<日本歯内療法学会 ニュースレターvol.7>歯と口の健康週間に向けた「高齢者の歯科通院」意識調査
2022年6月1日
一般社団法人日本歯内療法学会
一般社団法人 日本歯内療法学会(所在地:東京都豊島区、理事長:佐久間克哉)は、歯と口の健康週間にあわせて60代以上の200名を対象とした「高齢者の歯科通院」に関するアンケート調査を実施しました。
今回の調査を通じて、60代以上における過去1年(2021年5月~2022年4月)の歯科の定期通院頻度はコロナ禍以前の1年(2019年)と比較するとほぼ同等になっている一方、定期通院されていない方が4割以上いることがわかりました。
高齢者は歯の神経(歯髄)を取り除いた経験を持つ方が多く、神経を抜いた歯等の痛みに気づきにくくなります。そうした中、2020年以降(コロナ禍)の治療経験者のうち、65.9%が以前治療した歯の再治療という結果もあり、定期通院の頻度が少ないことによる、治療済の歯の悪化リスクが懸念されます。
日本歯内療法学会では、むし歯の再治療の適切な処置を広く発信することで、患者さんや生活者の口腔健康の維持に貢献して参ります。
①高齢者における歯科の定期通院頻度はコロナ禍以前の推移になるも、課題有り
・過去1年における歯科医院の定期通院の頻度は、コロナ禍以前の2019年と比べほぼ同じ頻度になった。
・一方、定期通院をしていない層は過去1年、2019年共に、4割以上にのぼり、定期通院への啓発は依然課題となる。
・2019年から定期通院の頻度が減った理由に、40.0%の方が新型コロナウイルス感染への不安をあげた。
②2020年以降(コロナ禍)の治療経験者のうち、65.9%が一度治療した歯の再治療
・2020年以降、歯科の治療を行った方は44.0%と約半数の方が治療したことがわかった。
・治療した方のうち、以前治療した歯を再治療した方が65.9%と約7割にのぼることがわかった。
③歯科では従来から滅菌消毒を徹底、通院控えが多い中今後も感染対策が重要となる
・むし歯は菌の感染によって発生するため、歯科では従来から滅菌消毒の取組を徹底している。
・不安な方は病院と相談しながら通院方法を相談することをお薦めする。
④高齢者の歯の再治療は難度が高まるため、歯内療法専門医への相談もお薦め
・高齢者は歯の神経(歯髄)を抜いた歯が比較的多く、その歯の新たなむし歯の痛みが感じにくい。
・高齢者の歯は歯の内部の構造が変化しているため、歯の根の治療「根管治療」の難度が高まる。
・根管治療は「歯内療法」という治療法で、再治療の際は歯内療法専門医への相談もお薦めする。
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【詳細】
「高齢者におけるコロナ禍前後の歯科通院」意識調査
Q1. 過去1年(2021年5月~2022年4月)とコロナ禍以前の1年(2019年)における歯科の定期通院の
頻度をお教えください。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202205311954-O6-FkQZNq8Q】
コロナ禍が始まった2020年頃は、通院控えの患者さんが多いと言われていたが、直近1年と比較すると、通院頻度は2019年並みに戻って来たと思わる。
一方でむし歯は早期発見が重要である中、定期通院をしていなかった方の割合が4割以上あり、更に過去1年では45.5%と微増している点が心配な点である。
Q2.歯科の定期通院が減った理由、もしくは定期通院をしなかった理由を教えてください。
(Q1でコロナ禍以前の1年に比べ過去1年の定期通院の回数が少なかった方、またはそれぞれ定期通院をしていない方 100名)
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202205311954-O9-Q695eFYP】
コロナ禍以前の1年に比べ、過去1年の定期通院回数が少なかった方、またはそれぞれ定期通院をしていない方に対して、頻度が減った、もしくは通院しなかった理由を尋ねたところ、40.0%の方が、新型コロナウイルス感染への不安を理由にあげた。
また、以前に治療して通院をしなかったという方も44.0%となっており、歯の痛みなど治療の切掛けがないと通院しない傾向も浮き彫りになった。
Q3. 歯科通院が減った、もしくは定期通院をしないことで新たなむし歯の発生に対する不安はありますか。
(Q1でコロナ禍以前の1年に比べ過去1年の定期通院の回数が少なかった方、またはそれぞれ定期通院をしていない方 100名)
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202205311954-O5-wSDC5p8e】
またQ2の同対象者に新たなむし歯の発生への不安について聞いたところ、不安でないの合計が56.0%と不安の合計44.0%を上回る結果となりました。
Q4. 2020年以降、治療した歯の本数は何本ですか。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202205311954-O10-z28duQ4f】
2020年以降、44.0%の方が歯科の治療を行ったことがわかった。
前述で定期通院をしていない層が4割以上いることや、通院が減ってもむし歯の不安がない方が半数以上いることを踏まえると、通院しないことでむし歯の早期発見が遅れて治療している方が一定数いることが推測される。定期通院の重要性を啓発することは依然、課題であることが伺える。
Q5. 治療した歯の中で、以前治療した歯の再治療したものはありましたか。
(Q4で治療したと回答した方88名)
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202205311954-O8-I816NmZl】
更にQ4で治療した方のうち、以前治療した歯の再治療は約7割にも上った。中高年になると歯の内部の治療(歯内療法)の難度が高まることもあり、定期通院によって再治療の予防を促していくことも今後の課題であることがわかった。
【調査概要】
調査主体 : 一般社団法人 日本歯内療法学会
調査対象 : 60代以上の計200人
(60代100名、70代以上100名「医療、福祉」、「メディア・マスコミ・広告業」の方は除く)
調査方法 : WEBアンケート
調査時期 : 2022年5月20日(金)~23日(月)
歯科では従来から滅菌消毒を徹底
今回の調査で高齢者の方々が依然通院の不安を抱えられている現状がわかりました。むし歯は菌の感染によって発生するため、歯科では従来から滅菌消毒の取組を徹底しており、新型コロナウイルス発生後も院内での感染リスクを低減する努力を徹底しております。定期的な通院で健康を守ることは重要なため、病院と相談しながら通院方法を相談することをお薦めします。
■感染経路から見る歯科における感染リスク
歯科における感染経路は以下の3つが挙げられます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202205311954-O1-WwQukbnG】
③について、現時点で確認されていませんが、無症状感染者の待合室での接触など、今後も注視すべき課題です。
■歯科治療に求められる滅菌・消毒
歯科治療における感染対策については、新型コロナウイルス発生以前より以下が定められております。
・口腔内で使用する歯科医療機器等について、患者さんごとに交換、専門の機器を用いた洗浄・滅菌処理を徹底
・歯科用吸引装置(口腔外バキューム)の設置
・歯科医師の定期的な院内感染防止対策に関わる研修を受講
これら標準予防策に加え、各診療分野・専門分野ごとの感染対策が必要です。
高齢者の通院控えによるリスクに上げられる“再治療”とは
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202205311954-O3-Qvpju6MY】
■歯の神経(歯髄)を抜いた歯は新たなむし歯の痛みが感じにくい
歯は、人体の中で一番硬い組織です。その中には、神経と呼ばれる「歯髄」という軟らかい組織が、根の先のほうの小さな孔で、あごの骨の中の神経や血管とつながっています。そのため、歯の痛みを感じ、その異変を察知し、むし歯などの症状を知らせる役目を担っていることがわかります。
近年は「歯髄」は出来る限りの残す治療が推奨されていますが、昔は「歯髄」を抜く治療が一般的でした。高齢者は比較的歯髄を抜く「抜髄」をした歯が多く、痛みが感じにくいため、自覚的な発見が難しくなる可能性が高まります。
■更に同じ歯で再治療を繰り返すと歯を失うリスクが高まる
治療を施した歯の状態が再び悪化すると治療難度は高まります。更に年齢を重ねると根管が狭くなったり構造が変化したり治療の難度が高まります。再治療は歯の内部の治療に至ることが多く、特に歯の根である根管治療はミリ単位での治療技術が求められるため、医師の高い技術が求められます。
■大切な歯は極力抜かず大切にすることがお薦め
近年「オーラルフレイル」が注目されるように、長い人生で歯の本数を保持することは健康維持においてとても重要です。悪化してしまった歯は状況によって抜歯することもありますが、できれば自身の歯の残していただくことが大切です。抜歯は歯がはまり込む骨「歯槽骨」を口腔内に露出することから、どの年代でも感染症などのリスクが高く、特に高齢者は生活習慣病などの持病で、免疫機能や生理機能が低下していることもあり注意が必要です。
また、歯根の周りにはクッションの役割を担う歯根膜という組織があります。歯根膜には、噛んだ時にかかる圧力を鋭敏に感知して、噛む力をコントロールすることができます。抜歯をすると歯根膜が無くなるため、インプラントや義歯等で処置をしても、噛み合わせの感覚が薄くなってしまいます。
■歯の根の治療の専門医もいる
以上のような理由から、歯はできるだけ残すことが必要です。自分の歯をできるだけ抜かずに施す歯の根の治療は「歯内療法」という治療法になります。小さな歯の治療は高い技術が求められ、特に高齢者の治療においても重要な専門領域であります。「歯内療法」は一般の歯科医院で治療を受けることができますが、専門医に相談したいという方は、日本歯内療法学会のホームページに専門医の情報を記載しておりますので、お電話などで相談することもできます。
日本歯内療法学会HP(http://www.jea.gr.jp/ippan/index-6.shtml)
歯内療法とは
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202205311954-O2-nVypi4q7】
■多くの人が治療を受けたことがある「歯内療法」
「歯内療法」とは、自分の歯をできるだけ抜かずに治療することを目的とした治療の総称で、「歯の根の治療」「神経を抜く」と言われる治療も歯内療法の範囲です。特に歯の根の深くにアプローチする治療を「根管治療」と言います。
「歯内療法」は多くの方が受けたことのある基本的かつ身近な治療法ですが、根管の径は1ミリメートル以下の細い管で、形態は様々で非常に複雑なため、歯内療法には高度な技術が要求されます。
日本歯内療法学会からのメッセージ
今回のアンケートでは、高齢者において以前治療した歯を再治療した経験のある方が約7割という高い割合を示しました。治療を施した歯の状態が再び悪化すると治療頻度は高まります。さらに、治療で神経がなくなった歯は、痛みを感じにくいためむし歯の発見が遅れる傾向にあります。このように、治療を繰り返すことは、歯を失うリスクを高めることに繋がります。長い人生で歯の本数を保持することは健康維持においてとても重要と言われています。すなわち歯の本数保持には、歯髄を守ることが重要と言っても過言でないかもしれません。
歯髄を守る対策は日々歯のケアを怠らないこと、歯科の定期通院で歯の状態をチェックすること、また普段の生活で歯に痛みを感じたら、放置せず早期に歯科医師へ相談し、必要に応じて治療を行うことです。「歯内療法」は多くの方が受けたことのある基本的かつ身近な治療法ですが、根管の径は1ミリメートル以下の細い管で、形態は様々で非常に複雑なため、高度な技術が要求されます。
日本歯内療法学会会員の歯科医師たちは、こうした “無症状だが悪化している” 状態を早期に発見し成功率の高い高度な治療をご提供いたします。
また当学会はさらなる研鑽を積み、症例審査、筆記試験、並びに口頭試問を通過した会員に「専門医」の資格を与え、国民が「専門医」を受診し易いように学会のホームページにその名簿を公開しております。
日本歯内療法学会HP(http://www.jea.gr.jp/ippan/index-6.shtml)
日本歯内療法学会 概要
■名 称 : 一般社団法人日本歯内療法学会(Japan Endodontic Association)
■理事長 : 佐久間克哉
■所在地 : 〒170-0003 東京都豊島区駒込1-43-9 駒込TSビル
【設立経緯】
1960~70年代は世界的に歯科医学の研究教育ともに画期的に飛躍をとげた時代と思われる。日本の歯科大学においても教育内容の充実に目覚ましいものがあった。しかしながら、開業医の臨床の実態はかなりかけ離れているのが実情であった。
当時日系二世の歯科医W.T.Wakaiが歯内療法専門医としてハワイにおいて開業していた。彼はのちにアメリカ歯科医師会の副会長にノミネートされた指導的人物であった。彼は母国日本の実態を理解していたので、日本も世界の水準に遅れないように歯内療法学会を設立しなければならないと、識者に呼び掛けていた。この時期に大谷歯内療法研究会の存在が彼の目にとまった。この研究会が学会設立の中枢になりうるものと考え強くこれを要請した。かくして日本国内外にも学会設立の気運が高まり、学会設立の呼び掛けに応じた臨床医グループがこれに加わり、多数の大学の歯科保存学の関係者の賛同を得て1980年(昭和55年)1月に日本歯内療法協会が設立され発足した。(学会名称は昭和55年1月26日より平成5年6月12日までは日本歯内療法協会、平成 5年6月12日より平成14年7月20日までは日本臨床歯内療法学会、以後日本歯内療法学会と改称した)
現在では、大学の先生方の参加が増え開業医主体であった会も研究者の発言、指導が取り入れられ、臨学一体となった当初の理念に近づいている。特に学術大会、セミナー、学会誌等は大学の教室単位の協力を得て充実して行われている。
【学会設立の趣旨】
歯内療法の基礎と臨床を研究し、正しい歯内療法を実践することにより国民の福祉と健康に貢献する。
【学会設立以降の主な活動】
1.会員制度の確立(一般会員、準会員)
2.年一回の総会ならびに学術大会開催
3.平成6年以降、専門医セミナー秋期1回開催
4.学会認定専門医、指導医制度の制定
5.協力団体設立支援
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