『復興への理解促進に向けた中国人留学生等による現地視察及び座談会』の開催について
開催について
復興庁では、国際社会における風評の払拭のため、科学的根拠に基づく正確な情報の発信等に取り組むこととしています。
このたび、福島の復興の現状、福島の安全性、ALPS処理水を含む東京電力福島第一原子力発電所の廃炉の進捗などについて、草の根レベルでの理解の促進を図るため、日本在住の中国人留学生(23名)を招いて『復興への理解促進に向けた中国人留学生等による現地視察及び座談会』を開催いたしました。
日本在住の外国人留学生を現地に招き視察等を行うのは、復興庁として初の試みであり、今回は中国人留学生23名が参加し、8月29日(月)から8月31日(水)までの2泊3日で資料館や震災遺構など計6カ所の見学・視察を行い専門家などからガイドを受けたほか、勉強会を通じて正しい知識を学び理解を深めました。
また、復興に携わる地元関係者との意見交換会も実施し、現地視察や座学で得た知識と理解をもとに、福島に関する安全性への懸念を払拭し理解を広げるために何が必要かについて意見交換し、どのような情報発信をすべきかを発表しました。
なお、その模様については、(国内メディア2社、中国メディア2社)の取材が行われました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202209096226-O8-buFuKM8H】
1日目:8月29日(月)
1日目、「双葉町産業交流センター」屋上より双葉町内や福島第一原子力発電所などを眺め、隣接する「東日本大震災・原子力災害伝承館」では、原子力発電所事故直後の対応や県民の願い、長期化する原子力災害の影響、復興に向けてどのような挑戦が行われているかを学習しました。
次に、震災遺構として一般公開されている「町立請戸小学校」を見学。ここでは、浪江町のまちづくりを行う一般社団法人まちづくりなみえの石山佳那氏がガイドを務め、被災時の状況、児童たちの避難行動を説明。津波の影響により校舎内に流れ込んできたがれきの山や、卒業式の準備中であった体育館の床が波打つ状態を見て、学生たちはひどく驚いていました。
続いて、慰霊碑が建立されている「大平山霊園」を見学し、先ほど見学した小学校の児童がここに避難したことなど震災時の出来事の説明が行われました。石山氏は「地元消防団を中心に捜索を開始したが、福島第一原子力発電所から半径10km圏内に避難指示が出たことにより、大平山は誰も立ち入れない場所になってしまい、たくさんの命を失うことになった。」と、“原発と津波の複合災害”について説明。その後多くの学生たちが熱心に石山氏へ質問をしに行く姿がみられ“ほんの数メートルの高低差が生死を分ける結果となったこと”や複合災害について学びを深めたようでした。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202209096226-O5-oVEw9P6c】
視察を終えた後、宿舎のJヴィレッジで「福島の今を知る+そのための放射線の基礎知識」をテーマにした勉強会を開催。「環境再生プラザ」の青木仁アドバイザーが講師を務め、福島第一原子力発電所事故の経緯と、それによって放出された放射性物質を除染し環境再生に向かう歩みが説明されました。除染の効果を具体的なデータで示すほか、除去された土壌について中間貯蔵施設の仕組みを紹介。また、放射性セシウムの内部被ばくを防ぐため日本では水道水や食品に対して厳しい検査と監視が行われており、生産される果実や事故があった福島第一原子力発電所海側港湾内のセシウム濃度が低レベルであることなどが伝えらました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202209096226-O4-I4f2558I】
2日目:8月30日(火)
2日目は「東京電力廃炉資料館」を見学し、動画や展示により震災発生から事故対応の状況や、その後の汚染水処理対策、燃料デブリ取り出しの工程、ALPS処理水などについて学びました。
次に、地域の産品の販売店舗であり、浪江町の復興のシンボルとして親しまれている「道の駅なみえ」を訪問。地域の酒蔵である鈴木酒造店や町の伝統的工芸品である大堀相馬焼についての紹介を受けました。また「道の駅なみえ」には、国内初となる中国でも人気のポケットモンスターをモチーフにした「ラッキー公園」があり、写真撮影や遊具で遊ぶなど楽しんだ様子で、最後は福島の名産品である桃などを買う姿が見られました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202209096226-O2-B8MR19ie】
©2022Pokémon/Nintendo/Creatures/GAME FREAK.
2日目の視察を終えた後、Jヴィレッジにて中国人留学生と復興に携わる地元関係者との「意見交換会」が行われました。意見交換会の冒頭、復興庁 原子力災害復興班 中見大志参事官が登壇し「原子力災害からの復興の進捗と風評の影響」について説明しました。
中見参事官は、福島県内の空間線量率が海外主要都市とほぼ同水準であることや、住民の帰還の状況など復興の進捗を話しました。食品中の放射線物質について、日本は世界に比べて基準が厳しい上に、農林水産物はモニタリング調査を実施して結果を公表していると説明。近年は基準値を超えるものはほとんどないと伝えました。一方、海外では輸入規制が残っている国もあり、安全性について発信していくことに加え、ALPS処理水の海洋放出についても理解を促していく必要があると述べました。
続いて、意見交換会のモデレーターを務める福島大学のマクマイケル准教授による基調講演「世界において、福島に関する安全性への懸念を払拭し、理解を広げるには。」が行われました。
インパクトのある写真や映像など、不確かな情報が大きく報道されるなどの「情報災害」の問題や、輸入規制・観光客の減少を招く「風評被害」について紹介。「今福島が抱えている問題を一つ一つ乗り越えていくことは、世界のため、今後のためになるのではないか」と語り、留学生に向けて「相手の立場を考えた情報発信が必要で、誰に・どのように発信することで伝わるのか、共感を得られるのかをぜひ皆さんで話し合ってほしい」と伝えました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202209096226-O3-eZqZ3FQh】
その後、世界に向けた情報発信について「誰に・何を・どのように伝えるべきか」をテーマに、中国人留学生と復興に携わる関係者で構成される各グループに分かれ、これまでの現地視察や座学で得た知識と理解をもとに意見交換を行い、どのような情報発信をすべきかのまとめを発表しました。
「何を伝えるべきか」について話し合ったグループは、専門知識やデータの重要性・福島に生きる人々のストーリーを伝えていきたいと話し「一生懸命福島の皆さんが努力していることや福島の名産品がおいしいこと、自然がとてもきれいなこと、当時の子どもたちが立派な大人になったといった話も皆さんに伝えることができれば」と発表しました。
「どのように伝えるべきか」について話し合ったグループは「コンテンツによってプラットフォームを分け、特に若年層などに伝えるためにインフルエンサーを活用することも良いと思う。日本のアニメなどの作品は海外でもとても人気なため、福島に関わる作品を作り海外へ発信するのはどうか」などSNSの活用や福島に関するドラマやアニメを制作するなどのアイデアが寄せられました。
「誰に伝えるべきか」について話し合ったグループは、伝えてもなかなか伝わらないという現状があるため、まずは日本国内で理解を深め外国人の方へ伝えることで、海外への発信の基礎になるのではないかと話し「発信する側も正しい知識を付けることが大事。若年層は新しい情報も受け入れやすい面があると思うので、そういった世代の好みを把握して適切にコンテンツを作っていくべきだと思う」と発表しました。
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全ての発表を聞いたマクマイケル准教授は、総評として「参考になる話が多く勉強になった。このような形で一緒に考え、発信する仲間がいるということがすごく重要だと改めて思った。福島の情報を発信し、現状を打破する力になってもらえたらうれしい」と述べました。
3日目:8月31日(水)
最終日は、日本語教師笈川幸司講師の指導の下で、これまでの行程で得た体験や理解を振り返る座談会が行われ「現地に実際にきてイメージが変わったこと」などを参加者全員が日本語でスピーチしました。
福島に来て変わった考えについて発表したAさんは「原発事故のことだけでなく、今そしてこれからの福島のことをもっと学んでいくべきで、学び続ける気持ちが大事だと思った」と今後の課題などの感想を述べました。ALPS処理水についてBさんは「海洋放出により、魚が食べられなくなるといううわさを信じている人も多い。私も汚染された水をそのまま海へ排出するものだと思っていた。福島へ来て、きちんと処理された水だと学ぶことができた。またいつか家族や友達と福島へ来て、いろいろなことを教えてあげたいと思う」と話しました。
また、Cさんは「福島で実際に何が起こったのかを来る前は何も知らなかった。今回福島に来ることができて本当に良かった」と感想を述べ、実際に福島を訪れ地元の方々と触れ合ったことで、より多くのことを学び理解を深めた様子でした。武漢出身だと話すDさんは「故郷が新型コロナで風評被害を受けた経験があります。だから福島の人々が復興のために努力する姿を見て感動した。身近な人に伝えて、私の小さな力でもここを助けることにつながればうれしいです」と話し、故郷を思う自作の詩を発表しました。
終了後、中見参事官より「皆さんにいただいたアイデアを、風評払拭などに取り組む上で生かしていきたいと思っている。今回のプログラムの中で楽しかったこと、勉強になったことを、ぜひSNSで発信いただけたらうれしいです。そしてまたいつか福島に来ていただけたらと思います」と挨拶しました。
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開催概要
(1)開催日
令和4年8月29日(月)~8月31日(水)
(2)参加者
日本の大学などに在籍する中国人留学生23名
(3)主催
復興庁
(4)行程
1日目:8月29日(月)
・「双葉町産業交流センター」(屋上)での福島第一原子力発電所に関する視察
・「東日本大震災・原子力災害伝承館」見学
・「町立請戸小学校」・「大平山霊園」見学
ガイド:一般社団法人まちづくりなみえ 石山 佳那氏
・「福島の復興の状況について」をテーマにした勉強会(会場:Jヴィレッジ)
講師:「環境再生プラザ」青木 仁アドバイザー
2日目:8月30日(火)
・「東京電力廃炉資料館」見学
・「道の駅なみえ」視察
・「意見交換会及び交流会」(会場:Jヴィレッジ)
講 師:福島大学 教育推進機構 国際交流センター マクマイケル ウィリアム准教授
参加者:中国人留学生
復興に携わる関係者の皆様 7名
一般社団法人とみおかプラス 代表 大和田 剛氏
一般社団法人とみおかプラス 事務局長 香中 峰秋氏
一般社団法人ふくしま連携復興センターコーディネーター山中 努氏
一般社団法人ふくしま連携復興センター 菅野 高広氏
ふたば未来学園中学・高等学校 支援コーディネーター
双葉みらいラボ代表・NPO法人カタリバ スタッフ 横山 和毅氏
一般社団法人まちづくりなみえ 石山 佳那氏
大熊町・HAMADOORI13 佐藤 亜紀氏
3日目:8月31日(水)
・「座談会」(会場:Jヴィレッジ)
講 師:笈川 幸司氏
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