◆関西大学社会安全学部・近藤誠司研究室がコロナ禍における聴覚障害者の防災意識調査を実施◆
2020/10/26
学校法人関西大学
このたび関西大学社会安全学部の近藤誠司研究室は、聴覚障害者の実態を捕捉するため、滋賀県草津市において全数調査を行いました。その結果、あらためて「高齢の障害者」が多数を占め、災害時の支援者問題、社会的孤立の問題、コミュニケーション問題など、多くの課題を残していることが明らかになりました。
【本件のポイント】
・滋賀県草津市在住の聴覚障害者を対象とした防災意識調査
・災害時の支援者問題や避難所でのコミュニケーション問題など、多くの課題が浮き彫りに
・高齢の障害者を置き去りにしないためには、障害者同士の世代間交流を促す仕組みづくりが必要
本調査は、草津市に在住する聴覚障害者328人に対して、質問紙の郵送・返送方式で実施しました。〔調査期間:2020年9月1日~10月7日。設問:全24問、回収率:47.9%(回収数157)、回答者の7割以上が60代以上の高齢者〕
※アンケート結果の概要については、以下をご参照
▽ https://www.kansai-u.ac.jp/ja/assets/pdf/about/pr/press_release/2020/No34.pdf
■ 聴覚障害者のコミュニケーション方法は、「発声」が6割強、「手話」や「スマホ」は3割弱
普段のコミュニケーション方法として、「手話」や「スマホ・携帯」を選んだのはそれぞれ約3割弱で、最も多くの人が選択したのは「発声」でした。失聴者よりも難聴者が多いこともあり、「発声」が重要な手段となっていることが確かめられました。このことから、コロナ禍においてマスクやフェイスシールド等を着用したり、声のボリュームを抑制したりすることが、コミュニケーションの障壁となる可能性があることが推察されます。
■ 聴覚障害者の立場から、避難所に準備しておいてほしいこと、市民に知っておいてほしいこと
避難所に求めるものとして、必要な物品には「聴覚障害者ワッペン」、「耳マークのバッジ」などの聴覚障害者であることを示すヘルプマークをはじめ、「支援者であることを示すビブス・ゼッケン」、「筆談ボード」、「手話通訳」、「字幕表示の設定をしたテレビ」などが挙げられました。また、表示文章の短文化や拡大文字を求める 意見や、場内アナウンス・サイレン・デジタル音などの代替措置を考案してほしいといった意見もありました。さらに、背後から話しかけられてもわからないこと、マスクを付けている状態では聞き取りにくいことを知っておいてほしいといった声も複数ありました。
■ およそ4人に1人が「コロナ禍で嫌な思いをした経験がある」と回答
コロナ禍において、聴覚障害者であることによって困ったこと、嫌なことがあったか尋ねたところ、22.7%の人が「ある」と回答。「発声」や「口話」の場面で周囲からの理解や協力を得ることができずに苦境に陥っていた人が大勢いることが判明しました。具体的には、「マスクを付けての会話は聞き取りづらく口元も読みとれない」、「マスクを外してとは言えない」、「聞こえづらいので顔を近づけると嫌がられた」などがありました。また、仕事をする上で困難を抱えた人もいて、「リモートでのテレワークが困難」とする意見が複数寄せられました。そのほか、「生活全般に影響が及び、外出しなくなった」と記述した人もいました。
近藤准教授は「自分自身では困難を解消できない“社会的孤立”の問題について、今後、より深く調査・検討する必要がある。行政支援(公助)に限界や制限があるなかで、一つの活路を見出すとすれば、聴覚障害者同士の世代間交流を賦活する仕組みづくりが要請される。デジタルデバイスを使いこなせる若い聴覚障害者が避難所運営に志願して、高齢の聴覚障害者の悩みや不安を汲み取り、きめ細かく対応することができれば、健常者・障害者間のコミュニケーションギャップを苛烈にしてしまうリスクを低減することができるであろう」と指摘しています。
▼本件の詳細▼
関西大学プレスリリース
https://www.kansai-u.ac.jp/ja/assets/pdf/about/pr/press_release/2020/No34.pdf
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