなか、少しずつ出社が増えたことで、働く人の多くが体力的にも疲労を感じていると考えられます。また、社内でのコミュニケーションが苦手な人にとっては、出社となることで対面でのコミュニケーションが増え、精神的な疲労を感じている可能性も示唆されます。

3. 安定報酬
 安定報酬は、設問「職を失う恐れがある」への回答状況から算出します。(図8)

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307277564-O1-6mQ4b2oT
 
 図8のとおり、良好回答をした割合が2021年度にくらべて2.1%増えました。
株式会社帝国データバンクが発表している「人手不足に対する企業の動向調査」によると、2022年10月時点で人手不足を感じている企業の割合は、正社員では51.1%、非正社員では31.0%となり、国内で新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年4月以降でそれぞれ最も高くなったとしています。こうした人手不足感の上昇から、企業側でも労働者の退職防止や人材確保のために、働き方改革や人事制度の見直し、学び直し制度の実施など改善を図る企業が増えた可能性があると考えられます。

4. 役割葛藤
 役割葛藤は、設問「複数の人からお互いに矛盾したことを要求される」への回答状況から算出します。(図9)

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307277564-O3-j5294Zsg

 図9のとおり、良好回答をした割合が2021年度にくらべて1.9%増えました。業種別にみても12業種において、前年より良好回答が増えています。 

5. 情緒的負担
 情緒的負担は、「感情面で負担になる仕事だ」への回答状況から算出します。(図10)

 
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307277564-O5-0zQvw5u7

 図10のとおり、良好回答をした割合が2021年度にくらべて1.0%増えました。2022年4月から規模を問わず全企業のハラスメント対策が義務化されていることから、アンガーマネジメントや、レジリエンスの研修などを積極的に行う企業も見受けられます。従業員自身が感情を上手く処理できるようになったことで、良好回答が増えたのではないかと考えられます。

さいごに

 2020年~2022年度までの3年間、新型コロナウイルスの影響により、社会は大きく変化しました。2022年度は、人材不足を背景に仕事の負担増による疲労感が増加したものの、企業が退職防止や人材確保のための改善策をとっていることから職を失うリスクは下がりつつあるものと考えられます。
 人材不足が深刻化している今、従業員のストレス状況を企業が把握して改善していくことは非常に大切です。ストレスチェックの結果は、個々の従業員や職場の現在のメンタルヘルス傾向を知るうえで、非常に重要なデータとなります。ストレスチェックの結果に課題がある場合は、一次予防として原因を検討し、ぜひ職場環境改善に活かしていただきたいです。

調査対象

調査対象:ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス 2020年度~2022年度受検者
対象受検者数:410,352人(2022年度)
324,624人(2021年度)
240,275人(2020年度)
199,290人(2019年度)
              
【全80項目一覧】
(1)非常にたくさんの仕事をしなければならない、(2)時間内に仕事が処理しきれない、(3)一生懸命働かなければならない、(4)かなり注意を集中する必要がある、(5)高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ、(6)勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない、(7)からだを大変よく使う仕事だ、(8)自分のペースで仕事ができる、(9)自分で仕事の順番・やり方を決めることができる、(10)職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる、(11)自分の技術や知識を仕事で使うことが少ない、(12)私の部署内で意見のくい違いがある、(13)私の部署と他の部署とはうまが合わない、(14)私の職場の雰囲気は友好的である、(15)私の職場の作業環境(騒音、照明、温度、喚起など)はよくない、(16)仕事の内容は自分にあっている、(17)働きがいのある仕事だ、(18)活気がわいてくる、(19)元気がいっぱいだ、(20)生き生きする、(21)怒りを感じる、(22)内心腹立たしい、(23)イライラしている、(24)ひどく疲れた、(25)へとへとだ、(26)だるい、(27)気がはりつめている、(28)不安だ、(29)落着かない、(30)ゆううつだ、(31)何をするのも面倒だ、(32)物事に集中できない、(33)気分が晴れない、(34)仕事が手につかない、(35)悲しいと感じる、(36)めまいがする、(37)体のふしぶしが痛む、(38)頭が重かったり頭痛がする、(39)首筋や方がこる、(40)腰が痛い、(41)目が疲れる、(42)動悸や息切れがする、(43)胃腸の具合が悪い、(44)食欲がない、(45)便秘や下痢をする、(46)よく眠れない、(47)どのくらい気軽に話ができますか?(上司)、(48)どのくらい気軽に話ができますか?(職場の同僚)、(49)どのくらい気軽に話ができますか?(配偶者、家族、友人等)、(50)あなたが困った時どのくらい頼りになりますか?(上司)、(51)あなたが困った時どのくらい頼りになりますか?(職場の同僚)、(52)あなたが困った時どのくらい頼りになりますか?(配偶者、家族、友人等)、(53)あなたの個人的な問題を相談したらどのくらいきいてくれますか?(上司)、(54)あなたの個人的な問題を相談したらどのくらいきいてくれますか?(職場の同僚)、(55)あなたの個人的な問題を相談したらどのくらいきいてくれますか?(配偶者、家族、友人等)、(56)仕事に満足だ、(57)家庭生活に満足だ、(58)感情面で負担になる仕事だ、(59)複数の人からお互いに矛盾したことを要求される、(60)自分の職務や責任が何であるか分かっている、(61)仕事で自分の長所をのばす機会がある、(62)自分の仕事に見合う給料やボーナスをもらっている、(63)私は上司からふさわしい評価を受けている、(64)職を失う恐れがある、(65)上司は部下が能力を伸ばす機会を持てるように取り計らってくれる、(66)上司は誠実な態度で対応してくれる、(67)努力して仕事をすれば、ほめてもらえる、(68)失敗しても挽回するチャンスがある職場だ、(69)経営層からの情報は信頼できる、(70)職場や仕事で変化があるときには、従業員の意見が聞かれている、(71)一人ひとりの価値観を大事にしてくれる職場だ、(72)人事評価の結果について十分な説明がなされている、(73)職場では(正規、非正規、アルバイトなど)色々な立場の人が職場の一員として尊重されている、(74)意欲を引き出したりキャリアに役立つ教育が行われている、(75)仕事のことを考えているため自分の生活を充実させられない、(76)仕事でエネルギーをもらうことで自分の生活がさらに充実している、(77)職場で自分がいじめにあっている(セクハラ、パワハラを含む)、(78)私たちの職場ではお互いに理解し認め合っている、(79)仕事をしていると活力がみなぎるように感じる、(80)自分の仕事に誇りを感じる


ドクタートラストについて
株式会社ドクタートラスト https://doctor-trust.co.jp/
株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦)は企業ではたらく人の健康管理を専門に受託している会社です。産業医(国内第1位※)や保健師などの医療資格者が企業を訪問の上、健康診断結果に基づく健康指導、過重労働者面談を行います。また、160万人超のビッグデータに基づく職場環境改善コンサル「STELLA」や、 外部相談窓口サービス[アンリ]もご好評いただいております。その他 ストレスチェック、健康経営セミナー、 衛生委員会のアドバイスなど、さまざまな業務を実施します。
※帝国データバンク調べ

ストレスチェック研究所 https://www.stresscheck-dt.jp/stella/
ストレスチェック研究所は、ドクタートラスト内に設置された研究機関です。ストレスチェックで得られた膨大なデータの分析を行うとともに、ストレス耐性が高く組織の強みである人材を「STELLA(ステラ)」と名づけ、これら人材を活用した強固な組織作りを目指す職場環境改善コンサル業務を行っています。

ストレスチェックサービスに関するお問合せ
株式会社ドクタートラスト 健康経営推進本部 担当:田野、宇和野
TEL:03-3464-4000(代表)
企業さま用お問合せフォーム:https://www.stresscheck-dt.jp/sc_form/
<参考>100名あたり6万円~(専門コンサルタントによる集団分析結果フィードバックなども、料金内でご提供いたします)

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