6月に入ると、住民税の納付書・課税明細書が届く時期になります。給与から天引きになる会社員でも、すでに課税明細をもらっている人もいるでしょう。
住民税の諸情報は自治体ごと、また給与天引きの会社員と自分で納付の自営業者等でも変わりますが、ここではどの課税明細にも記載されている「所得割」、「課税標準額」から社会保障へのかかわりを見ていきます。
(税額控除後)所得割額
住民税は、正式には道府県民税(または都民税)と市町村民税(または特別区民税)の2種類の総称ですが、いずれも
・所得に応じて課される所得割(原則として道府県民税・都民税率4%、市町村民税・特別区民税率6%)
からなります。
後者の所得割額に応じて、もらえる金額が変動する(もしくはもらえなくなる)給付金等があります。
下記の2制度が所得割を基準としておりますが、道府県民税(または都民税)の所得割額なのか、市町村民税(または特別区民税)の所得割額なのかにも気をつける必要があります。
・高等学校等就学援助金(市町村民税・特別区民税の所得割額)…高校授業料に対する補助金
税額控除前所得割額
税額を引き下げる税額控除という控除項目があり、住民税の課税明細にも内訳が記載されています。
・住宅ローン控除
・ふるさと納税(寄付金税額控除)
・配当控除(上場株配当の2.8%に相当)
が代表的です。これらを考慮しない段階(差し引き前)の所得割が、税額控除前所得割額です。
税額控除前所得割額(市町村民税・特別区民税)に基づいて計算される代表的なものが、保育料です。ただし、調整控除だけは差し引いた後の所得割額で判定することに気をつけてください。
参考までにふるさと納税の税額控除上限額は、調整控除だけは差し引いた後の所得割額の2割です。
また兵庫県芦屋市のように、医療費助成で税額控除前所得割額(市町村民税)を基準としているところもあります。
なお、保育料の算定基準に関する盲点は、下記の記事で詳しく触れています。
「所得税を節税すれば保育料は安くなる」とは限らない 注意すべき2つのこととは
課税標準額
「課税所得」と読み替えてもいいもので、課税標準額に税率をかけると、税額控除前所得割額が計算されます。
課税標準額が影響する制度の代表的なものは、70歳以上の方に対する医療費自己負担額に関わる、高額療養費制度の所得区分です。
また個人事業主が加入できる国民健康保険組合の中には、この課税標準額を基に、健康保険料を決めているところもあります。
自治体によっては、課税標準額を「総所得分」、「株式等の譲渡」などと複数段に分かれて記載しているものがありますが、全てを合算したものが上記所得区分の基準となります。
課税標準額145万円を境に、1カ月の医療費自己負担の上限が1万4,000円になるか、5万7,600円になるか(平成29年8月以降の金額で、外来・個人の場合)が変わってしまいます。
なお70歳以上高額療養費の所得区分に関して、詳しくは「医療費負担増」改正 確定申告で医療費負担は大きく変わる。タイプ別「損をしない確定申告活用術」を参照下さい。
以上です。(執筆者:石谷 彰彦)