あなたの口座へ振り込まれた給料と同額の金額が市区町村によって勝手に住民税の納税に充てられたらどう感じますか?
このような理不尽なことは住民税を滞納していると、市区町村による給料の差し押さえで起こり得る話です。
実際に本人の意思に反して住民税の納税に充てられたケースがネット上で多数書き込まれています。
給料の差し押さえのパターン
給料の差し押さえは2パターン考えられます。
銀行口座の差し押さえ:給料が入金されるタイミングで差し押さえます。この場合、税務署や市区町村から勤務先へ連絡することはありません。
給料の差し押さえ:滞納者の勤務先から税務署や市区町村が直接、徴収する方法です。この場合、事前に勤務先へ通知されます。
滞納者が差し押さえを受けない唯一の防衛策
滞納者が財産の差し押さえを防衛するためには税金の滞納額を分割払いで納税した実績を積み重ねることに尽きます。
まずは税務署や市区町村に分割払いの交渉をして、第1回目の納付を確実に実行しましょう。
ネット上の書き込みで、
というコメントがあったからです。
分割払いの交渉をするときには「日本国憲法第25条の生存権」で理論武装をしよう
税務署や市区町村との交渉で分割払いの金額の設定により、「生活費を犠牲にしなければならない心配」をする必要はありません。
日本国憲法第25条の生存権を脅かす徴収は憲法違反だからです。
憲法25条の生存権を一部抜粋。
総務省でも「地方税法の施行に関する取扱いについて」の中で「財産なく生活に窮する滞納者の徴収を猶予(支払いの先延ばし)する」という方針を打ち出しています。
差し押さえの対象になる財産とは
現金預金にすることができる財産はすべて対象となります。
具体的には
・ 上場株式
・ 売却できる財産
・ 給料
・ 副業収入
まで含まれます。
税金を滞納してもすぐに財産の差し押さえは実施されませんが、滞納者は給料などの財産が納税に充てられるリスクを常に抱えています。
税金の時効は存在する
ネット上の書き込みで質問の多い内容です。時効が過ぎると税金は免除されるので、滞納者には興味のある話題だといえます。
税金の滞納額は国や地方自治体に対する債務(住宅ローンのような借金と同じ)であり、時効は存在します。
税金の時効は取り扱いが特殊
通常、カードローンのような債務の場合は時効が過ぎただけでは借金が免除されることはありません。
債権者(貸し手)に対して「時効が過ぎたので支払わない」という意思表示が必要です。このような意思表示のことを「時効の援用」といいます。
ところが税金の場合、「時効の援用」は不要です。時効が過ぎれば自動的に税金は免除されます。以下が税金の時効の年数です。
しかし、事実上、税金に時効は存在しない
税金の時効は事実上そんざいしません。税務署や市区町村が滞納者に督促状を送付するからです。
督促状は単に「税金を支払ってください」というだけではなく、滞納額に対する時効を法律的に認めない役割を果たしています。
督促状が自宅へ届いた日(原則)から時効の期間を新たにカウントされるためです。
そのような意味で督促状は「滞納している税金は必ず納めなさい」という税務署や市区町村からのメッセージといえます。
最後に
一旦、給料などの財産を差し押さえられると税務署や市区町村から取り戻すことは困難です。
たとえ、生存権が脅かされても裁判を起こすのは、取り戻すまでの期間や弁護士費用などを考えると現実的ではありません。
したがって、滞納している税金は分割払いしましょう。(執筆者:阿部 正仁)