新規免疫抑制薬の開発につながる抗PD-1抗体を発見
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202301122049-O1-sT5WXtaL】
新規免疫抑制薬の開発につながる抗PD-1抗体を発見
神戸医療産業都市推進機構(神戸市中央区、理事長:本庶佑/以下、当機構)先端医療研究センター免疫機構研究部の太田明夫部長の研究成果が米国東部時間1月13日付けの米国科学誌『Science Immunology』に掲載されましたのでお知らせします。
太田部長、但馬正樹上席研究員とMeiji Seikaファルマ株式会社より出向の鈴木健介研究員、德丸陽介研究員、大城裕也研究員は、医薬基盤・健康・栄養研究所(永田諭志リーダー、鎌田春彦リーダー)、理化学研究所(木原美帆技術員、中野浩平技術員)、京都大学(本庶佑特別教授/当機構理事長)との共同研究により、がんの免疫治療に用いられているこれまでのものとは全く別種の抗PD-1抗体の中に、PD-1の免疫抑制活性を誘導できるアゴニスト抗体を見出しました。動物実験の結果は、この新規抗体がT細胞によって誘発される炎症性疾患に対して効果的であることを示しています。さらには抗PD-1アゴニスト抗体のFcレセプターへの親和性が免疫抑制効果増強の鍵であることを突き止め、ヒト免疫細胞に対してより実効性のある抗体への改良にも成功しました。
これらの知見は、過剰な免疫反応が原因で起こる炎症性疾患の新規治療法への応用が期待されます。
【本研究のポイント】
●我々は免疫抑制作用を刺激するタイプの抗PD-1抗体を発見しました
●PD-1とは免疫反応を抑制する分子であり、本庶佑理事長のノーベル賞受賞はPD-1の機能を阻害する抗体を利用した新しいがんの治療法に対するものでした(下図A)
それに対して、がん治療に利用されるものとは全く別種の抗PD-1抗体が真逆の作用、すなわちPD-1による免疫抑制作用を誘導するメカニズムを、今回解明しました(下図B)
●この発見は、自己免疫疾患など過剰な免疫反応が原因となっている炎症性疾患の新規治療法に結びつく可能性があります
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202301122049-O4-49k86Ck8】
がん治療に利用されている抗PD-1抗体(ブロッキング抗体)が免疫反応を強化するのに対し、今回発見 されたアゴニスト抗体は結合部位が異なっており、積極的に免疫抑制を誘導する機能を有する。
当機構は本研究において、Meiji Seikaファルマとの創薬・バイオ分野における共同研究「PD-1の免疫抑 制活性による自己免疫疾患を含む炎症性疾患の治療」(HBIイノベーションプログラム)を進めています。
※研究成果等の具体的な内容につきましては、添付資料をご参照ください。
■ 発表者
太田(おおた) 明夫(あきお)
公益財団法人神戸医療産業都市推進機構
先端医療研究センター 免疫機構研究部 研究部長
1998年、東北大学大学院薬学研究科博士課程修了(薬学博士)。2000年米国国立衛生研究所で客員研究員。2004年米国ノースイースタン大学の助教授。2016年4月より現職。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202301122049-O3-8l19G9tt】
先端医療研究センター 免疫機構研究部
“免疫学研究は人々の健康な生活のために”
免疫系の不調は非常に多岐にわたる疾患を引き起こします。我々の研究目的は、免疫系の活性を適切なレベルに是正することによって、多種多様な疾患の治療に結びつけることです。免疫のシステムの中には免疫反応の強度を抑制するメカニズムが備わっており、その働きを人為的に向上させることができれば、過剰な免疫反応を抑制して数々の炎症性疾患の症状を改善できるものと期待されます。また、炎症性疾患を発症するリスクについて早い段階で把握することができれば、治療方針の決定において重要な情報をもたらすことができます。そのために我々は炎症性の変化を早期に検知するのに役立つマーカーの探索を行っています。
https://www.fbri-kobe.org/laboratoy/research1/
Science Immunology(サイエンス・イムノロジー)
サイエンス・イムノロジーは科学誌『Science』の姉妹誌で、世界で最も歴史ある学術団体のひとつである米国科学振興協会(AAAS: The American Association for the Advancement of Science)が発行する、免疫学研究に特化したトップジャーナルです。
https://www.science.org/content/page/science-immunology-mission-and-scope
公益財団法人神戸医療産業都市推進機構
(FBRI: Foundation for Biomedical Research and Innovation at Kobe)
神戸医療産業都市推進機構は、阪神・淡路大震災からの創造的復興プロジェクト「神戸医療産業都市」の中核的支援機関および先端医療研究機能を併せ持つ財団法人先端医療振興財団として2000年3月に設立されました。2018年4月、神戸医療産業都市推進機構へと組織を発展的に改組し「健康長寿社会に向けた課題解決策を神戸から世界へ発信する」ことを掲げ事業を推進しています。
[参考]「HBIイノベーションプログラム」に関しては以下もご覧ください。
■ 令和3(2021)年5月18日付「Meiji Seikaファルマ株式会社との共同研究の契約延長について~自己免疫疾患治療薬候補抗体の創出に成功!~」
https://www.fbri-kobe.org/upload/view.php?news_id=815&type=main
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