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5種類のヒト培養細胞から新たな1,074種類の難溶性RNAを同定


がんの発生や進行、ウイルスのRNAの分解などの疾患研究への基盤的なリソースとなる可能性

2023年7月19日
早稲田大学
熊本大学
大阪大学

5種類のヒト培養細胞から新たな1,074種類の難溶性RNAを同定

がんの発生や進行、ウイルスのRNAの分解などの疾患研究への基盤的なリソースとなる可能性

 

詳細は 早稲田大学Webサイト をご覧ください。   

 

【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M102172/202307147148/_prw_PT1fl_G1BUajYs.png

 

早稲田大学理工学術院総合研究所 次席研究員の曽超(ちぇんちゃお)、同大理工学術院 教授の浜田道昭(はまだみちあき)、熊本大学大学院生命科学研究部分子生理学講座 講師の中條岳志(ちゅうじょうたけし)、と大阪大学大学院生命機能研究科 教授の廣瀬哲郎(ひろせてつろう)らの研究グループは、5種類のヒト培養細胞※2の独自の実験データを、新規に構築した情報解析パイプライン※3で解析しました。この結果、細胞内の非膜構造体形成に関与している可能性がある1,074種類の「抽出しにくいRNA(難溶性RNA)」を同定し、それらの特徴を明らかにしました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307147148-O1-1y4VK9ns

図1 配列解析による難溶性RNAの様子

本研究では、5種類のヒト培養細胞(A10、A549、HAP1、HEK、HeLa)に対する独自の実験データから、1,074種類の難溶性RNAを特定しました。さらに、難溶性RNAを塩基配列の類似性に基づいて4つのグループに分類し、それぞれが異なる機能を持つ非膜構造体から派生している可能性があることを示しました。

 

本研究成果は、英国オックスフォード大学出版局によって発刊される『Nucleic Acids Research』(論文名:Landscape of semi-extractable RNAs across five human cell lines)にて、2023年7月19日0時(UTC)に掲載されました。

 

■研究の波及効果や社会的影響

本研究は世界で初めて、多様な細胞株における難溶性RNAを同定しました。これらのRNAはそれぞれ異なる機能を有する、細胞内のさまざまな非膜構造体から派生する可能性があり、RNA中心の相分離を研究するための重要なリソースとなります。相分離は疾患などのさまざまな生命現象に関与していることが知られており、今回の研究により提供されるリソースは、がんの発生や進行、ウイルスのRNAの分解、細胞のストレス反応などの研究の基盤的なリソースとなることが期待されます。

 

 ■ 今後の課題

様々なストレス状況下でストレス特異的な相分離構造体の形成が誘発されます。そのため、異なるストレス条件下でのRNAの難溶性質と潜在的な機能を調べることが今後の課題と考えています。また、難溶性RNAがどのように相分離に関係しているかの詳細メカニズムの研究も重要な課題となると思います。

 

■用語解説

※1 非膜構造体

脂質二重膜に覆われず、細胞内で特定の分子群を集約している構造体。混み合った細胞内空間で特定の分子を集める細胞内区画を作ることは、多数の生体分子を効率的かつ精密に制御するための生命機能の根幹をなすメカニズムである。

 

※2 ヒト培養細胞

ヒト生体の一部を取り出し、それを特定の条件下で成長や分裂を続けさせることで、実験室内で維持される細胞のことを指します。人間の体外で細胞を生育することで、生命科学におけるさまざまな実験を可能にします。

 

※3 情報解析パイプライン

データを集め、整理し、解析し、最終的な結果を解釈するための一連のプロセスのことを指します。これらのステップは特定の目標に応じてカスタマイズされ、組み合わされることがあります。

 

■論文情報

雑誌名:Nucleic Acids Research

論文名:Landscape of semi-extractable RNAs across five human cell lines

執筆者名(所属機関名): 曽 超*、浜田 道昭**、中條 岳志***、廣瀬 哲郎****

*早稲田大学理工学術院総合研究所

**早稲田大学理工学術院、産業技術総合研究所

***熊本大学大学院生命科学研究部分子生理学講座

****大阪大学大学院生命機能研究科/理学研究科/先導的学際研究機構

掲載日時:2023年7月19日 09:05 (日本時間)

掲載URL:https://doi.org/10.1093/nar/gkad567

DOI:10.1093/nar/gkad567

※記事にされる場合には https://doi.org/10.1093/nar/gkad567 の掲載をお願いいたします

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