雨と霧の富士スピードウェイで2台の911RSRが表彰台に上る
GT決勝、FIA世界耐久選手権第7戦、富士/日本
ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:オリバー・ブルーメ)のポルシェ911RSR は、富士スピードウェイで開催された世界耐久選手権(WEC)第7戦のGTE Proクラスにおいて2位および3位を獲得し、表彰台に上りました。
富士山麓に位置する4.563kmの高速サーキットで行われた雨と霧による非常に難しいレースで、リヒャルト・リーツ(オーストリア)/フレデリック・マコヴィッキ(フランス)組は2位となりました。この結果により、上海とバーレーンの2レースを残して、リーツとマコヴィッキはドライバーズ選手権でトップまで5ポイント差の2位につけ、タイトル獲得に向かって一歩前進しました。
チームメイトのミカエル・クリステンセン(デンマーク)/ケヴィン・エストル(フランス)組は、他車のクラッシュのよってほぼ手中に収めていたWECにおけるニュー911RSRの初勝利を逃し、3位に終わりました。
降り続く雨によりコースから富士山を見ることは出来ませんでしたが、決勝のスタートではパトリック・デンプシーがグリッドに並んだ26台に向かってグリーンフラッグを振りました。2015年に同じく富士スピードウェイで開催されたレースで、ハリウッド俳優でもあるデンプシーはドライバーとして初の世界選手権における優勝を飾りました。現在ではポルシェのブランドアンバサダーであり、デンプシー プロトン レーシングの共同オーナーでもある彼は、ピットウォールから自らのチームの幸運を祈りながらスターターを勤めました。今シーズン、ニュルブルクリンクとメキシコシティで勝利しているポルシェ ヤングプロフェッショナルのマッテオ・カイローリ(イタリア)/クリスティアン・リード(ドイツ)/マービン・ディエンスト(ドイツ)組の駆るデデンプシー プロトン レーシングは富士戦でも3位に入り、GTE Amクラスの世界耐久トロフィーで首位に立ちました。
激しく降り続いた雨によりセーフティカー先導で始まったレースは、6周目からシグナルがグリーンに変わり正式にスタートします。ポールポジションスタートのリーツは完璧なスタートを決めます。5番グリッドからスタートしたもう一台の911RSRを駆るクリステンセンは7周目を終えるまでに2台をパスして3位に浮上しました。次第に天候が悪化し約1時間に渡ってセーフティカーランが続いた後、レースは中断されました。その32分後にレースが再開されてすぐ、リーツがピットに入ると今度はクリステンセンがトップに立ちレースを引っ張ります。
2時間20分が経過した時点で視界が悪くなり、またもセーフティカーが導入されます。2台の911RSRは給油のみを行い、コースに戻りました。この日のレースでは、ピット戦略が勝負の分かれ目となることが明らかでした。このときのセーフティカーは26分間、コースに留まりました。走行距離がおよそレースの半分に達するころ、クリステンセンは4位に、リーツは5位でした。2台は上位をうかがいながら力走しますが、その努力は新たなセーフティカーランにより無駄に終わります。
ポルシェは両方の911RSRをピットに呼び戻して92号車はクリステンセンからエストレに、91号車はリースからマコヴィッキへとドライバー交代を行います。レースディレクターがレース再開の指示を出してから程なく、エストレはトップに立ちマコヴィッキは3位を走行していました。全く予想できない展開となったこのレース中、事故が発生して4度目のセーフティカーが入ります。その後、雨は静かになりレースは順調に進む中、トップを快走するエストレに周回遅れのフォードGTが接触し、911RSRはスピンを喫し、3位に落ちます。このアクシデントにより車両はフロントのエアロパーツとリアのディフューザーにダメージを負い、エストレのラップタイムは首位の車から1周につき2秒の遅れをとるようになりました。今度はマコヴィッキがトップに立ちますが、フェラーリとの接近戦に敗れてトップを明け渡します。
その後、次第に霧が濃くなり多くのドライバーから視界の悪化を訴えられると、レースディレクターはセーフティカーを出動させて30分後には2度目のレース中断の判断が下されました。その後、天候が回復する見込みはないため、レースは再開されず中断時の順位をもって波乱含みのWEC第7戦は終了を迎えました。
次戦、WEC第8戦は11月5日に上海にて開催される予定です。
レース後のコメント
WECプログラムマネジャー、アレックス・シュテーリッヒ: 「今日のコンディションは極めてトリッキーなものでした。数多くのセーフティカーオペレーションや赤旗によって非常に難しい選択を迫られました。しかしチームは素晴らしい仕事をこなし、様々な障害を正しく処理することができました。92号車が優勝の可能性を失ってしまったのは厳しい現実で、一方の91号車は安定したレース運びをしていましたが、再スタート直後のペースが遅く、フェラーリの攻撃を防ぎきることができませんでした。それでも2位と3位は悪くない結果です。この週末を通じて、我々は最も速いペースを保っていたからです。世界選手権で初めての優勝を逃したことは残念でなりません」
リヒャルト・リーツ (911 RSR #91): 「この週末、マシーンは最高の状態でした。予選ではポールポジションを獲得し、決勝レースでも我々の911RSRは一番速いペースを保っていました。フルコースイエローやセーフティカーといった不測の事態に対しても冷静で正しく対処できました。ドライバーとしてはプロトタイプカーが巻き上げる飛沫で視界がほとんど失われることもあり、まるで壁に向かって走り続けるような感じで、トラックの上の水たまりでは泳げそうな錯覚さえ起こしましたが、911RSRはすべての状況で好調を保ちました。我々の選手権ポイントは今のところ2位です。まだチャンスは残されています。上海で可能な限りのポイントを獲得することに全力を尽くします」
フレデリック・マコヴィキ(911 RSR #91):「セーフティカーフェーズの最中にスティントを受け継ぎました。再スタートは難しい状況でしたが、何とかフェラーリをオーバーテイクして、2位にポジションを上げることができました。トップを走っていた92号車が事故に巻き込まれて、トップを走ることになりました。ペースは順調で、後続車を少しずつ引き離すことさえできました。しかし何らかの理由でフロントのグリップが低下して、いっきに戦闘力を失いました。今日のレースは実に難しいものでしたが、チームは常に正しい判断をできたと思います」
ミヒャエル・クリステンセン(911RSR #92): 「実にタフなレースでした。様々な予想もしない事態が発生しました。さらに富士の天気は目まぐるしく変わり続けました。私の最初のスティントは完璧とはいいがたいものでした。2回目のスティントではタイヤの内圧を変更し、それが功を奏してペースを上げることができ、レースをリードする場面もありました。あのクラッシュさえなければ優勝することができたはずです。とはいえこの難しい局面で2台ともに表彰台に上れたことに満足すべきかもしれません」
ケヴィン・エストレ(911 RSR #92): 「自分のスティントが回って来るまで待たされることはほとんどありませんでした。3時間を過ぎてマシーンに乗り込んだ後、最初のセーフティカーフェーズからの再スタート時には2台のプロトタイプを追い越すことも可能なほどで、後続車をわずかに引き離すことができました。次のリスタートの時、ペースの上がらないフォードを周回遅れにしましたが、彼は明らかにその際ブレーキングポイントを見誤ってこちらにむかってまっしぐらに体当たりしてきました。私はスピンし、前後にダメージを追った911RSRで走ることを余儀なくされました。終盤に向けて症状はどんどん悪化していきました。最終的に3位をキープできたことをむしろ嬉しく思います」
レース結果
GTE-Pro クラス
1.カラド/グィディ(イタリア/イタリア) フェラーリ488 GTE 109周
2. リーツ/マコヴィキ (オーストリア/フランス) ポルシェ911 RSR 109周
3. クリステンセン/エストレ(デンマーク/フランス)ポルシェ911 RSR 109周
4. ミュック/プラ (ドイツ/フランス) フォードGT 109周
5. リゴン/バード(イタリア/英国) フェラーリ488 GTE 109周
6. ターナー/アダム/セラ (英国/英国/ブラジル) アストンマーティン 109周
7. ティーム/ソーレンセン(デンマーク/デンマーク)アストンマーティン 108周
8. プリオール/ティンクル(英国/英国) フォードGT 96周
GTE-Amクラス
1. フロール/カステラッチ/ (スイス/イタリア/スペイン)フェラーリ488GTE
107周
2. モク/澤/グリフィン(マレーシア/日本/アイルランド)フェラーリ488GTE
107周
3. リード/カイローリ/ディエンスト(ドイツ/イタリア/ドイツ) ポルシェ911 RSR 107周
4. ヘッドランド/バーカー/フォスター(アメリカ/英国/英国) ポルシェ911 RSR 106周
5. ダラ・ラナ/ラミー/ラウダ(カナダ/ポルトガル/オーストリア) アストンマーティン
105周
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